婚活アプリで女性を“物色” スコップで穴を掘って…35歳女性の遺体を埋めた29歳保育士の稚拙な犯行
文春オンライン / 2020年12月25日 11時0分

佐藤の婚活アプリのプロフィール写真
西武池袋線の椎名町駅からほど近い路上で、男はターゲットを“物色”していた。その時、前日も彼の目を引いた、小柄で若々しい女性が目の前を通り過ぎた。
周囲を窺いながら少し距離を置き、後をつけ始めた男は、女性が一本路地を入った先のアパートへと入るのを見届ける。そこは前日、無施錠であることを確認していた部屋だ。1階の部屋の前に到着した男はドアノブを握りしめると、そのまま室内へと押し入った――。
◆ ◆ ◆
豊島区の会社員・富塚沙織さん(35)が遺体で見つかった事件で、12月6日、警視庁は富塚さんの自宅から約600メートルの距離に住む、保育士の佐藤喜人(よしと)容疑者(29)を死体遺棄の疑いで逮捕した。佐藤は9月24日頃、栃木県那須町の山林に富塚さんの遺体を遺棄した疑いがもたれている。
富塚さんは9月25日に職場を無断欠勤。同僚の電話にも出ないため、上司が家族と警察に連絡し自宅を訪ねると、富塚さんの姿はなく、室内からは所持品がなくなっていたという。
「10月1日には、富塚さんの携帯電話が自宅近くの路上で発見されており、警察は何らかの事件に巻き込まれた可能性が高いとみて、周囲の防犯カメラを解析。失踪直前、富塚さんの後をつける不審な男として佐藤の存在が浮上したのです」(社会部記者)
12月5日、警視庁が任意で事情を聴いたところ「毛布でくるんで女性の遺体を車で運び、スコップで穴を掘って埋めた」と犯行を認めたため翌日、逮捕した。
祖父は那須の別荘も所有する資産家
「佐藤は殺害についても『女性宅に侵入したところ、抵抗されたので室内にあったロープで首を絞めて殺した』と話している。遺棄現場の那須町の山林は佐藤の祖父が所有する別荘の敷地内。1979年に160五平米の土地を購入し、92年に延べ床面積60平米ほどの2階建ての別荘を建てている。佐藤は以前から土地勘があったようです」(同前)
埼玉県川口市内で幼少期を過ごした佐藤。母方の祖父は豊島区で年間売上高2億円ほどの電気工事の会社を経営し、埼玉県内の自宅のほかに、会社の所在地である豊島区の約40平米のマンションや那須の別荘も所有する資産家である。
一見、恵まれた環境に生まれたような佐藤だが、小学校の同級生はこう語る。
「家は裕福ではなさそうでした。親は遅くまで働いていて、喜人と一緒にいるのを見たことがない。『今日も遊ぼう』と気さくに誘ってきて、ポケモンのゲームや鬼ごっこをしました。夜遅い時間まで外を出歩き、同じような環境の子たちと公園でよく遊んでいました」
「保育園に転職する前に妻子と別れたようです」
小学校の卒業文集に、将来の夢はバスケットボール選手、好きな番組には上戸彩主演のドラマ『エースをねらえ!』と綴っていた佐藤。別の同級生は「ひょろくて、無口。地味で目立たないグループにいた」と語る。
周辺の取材を進めると、父親の姿は全く見えてこず、幼少時から母子家庭で育ったとみられる。99年から住んでいた川口市の約54平米、1500万円ほどのマンションは母親が一括で購入。2006年には祖父が所有する豊島区のマンションに引っ越している。
都内の赤羽商業高校を卒業した佐藤は、埼玉県内の福祉系専門学校に進学。14年から埼玉県加須市の介護施設に勤め始めた。
当時の施設の社内報には〈母親が保育士をしていたことで、福祉に関心を持った。学校で保育分野と介護分野の両方を学ぶ機会があり、子供から高齢者まで楽しく生活が送れるように支援が出来たらと福祉の道に進んだ〉と綴っている。
佐藤は介護職の傍ら、3年前から排水管清掃業を営む親族の会社の役員にも名前を連ねていた。だが、19年春に突然、介護施設を退職。同年7月から豊島区の保育園で保育士として働き始める。それに伴い、豊島区目白の家賃6万5000円、築50年ほどの2DKのアパートで、母親と2人暮らしを始めた。
「佐藤は周囲に離婚歴があり、子供と別居中であることを明かしており、保育園に転職する前に妻子と別れたようです」(前出・記者)
複数の女性をつけ回し、婚活アプリで女性を“物色”
同じアパートの住民は佐藤の印象をこう語る。
「引っ越しの際、お母さんが菓子折りを持って挨拶に来てくれました。(佐藤は)挨拶すると『どうも』と返してくれる、大人しい感じの人です。報道では29歳と出ていましたが、もっと年上だと思っていました」
母親は布団を干すなどして、息子の世話を焼いていたという。そんな母親の目を盗み、佐藤は今回の事件を起こしたのだ。事件後も何食わぬ顔で保育園に出勤し、園長は「ごくごく普通の青年でした」と話す。
だが、“普通の青年”の仮面の下に隠れていた本性が徐々に露になりつつある。
9月以降、佐藤の自宅近隣の防犯カメラからは、複数の女性の後をつけ回す姿が確認されている。さらに、佐藤が婚活アプリを使って女性を“物色”していた形跡もあるのだ。
「佐藤は会員制の婚活アプリ『ペアーズ』に登録し、逮捕の直前までログインして交際相手を探していたのです。このアプリは登録者数が国内最大級で、検索機能が充実しているのが特徴。年収や身長だけでなく、居住地で相手を絞り込むこともできる。位置情報をアプリと連動させれば、自身の現在地から10キロ圏内の相手を探すことも可能です」(前出・記者)
佐藤はアプリのプロフィールに、保育士をしており、年収は200万~400万円、ディズニーランドが好きで年間パスポートを保有していたことなどを公開。相手に期待する性格・タイプとして「優しい、照れ屋、家庭的」などを挙げ、〈家でゆっくりしたり、旅行に行ったりとインドアアウトドア両方楽しみたいです〉とコメントしていた。
女児の下半身を触った強制わいせつの疑いも
さらに、捜査関係者はこう打ち明ける。
「11月に新宿区内で小学生女児の下半身を触った強制わいせつの疑いが浮上し、捜査が始まっている」
逮捕当初は「金を奪う目的で侵入した」などと供述していた佐藤だが、現在は黙秘に転じているという。
「捜査幹部も『供述がかなりのスピードで後退している』とボヤいている。また、犯行に使ったとされるロープが発見されていなかったりと、供述には怪しい部分も多い。今後、余罪も明らかになるでしょう」(同前)
一方、被害者の富塚さんは、大手銀行系消費者金融で事務職を務めていた。
「小柄で元気がよく、明るい性格のムードメーカー。大学時代にはテニスサークルに所属し、練習に励んでいました。職場でも真面目で誠実な仕事ぶりが信頼され、周囲には友人も多かった。動物好きで、実家で飼っているウサギのことは特に溺愛していましたね」(富塚さんの知人)
そんな富塚さんの遺体を車に運び込んだ後、佐藤はキャリーケースに財布などを入れて持ち出し、自ら失踪したかのような偽装工作まで施していた。
婚活アプリの趣味の欄に〈旅行です。色々な所に行きたいと思っていますが、なかなか時間がないので近場でストレスを発散しています。那須には0歳の時から毎年行っています。自然豊かな那須は最高です〉と記した佐藤。稚拙な犯行の末、遺体を隠すのに選んだのは、幼少時から慣れ親しんだ、その那須の地だった。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年12月17日号)
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