「お金儲けして、何が悪いんですか?」“生涯投資家”村上世彰はいま何に資産を使うのか

文春オンライン / 2020年12月4日 6時0分

写真

「お金儲けして、何が悪いんですか?」

 村上ファンドを率いて経済界に旋風を巻き起こし、「物言う株主」と呼ばれた村上世彰氏。その波瀾万丈の半生と投資理念を書いたベストセラー『生涯投資家』を、ホリエモン漫画で知られる西アズナブル氏が完全コミカライズした。 『マンガ生涯投資家』 刊行を記念して、お二人の対談をお届けする。

『鬼滅の刃』VS『生涯投資家』

西 (東京証券取引所を背景に「生涯投資家」とプリントされたTシャツを着て登場)単行本発売を記念して、特別につくりました。

村上 すごい、気合入っていますね!

西 実は、あの『鬼滅の刃』の最終巻と発売日が同じだそうで、内心あせってます(笑)。この本は 文春オンライン で約1年にわたって連載したマンガをまとめたものですが、最初にコミカライズの話があったときは、どうお感じなりましたか?

村上 文藝春秋さんに言われたら仕方ないですよ。断って、週刊誌に何か書かれたら怖いから(笑)。それは冗談として、なるだけ若い人に読んで欲しかったから、喜んで承諾しました。ただ、投資理論の話はちょっと難しかったかもしれないですね。

西 難しい部分を全部省くという選択肢もあったと思いますが、原作を読んだとき、期待値やリスク査定といった村上さんの投資理念が凄く興味深かった。だから、難しい言葉をなるべくかみ砕いて伝えようと努めました。その方が、全体として物語が面白くなると思ったんです。

村上 それでストーリーのなかに、投資の授業風景を挟み込んでくださったんですね。

西 村上さんと初めてお会いしたのが、母校である灘高の生徒との講演会を見学したときでした。それがヒントになりました。

村上 原作を読んだ人の中でも、難解で途中で挫折したという声が結構あるんです。だから今回、西さんにこういう描き方をしていただいて、本当にありがたかった。ただ、20年前の話なんで、亡くなった方も多いです。僕がファンドを立ち上げるときに相談した日本マクドナルドの藤田田さん、セゾングループの堤清二さん、リクルートの江副浩正さん、みんな故人になってしまいました……。

お金儲けこそが自分に与えられたミッション

西 錚々たる方々が登場されるので、描きがいがありました。ちなみに、ご自分のキャラはどうお感じになりました?

村上 ちょっと軽いかな、と思いました。

西 すいません! 作者の軽さが出てしまいました……。

村上 いやいや、そういう意味じゃなくて、ファンドマネジャーというのは他人様のお金を預かってるわけで、甘い立場じゃないんです。ファンドマネジャーとして、当時はお金儲けこそが、自分に与えられたミッションだと割り切ってやっていましたから。

西 なるほど。

村上 ワンマン社長が会社を私物化していた東京スタイルのときは、株主総会でプロキシーファイト(委任状争奪戦)を仕掛けたり、株主代表訴訟を起したりと、徹底的にやりました。仲裁に入ったイトーヨーカ堂会長の伊藤雅俊さんに「俺の顔をつぶすのか!」と怒鳴られましたが、あのときのお顔が今も思い浮かびます。考えてみれば失礼な話ですよ、せっかく和解させようと尽力くださったのに、僕がガチンコ勝負にこだわったために、決裂してしまったわけですから。

西 しかし、村上さんのアクティビストとしての活動がきっかけとなって、株主が経営者を監視するコーポレート・ガバナンスが日本に浸透することになるわけですよね。

村上 強引に歯車を回し始めたんですよ。ちなみに、これを描くのにどれくらいの時間がかかりましたか?

西 連載は毎月18~20ページでしたが、1ページ仕上げるのに丸1日以上かかることもありました。

村上 そんなにかかるんですね。登場人物がみんなとてもよく似ています。

西 ありがとうございます。

村上 東京スタイルの社長だった高野義雄さんも似てるし、阪神電鉄の役員だった玉井英二さんもそっくりです。僕だけはもう少し美男子だと思うけど(笑)。写真を見て描くんですか?

西 まず、ネットで顔写真をバーッと集めます。ただ、昔の人だとネットで検索しても出てこないんです。だから、当時の週刊誌の写真をもとに、記事から伝わるイメージを加味して、キャラをつくっていきました。

いちばん描きにくかったのは「あの人」

村上 だからリアリティがあるんですね。描きやすかった人、難しかった人とかいますか?

西 実は、両方とも堀江貴文さんなんです。僕はこの10年くらい「週刊プレイボーイ」をはじめいろんな媒体で堀江さんのカットを描かせてもらっていて、『刑務所いたけど何か質問ある?』という本まで共著で出させてもらいました。ある意味、いちばん描きなれている顔なんです。ただ、それらは堀江さんの視点で描いているわけで、今回は極力客観的に描くべきだと思ったんです。新進のIT起業家として世間に登場した当時のイメージを再現したかった。そこが逆に難しかったですね。

村上 なるほど。漫画でもIT系の起業家たちがたくさん出てきましたね。

西 IT経営者との交流も入れさせていただきました。そういえば、最近ドラマ化された『ネット興亡記』でも当時のことが取り上げられていましたね。

村上 サイバーエージェント社長の藤田晋さんを僕が脅したという場面ですね、ひどいですよね(笑)。藤田さんにも「僕だけ悪者にして、ひどいじゃないか」と抗議したんです。彼は「当たり前じゃないですか、どうやって自分をよく見せるかですよ」って笑ってましたけど。まあ、会社を設立して2年で上場して、何が何だか分からない状態だったらしいですが。いまや時価総額8000億円ですからね、たいしたものです。

西 意気揚々とされてますよね。

村上 そう考えると、IT起業家のなかでは堀江さんがいちばんワリを食っているかもしれないですね。あの事件がなかったら、数兆円の資産を持っていたんじゃないでしょうか。新しい事業に対する先見の明は抜群でした。LINE だってライブドアから発展したわけじゃないですか。いまはコメントをされるだけの立場で、もったいないなぁと思います……。

拘置所でもちゃんと寝ていた

西 ファンドを運営されていた頃はムチャクチャ忙しかったと思いますが、寝る時間とかあったんですか?

村上 必ず7時間寝ていました。寝ないと頭が働かない。拘置所でもちゃんと寝てました(笑)。

西 やはりプレッシャーは凄かったですか?

村上 あえて自分にプレッシャーを課していました。預かったお金は絶対に増やしてあげよう、増やさなきゃいけない、それが自分のミッションだと割り切っていましたから。そういう意味では、日本の上場企業の経営者はプレッシャーがなさすぎるように思います。外国では株主が経営者を選ぶから、成績を上げないと即クビです。ファンドも同じ。投資家がお金を引き上げたら、ファンドはつぶれます。

西 どうやって、そのプレッシャーに耐えていたんですか?

村上 逆にプレッシャーがあるからこそできたんです。それが原動力になりました。好きなことをやらせてもらっているわけですから、投資家にガバナンスされて当然なんです。

西 その状態を楽しんでいましたか?

村上 正直しんどさはありましたね。当時、村上ファンドは「投資の神様」と呼ばれたウォーレン・バフェットの会社と同じくらいの利回りを上げていたんです。それを続けるしんどさはありました。いまは個人で投資してますから、投資先の会社がいい方向に変ってくれればそれでいい、というスタンスです。経営に関して100%オープンに議論して、その結果を受け入れています。

西 変わったきっかけは何だったんですか?

村上 逮捕されたことです。それ以来、他人のお金を預かるのを止めました。大変ですよ、他人様のお金を預かるのは。いまの日本の経営者はさほどしんどくなさそうに見えます。株主から意見聞いて、それを経営に生かそうなんて考えてる人は少ないですから。

西 でも、村上さんのおかげで、経営者の意識もだいぶ変わったんじゃないですか。

村上 いやいや。やはりコーポレイトガバナンス・コードが2015年に制定されたことが大きかったですね。当時の東京証券取引所や金融庁が中心になってつくったわけですが、ありがたいことです。

お金はしょせん道具なんです

西 最近は、社会貢献を積極的にされていますね。

村上 今年はコロナ禍があったので、抗体検査機器を寄贈したり、PCR検査費用を提供したりしました。たぶん、僕は死ぬまでに自分のお金を使い切れないと思うんです。だから、興味がある案件があればどんどん使って、残さずにおこうと。自分のお金が世の中に良い影響を与えて、それが何十倍、何百倍になって広がっていけばいいなと。そういう視点でやっています。

西  なるほど。最後に読者へのメッセージをお願いします。

村上 若い人に是非読んでもらって、お金との付き合い方を考えるきっかけにしてほしいと思っています。お金はしょせん道具。稼いで、貯めて、 使う、場合によっては寄付する。若いうちから、お金とどう付き合っていくかを考えておいてほしい。そうでなといと、僕のようにお金をいっぱい儲けたけれど、お金に追い回されて、社会からは怒られて、という人生になってしまいます。そういう意味でも、この本は絶対に売れてほしいと思います。もっと宣伝しないといけないですね!

西 実は、第2話の銀座のクラブのシーンで、看板に読者の名前を書いたんです。ツイッターで募集して、リプライをくれた人から先着順に名前を入れてあげたんです。

村上 何でですか?

西 自分の名前が載っていれば、本を買ってくれるんじゃないかと思いまして……。

村上 グッドアイディア! もっとたくさんやってくれればいいのに(笑)。

西 看板だらけの漫画になってしまいますよ。

(村上 世彰,西 アズナブル)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング