「有名人の自死がショックで何も手につかない」…中野信子が教える「あなたに必要な“4段階”」

文春オンライン / 2021年1月3日 6時0分

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中野信子さん ©文藝春秋

 みなさまのお悩みに、脳科学者の中野信子さんがお答えします。

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Q 有名人の自死がショックで何も手につきません――41歳・専業主婦からの相談

 俳優の三浦春馬さんが亡くなったことが自分でも驚くほどショックです。もちろんお会いしたこともないし、特にファンだったというわけではないのに、胸がふさいで食欲もなくなり、家事がまったく手につきません。毎日、暗い気持ちでため息ばかり吐いているのです。

中野信子の回答

A 三浦春馬さんには多くの人が好感を持っていたと思います。突然亡くなったことに私もショックを受け、しばらく解決のつかない気持ちを引きずりました。

 亡くなったのは直接知っている人ではないのにショックを受けて気持ちがふさぎ、悪くすると後を追って自死を選んでしまうという現象はかなり以前から知られ、ウェルテル症候群と呼ばれています。

 ウェルテルとはゲーテの『若きウェルテルの悩み』の主人公です。彼は物語の最後に自殺してしまいます。ヨーロッパではこの小説に触発された若者の自殺が増えたことがありました。

 メディアが自殺を大きく報道すればするほど自殺率が上がる、また、その報道記事が手に入りやすい地域ほど自殺率が上がるということもわかっています。アメリカの社会学者デイビッド・フィリップスがこの現象について統計をとって証明し、ウェルテル効果と名づけたのです。

 日本でもアイドルの岡田有希子さんや元X JAPANのhideさんが亡くなったときに、後追い自殺と見られる死者が相次ぎ、社会問題になりました。

 自殺はしないまでも、悲嘆にくれてしまう。三浦さんの場合、死に至った理由についていろいろ憶測はあるものの、実際のところはわからないというのも大きく足元を揺るがされるような、不安な気持ちが湧いてきてしまいますよね。

 現在はネットで様々な情報が瞬時に入ってきます。ネットニュースなどでも、これまでの閲覧履歴を参照し一人ひとりのユーザーに合わせて最適化された関連記事がズラッと表示されますから、そういう記事ばかり読み漁ることになってしまう。これでは何も手につきませんね。

 こうした情報のリーチがあるほど気持ちもネガティブになりやすくなります。閲覧履歴によって、表示されるニュースの傾向が左右されるので、まったく別のニュースを積極的に閲覧するようにしたほうがいいかもしれません。

親しい人が亡くなったときに経験する“4段階”

 フロイトが唱えた「喪の仕事」という概念をイギリスの精神分析学者ボウルビィが4段階に細分化した喪の作業があります。親しい人が亡くなったとき、喪失感で何も考えられなくなる第1段階。亡くなったことを現実として受け入れたくないという第2段階。受け入れることに抵抗するのを断念する第3段階。この3つの段階を経て、生前あんなことを言っていたな、自分にとってはこういう人だったなと、冷静に回顧できる第4段階に至ります。

 三浦春馬さんとは、現実の世界では何の接点もなかったかもしれない。でもその情報を日々、目にしているという観点からすれば、心の中では近い存在といえる人でしょう。

 もしかしたら、あなたにも「喪の仕事」が必要なのかもしれません。例えばお寺や神社にお参りして、三浦さんの死出の旅路が安らかであらんことをひっそりと祈ってみる、三浦さんの愛読書を買って読んでみる、行きつけだったお店に足を運んでみる……そうやって、そっと三浦さんを送るのです。

 お互いに本誌で連載しているご縁からよく対談をさせていただいている内田也哉子さんも、三浦さんとお付き合いがあったわけではないのにしばらくはショック状態だったとのことです。そして夫の本木雅弘さんと三浦さんのことを話したそうです。也哉子さんと本木さんは、おそらく無意識に「喪の仕事」をされていたんですね。

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みなさまのお悩みを  woman@bunshun.co.jp (件名を「中野信子人生相談」に)もしくは〒102-8008 東京都千代田区紀尾井町3-23「週刊文春WOMAN」編集部「中野信子の人生相談」係までお寄せください。匿名でもかまいませんが、「年齢・性別・職業・配偶者の有無」をお書き添えください。

text:Atsuko Komine

(中野 信子/週刊文春WOMAN 2020 秋号)

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