安藤美姫(33)が指導者にならない理由は「お金」よりも…。フィギュア界の“ある事情”

文春オンライン / 2021年1月24日 17時0分

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2016年にマドリードで行われた「レボリューションオンアイス」で滑る安藤美姫 ©️Getty Images

 2020年末に行われたフィギュア全日本選手権。会場はもちろん満員となり、テレビの視聴率も高かった。スター選手の引退で先行きが懸念されていたフィギュアスケートだが、今も高い人気を保っている。

フィギュアの指導者を目指す選手は少ない

 スポーツニュースや新聞での扱いも大きい。つい20年前には大会のテレビ中継さえ満足になかったことを考えれば、隔世の感を覚える。

 しかしそんな中で、1つ不思議に思うことがある。競技を引退したあと、指導者を目指す選手が少ないことだ。

 たとえばプロ野球では、「引退したら監督、コーチになりたい」と話す選手は多い。チームの数、コーチの席は限られているので誰もがなれるわけではないが、引退した選手の進路として指導者はかなり優先度が高い職種だ。

 これはプロ野球に限った話ではなく、アマチュアスポーツでもトップ選手が引退して指導者になるルートは“主流”と言えるものだ。

織田信成もトラブルで退任

 しかしフィギュアスケートの場合、引退して「指導者を目指します」という選手は多くない。

 特にフィギュアスケート人気が高まってからの選手はその傾向が強い。思いつくのは2017年に関西大学の監督に就任した織田信成(33)くらいだが、濱田美栄コーチとのトラブルで2019年には退任を余儀なくされている。

 女子選手にも、同じ傾向がある。たとえば安藤美姫(33)だ。

 安藤は、まぎれもなく世界的なトップスケーターだった。オリンピックではメダルに手が届かなかったものの、世界選手権では優勝。その他の国際大会でも華やかな活躍を見せた。

 日本のフィギュアスケート人気にも大いに貢献し、浅田真央(30)とともにフィギュアブームをけん引した存在でもある。自宅に連日メディアやファンが殺到した時期もある。

安藤美姫の、芸能人的な自意識

 しかしそんな彼女も、2013-2014シーズンを最後に現役を退いて以降、解説者などにはならずアイスショーの出演とテレビのバラエティ番組をメインに活動している。生来の気の強さからテレビへの適応に苦労した時期もあったが、徐々に角が取れ、今ではフリートークもお手の物だ。バラエティ番組『アイ・アム・冒険少年』(TBS系)の無人島を脱出する企画「脱出島」では常連にもなっている。

 昨年の12月には「Zoom ファンミーティング」を有料で開催した。そんなところもインフルエンサー、芸能人的な自意識を感じさせる。

「指導者を目指す」と話していた時期もあるが、実際の安藤の活動からは、指導者への意欲はそこまで感じられない。他の元トップ選手たちを見ても、浅田真央や荒川静香(39)がコーチとしてのキャリアを目指しているという話は聞かない。振付師として活動を始めた鈴木明子(35)が数少ない例外だろう。

指導者の待遇は決して悪くない

 なぜフィギュアのトップスケーターたちは指導者を目指さないのか。フィギュアスケートの取材歴の長いベテラン記者はこう語る。

「スケートも指導者としてやっていく道はありますよ。クラブや大学のコーチはたくさんいますし、給料もそれなりに出ています。指導者として名をあげれば、収入も数千万円単位になります。国際大会へ同行する時は当たり前のようにビジネスクラス、という人もいます。テレビ出演で同じ額を稼ぐのは簡単ではないと思います」

 一流選手が一流指導者の資質を持っているとは限らないが、現役時代の実績は何かと有利に働くのも事実。では収入という面でも問題ないとしたら、なぜその道を選ぶ元スター選手たちがこんなにも少ないのだろうか。

「フィギュアの人気が高くなったことが理由です」

 前出の記者が、言葉を続ける。

スポットライトの味が忘れられない?

「指導者ほどではないにせよ、シーズンオフになると開かれるアイスショーの実入りが結構いいんです。フィギュア人気があがって、コロナ禍に入るまではアイスショーの数も増える一方でした。昔は空席が目立つショーも珍しくなかったですが、今はスター選手が出ていればほぼ満員になります。なので人気の選手は、現役時代から引退後までアイスショーに引っ張りだこ。そして、スケーターとして体験したスポットライトの味はやっぱり忘れがたいのだと思います。安藤は特に、アイスショーやテレビ出演の“派手な雰囲気”が好きなタイプ。指導者というのはどこまで行っても裏方ですからね」

 本気で指導者の道を目指すことになれば、アイスショーとの両立は難しくなる。アイスショーのために毎日リンクで練習しながら、現役の選手たちをきっちり指導するのはほぼ不可能だ。

 考えてみれば、フィギュアほど引退しても現役時と変わらない活動ができる競技はなかなかない。場合によっては、公演回数が多いアイスショーの方が現役時代よりも観客の前で滑る機会が多いケースすらある。とりわけ安藤が出演する「スターズ・オン・アイス」や「プリンスアイスワールド」などの権威あるアイスショーは、演出やライティングも豪勢でエンタメ性にあふれている。

安藤の指導者としての資質は?

 では、安藤が指導者の道へ進むことはありえないかというと、そうでもない。実は安藤に指導者としての資質を期待する人も多いという。

「安藤がイベントなどに呼ばれて子供たちにスケートを教えることがあるのですが、その評判がとてもいいんですよ。子育て経験からくるものかもしれませんが、子供との距離の詰め方、突き放し方が巧みだと言います。情の厚いタイプなので相性はばらつきがありそうですが、ハマれば案外いい指導者になる可能性はあると思うんですけどね」(前出のベテラン記者)

 30歳で大ベテラン扱いと、競技選手としての寿命は短いフィギュアスケートだが、引退後のプロスケーターに定年はない。しかしさらに長い人生を考えれば、どこかでさらに次のキャリアを考える必要もある。

 日本中を沸かせたスター選手が指導者として帰ってくれば、フィギュア界もさらに盛り上がることは確実。果たして彼ら、彼女たちはどんな決断をするのだろうか。

(小野 歩/Webオリジナル(特集班))

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