“天敵”棋士が明かす「藤井聡太二冠に勝つために何が必要か」

文春オンライン / 2020年12月29日 11時0分

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二冠と同時に史上最年少八段昇段

 10月26日に行われた王将戦挑戦者決定リーグ3回戦で敗れ、最年少三冠、最年少九段こそ“お預け”になったものの、藤井聡太二冠(18)の活躍が続いている。

 その強さの秘密について、“天敵”棋士が語った。(「週刊文春」2020年9月3日号より全文転載。日付、肩書、年齢等は掲載時のまま)

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「『藤井時代』がいよいよ始まるのかも知れません」

 そう語るのは他でもない、藤井聡太二冠(18)の師匠、杉本昌隆八段(51)だ。

 7月に棋聖位を獲得し、史上最年少タイトルホルダーになった藤井だったが、8月20日、木村一基王位(47)に挑戦した七番勝負を4連勝で制し、瞬く間に“藤井二冠”になった。

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「タイトルホルダーは五番か七番勝負で挑戦者を退ければ防衛できる。つまり3勝2敗、4勝3敗でよい。逆に挑戦者からすれば、通算勝率が8割を超える藤井に、番勝負で勝ち越すのは至難の業でしょう」(同前)

 一度タイトルを獲れば極めて失冠しにくいのが藤井。実際、2つのタイトル戦でも計7勝1敗と短期決戦での強さが際立った。

 藤井の強さを、タイトル二期獲得の広瀬章人八段(33)はこう表現する。

「藤井さんは一つの局面で、常に妥協なく最善の手を探します。そして、ソフトが最高の評価値を示す一手を見つけ出す能力が非常に高い。今後、5年くらいの間に八冠を全制覇したとしても、驚きはないです」

 飯島栄治七段(40)も率直に言う。

「すでに全盛期の北の湖やV9時代の巨人のように、“強すぎて憎まれる”存在になりつつあると言えます」

藤井二冠に勝つために何が必要か

 実際、プロ入り以降の223戦でわずか35敗(8月24日時点)。藤井に土をつけることは立派な金星であり、棋士たちも“藤井包囲網”の構築に怠りない。藤井と6局をこなしている都成竜馬六段(30)は、5連敗ののち、6局目で初白星を挙げた。

「6局目は、普段は指さない『相掛かり』という作戦を藤井対策として用意しました。藤井さんは難しいところで長考するので、見慣れない局面に誘導し、持ち時間を早く使ってもらう狙いでした。結果は幸いしましたが、こちらの事前研究を読みの速さで上回られた面もあった。次は同様にはいかないでしょう」(都成六段)

 藤井に勝った棋士のうち最年長の井上慶太九段(56)も、付けいるスキは藤井の経験の少なさだと考える。

「藤井さんと本当に大一番を指すことになったら、藤井さんの経験値が低そうなトリッキーな作戦を用意するかも知れません」

 つまり藤井とがっぷり四つに組むのは危険。藤井を“未知の戦場”に引きずり込む奇襲こそが活路なのだ。

“藤井ストッパー”大橋六段に聞いてみると…

 将棋ファンが「藤井ストッパー」として注目するのが大橋貴洸六段(27)だ。藤井とは四段昇段(プロ入り)が同期であり、赤や青など、スタイリッシュなスーツを着て対局に臨む伊達者ぶりでも知られている。

 大橋は藤井に2連敗後、目下3連勝中。豊島将之竜王(30・藤井に4連勝)に並ぶ「天敵」と言える。

 大橋が語る。

「なぜ藤井さんに勝てるのか?……うーん、分かりません(笑)。前回(6月)の対局では、最終的に藤井さんに悪手が出て逆転勝ちしましたが、内容的には完全に負けていた。『優勢にできるはず』という局面で長考する藤井さんからは、並外れた構想力と強い意思を感じる。それが藤井さんの強さの源だと思います。

 私は相手が誰かではなく、自分がどれだけ高いパフォーマンスを発揮するかが重要と考えています。藤井さんを過剰に意識しないことが、良い結果に繋がっているのかも知れません」

 ある若手棋士は取材に対し、「藤井さんのことは話したくありません」と負けん気を覗かせた。だが、その意識がすでに“藤井マジック”の掌中なのかも。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年9月3日号)

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