9回連続予想を的中させた“大統領選のノストラダムス”が断言「トランプは…」

文春オンライン / 2020年10月30日 6時0分

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選挙が迫るトランプ大統領 ©JMPA

 2016年の大統領選でドナルド・トランプの勝利を予測した唯一の男、アラン・リクトマン教授にインタビューした。彼は1984年から現在まで9回の大統領選の勝者をすべて的中させてきたので「大統領選のノストラダムス」とまで呼ばれている。

 2016年は投票日の夕方まで、ありとあらゆるメディアや評論家がヒラリー・クリントンの勝利を予想していた。世論調査に基づいていたからだ。ところが蓋を開けてみると、世論調査ではヒラリーが勝っていたミシガンやウィスコンシンなど五大湖地方のいわゆるラストベルト(錆びついた工業地帯)が全部トランプに転んだのだ。

「世論調査は信じません」

 リクトマン教授は言う。

「世論調査なんてものは、その瞬間を捉えただけのスナップショットにすぎません。だから私はもっと大きな視点からの予測システムを開発したんです」

 歴史家であるリクトマン教授は、1860年から120年間の大統領選を精査して、現職の大統領か与党が勝つ時と、負ける時の共通点をチェックしていった。それをまとめたのが「ホワイトハウスへの13の鍵」というシステム。

「13項目中6つノーがあったらアウトです」

「ホワイトハウスへの13の鍵」

 このシステムに従って、今回の選挙を占ってみる。

 まず1の鍵。「与党の支配。与党が下院議会を多数支配しているか?」2018年の中間選挙で共和党は36議席を失って民主党に過半数を支配された。よって答えはノー。

 2の鍵。「与党内に対立候補がいない」いない。イエス。

 3の鍵。「与党の候補者は現職の大統領か?」前回のヒラリーはそうでなかったのでノーになったが、今回のトランプはイエス。

 4の鍵。「集票力のある第3党がいない」ラッパーのカニエ・ウェストが出馬したけど、誰にも相手にされてないようなので、イエス。

 5の鍵。「短期経済は好調か?」ノー。選挙期間中(投票日前の3ヶ月間)、不況になってないか? コロナのせいで旅行、小売、飲食、娯楽、衣料など多くの業界が大打撃をこうむり、失業者は616万人。

「社会的不安はないか?」もちろんノー!

 6の鍵。「長期経済は好調?」トランプ政権の3年間、ずっと株価は上がり、失業率は下がり続けた。だが、コロナのため、今年のGDP成長率はマイナス3.8%前後と予測されている。これもノー。

 7の鍵。「政策的に大きな変革を行ったか?」トランプ政権は大幅減税に始まり、不法移民逮捕、パリ協定離脱、WHO脱退など、良い悪いは別として、先のオバマ大統領の成果を片っ端からひっくり返そうとしてきた。答えはイエス。

 8の鍵。「社会的不安はないか?」もちろんノー! コロナ感染の死者は21万人を超え、その出口は見えず、ブラック・ライブズ・マター運動が全米に広がり、武装した極右勢力と衝突し、殺伐とした日々が続いている。

 9の鍵。「スキャンダルはないか?」ノー。投票日直前の10月にはオクトーバー・サプライズといって、選挙を左右する事件が起こるといわれるが、まずニューヨーク・タイムズがトランプはここ10年ほど、ほとんど所得税を払ってないことを暴露。さらにホワイトハウスに人を集めてコロナのクラスターが発生。トランプ自身を含む20人以上が陽性になった。と思ったら3日で退院して選挙活動に復帰したり、次から次への騒ぎで、ついていくのがやっと。

 10の鍵。「外交政策の大きな失敗がないか?」イエス。「アメリカ第一」を掲げ外国の紛争に立ち入らなかった。プーチンや金正恩などの独裁者とも仲良し。そのおかげで戦争にはならなかった。

「トランプ勝利」2つのシナリオ

 11の鍵。「外交政策の大きな成功があるか?」これはノー。とにかく外国には関わらないから。

 12の鍵。「現職大統領候補にカリスマはあるか?」ふむ、トランプは一種のカリスマでしょ?

「違います!」

 リクトマン教授に叱られた。

「たしかにショーマンですが、カリスマじゃない。カリスマとはリンカーンや、テディ・ルーズベルト、それにロナルド・レーガンのような人物をいうんです。トランプは国民を分断し、極端な人々だけに強く支持されます。レーガンを見てみなさい。彼は民主党支持者の票さえ勝ち取った。それをカリスマというんです」

 そして最後の13番めの鍵。「対立候補にはカリスマ性がない」バイデン候補はトランプから「眠たいバイデン」「バイデン爺さん」と揶揄され、演説でも覇気がない。これはイエス。

「すると合計で、ノーは7つ。トランプは再選されないでしょう」

 うーん、でもトランプは前代未聞の大統領だし、コロナで選挙キャンペーンも滅茶苦茶だし、必ずしも過去のジンクス通りにはならないのでは?

「いつもそう言われます」リクトマン教授は笑う。「120年前は女性に参政権はなかったし、1965年まで南部の黒人は投票できなかったし、選挙制度は過去から何度も変わりました。それでもこの13の鍵の6つを落として当選した者はいないのです」

 じゃあ、トランプの負けはもう決まり?

「いえ。トランプが勝つ場合は2つあります」

 え?

「ひとつは投票抑制です。トランプは郵便投票は不正されると言って既に郵便業務を縮小しています。投票日当日も『トランプ軍団』と称するボランティアを募集しています。彼らが投票所周辺で有色人種の有権者を威嚇して投票させないと、接戦州の結果に影響するでしょう。もうひとつはロシアの介入です。前回のように有権者をインターネットで密かに操作しているかもしれません。だから実は私も投票日までハラハラ、ドキドキなんですよ」

まちやまともひろ 1962年生まれ。映画評論家。米カリフォルニア州バークレー在住。この連載をまとめた最新刊『トランピストはマスクをしない』(小社刊)の発売記念「町山智浩×水道橋博士×原カントくんオンライントーク」のYouTube動画は こちら から

 

BS朝日「町山智浩のアメリカの今を知るTV In Association With CNN」は毎週金曜日22時24分~放送中

(町山 智浩/週刊文春 2020年11月号)

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