大物芸能人も続々チャンネルを開設 ユーチューブはテレビから“メディアの王様”の座を奪うか
文春オンライン / 2021年1月12日 6時0分

とんねるず・石橋貴明もユーチューブに参戦 ©文藝春秋
2020年は「大物芸能人ユーチューブ開設元年」、これまでテレビを中心に活躍してきた石橋貴明や手越祐也、宮迫博之ら大物芸能人がユーチューバー・デビューし成功を収めている。
一方で、フワちゃんやHIKAKINなどの人気ユーチューバーにはテレビ番組のオファーが殺到、バラエティを中心に活躍の場を広げ認知度は飛躍的に上昇している。ユーチューブ誕生から15年、当初は棲み分けがあって交わることがなかった両者がここにきて活発にクロスオーバー。芸能界に大きな地殻変動が起きている。
「ユーチューブ黎明期は、誰でも気軽に自分の遊びや趣味を発信できるものでした。素人が生み出すコンテンツが主体で、HIKAKINやはじめしゃちょーらネットのスターに800万人以上のフォロワーがいようとも『子供だまし』と見下されていたのは事実。娯楽の王座として君臨してきたテレビのクオリティーには及ばないですし、プロと素人は相容れないというのが芸能人の本音でした」(民放プロデューサー)
闇営業問題でテレビから干された宮迫がユーチューブを始めた際に、明石家さんまがバラエティ番組で「俺らテレビ出る人間、敵はユーチューブやねんで、いま!」と、画面を通じて後輩芸人に危機感を持つよう呼びかけをした。その発言に賛否はあろうとも、旧来の感覚では真っ当だといえる。
芸能人にとっては「都落ち」だったイメージが一変
これまで様々な事情で芸能人がユーチューブに参入してきたが、やはり都落ちという印象は拭えなかった。テレビやCM、映画などのメインストリームで活躍するのが一流の証で、それを目指して切磋琢磨するのが業界の本道だった。しかし人気芸能人が続々とユーチューブの世界に降臨し、オセロが一気にひっくり返ったような展開になったのである。
チャンネル登録者の多い芸能人ユーチューバーでいうと、米津玄師(555万人、10月21日現在、以下同)やONE OK ROCK、ARASHI、AKB48らミュージシャン勢が上位にいるが、好きなときにMVが楽しめるという点で同サイトは音楽ファンの動向にマッチしている。また、アーティスト側からすれば多くの宣伝費をかけずに、自分たちの活動が発表できる便利なツールである。
「もはやテレビからヒットが生まれる時代ではない。米津や瑛人、アニメソングもユーチューブから火がついてメジャーとなった。その流れは今後も加速する」(音楽プロデューサー)
そして、やはり注目なのはテレビから流れてきたタレントだ。
カジサック、江頭2:50、霜降り明星、ジャルジャルなどお笑い芸人は、ユーチューブと親和性が高い。お笑いのネタや軽妙なフリートークが人気だ。また芸人であっても教育系ユーチューバーとして支持を得ているオリエンタルラジオ中田敦彦やソロキャンパー芸人として再ブレイクしたヒロシなど、持ち味を生かしたコンテンツが注目されている。
人気俳優もユーチューブに参戦
さらに特筆すべきは俳優の存在。本田翼(215万人)、と佐藤健(196万人)を男女の筆頭に、星野源、菅田将暉、市川海老蔵、川口春奈、柴咲コウ、長谷川京子など錚々たる顔ぶれ、群雄割拠の様相を呈している。
「映画スターがテレビに出演すると電気紙芝居の役者になったとバカにされる時代がありましたが、いまはそれと同じ劇的な変化の真只中にいます。俳優はそこでファンを引きつけ、マーケットを開拓している。人気が出れば、数字を持っているタレントとして新たな仕事が舞い込むし、次の展開も期待できる」(芸能プロダクション経営者)
だが、いいことばかりではなく、ユーチューブ進出でフォロワーが少なかった場合、「人気がない」「数字を持っていない」という判断が下され、コマーシャルベースの仕事で淘汰されるリスクもある。
ユーチューブは単純にいうと視聴回数・時間に応じて広告費が支払われる仕組みだが、トップは数億円プレーヤー、成功すれば20代でも1億円稼げる世界である。芸能人がテレビからユーチューブに流れる背景には当然、経済的な事情も。2020年発表の電通「日本の広告費」によると、2019年のインターネット広告費は2兆1048億円で、テレビメディア広告費の1兆8612億円を上回る結果となった。今年はコロナ禍の影響により、さらにインターネット広告費が上昇すると予測されている。
すでにレッドオーシャン状態のユーチューブ
「テレビの制作費は削られ、出演料も抑えられている。しかもコンプライアンス重視が過剰になり、スキャンダル一発で消滅、自由な表現もできない。スポンサーに遠慮せず自分の力でお金が稼げるのなら、ユーチューブは芸能人にとって願ってもない媒体です」(同前)
だが、多くのファンを抱える芸能人がユーチューブを始めたことで、すでにユーチューブはレッドオーシャン状態だ。
素人ノリが売りだったユーチューバーは、芸を持つ強者が乗り込んでくることに戦々恐々、「10年後に生き残っているのは1割」(20代ユーチューバー)という。一方で、若者のテレビ離れを憂慮するテレビ局は、フィッシャーズ(652万人)や東海オンエア(555万人)など人気ユーチューバーを番組に積極的に起用するなど、必死だ。
彼らがテレビに登場することで個人視聴率を稼げると期待し、商品購買層の消費者にリーチするというスポンサー向けの説明も立つからだ。どんどん番組に露出させて、テレビで彼らをブレイクさせようという意図はわかるが、そのなかで芸能界でもスターと認められるユーチューバーが今後出てくるかどうかはわからない。
2020年は芸能人タグのある新規ユーチューバーが200チャンネルを突破。ユーチューブの特性上、誰でも簡単にお金をかけずにスタートアップできるので、今後も、雪崩を打って芸能人が参加するだろう。なかなか芽が出なかった芸人がユーチューブで突然ブレイクすることもあるだろうし、可能性は広がったといえる。
実力だけでなく運が大きく左右する、不確実性が高いエンタメの世界。SNSがもたらした大きなうねりのなかで、芸能界もまた混沌の時代に突入した。
(中村 竜太郎/文春ムック 文藝春秋オピニオン 2021年の論点100)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
“自縄自縛”のユーチューバー宮迫 紳助氏引っ張り出した「神回」も思わぬ“火消”に追われ…
夕刊フジ / 2021年3月1日 17時8分
-
宮迫博之YouTubeで墓穴…吉本興業・大崎会長が“決別宣言”でテレビ復帰は絶望
日刊ゲンダイDIGITAL / 2021年2月23日 9時26分
-
宮迫博之、「アメトーーク!」での復帰断念&サブチャンネル開設の“思惑”
アサ芸プラス / 2021年2月8日 9時59分
-
綾瀬はるか、児嶋一哉、飯尾和樹、大化けした「ドラフト外」芸能人の勝因
週刊女性PRIME / 2021年2月7日 11時0分
-
フワちゃんのテレビ出演増の背景にある「業界の思惑」とちょっと不快な理由
週刊女性PRIME / 2021年2月4日 11時0分
ランキング
-
1渡部建 「豊洲でタダ働き」がアダに、テレビ業界からも総スカンで遠のく復帰
週刊女性PRIME / 2021年3月1日 11時30分
-
2離婚成立のKEIKO「達筆メッセージ」が示した小室哲哉“本当の罪”
日刊ゲンダイDIGITAL / 2021年3月1日 14時20分
-
3堺正章 芸能界で3人消した!? フワちゃんは「何度殴ってやろうかと」
スポニチアネックス / 2021年3月1日 10時42分
-
4松本人志が今田にマジギレ!プライベート旅行で起きた「赤鬼事件」の真相
アサジョ / 2021年3月1日 10時15分
-
5上沼恵美子 後輩芸人の無礼な言動に怒り“何その言い方”「その場で言いました」
スポニチアネックス / 2021年2月28日 14時46分