「うるせえなと突然キレる」「将来への不安を口にする…」 40代、働き盛りの男性を襲う“病気”の正体とは

文春オンライン / 2021年2月2日 6時0分

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©️iStock.com

 穏やかでいつも笑顔だった夫が、50代直前くらいから突然口うるさくなったり、キレるようになったり……。そんな男性の40~50代の変化には、「男性更年期障害」が隠れているかもしれません。働き盛りの男性のホルモンバランスについて、「 VERY2021年2月号 」より、エピソードと井手久満医師の解説を引用して紹介します。

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 年上夫を持つ読者さんたちから「最近夫がすぐ怒り出すようになった」「細かいことをしつこく言うようになった」という話を聞くことが多くなりました。

 なかには「夫のことを好きじゃなくなりそう」と、夫婦仲が険悪になったご夫婦も。夫が変わった原因には“男性更年期障害”があるそう。

 男性は私たちのように周りに悩みを打ち明ける環境がなかったり、プライドが邪魔をして「更年期」を認めたくない人も多いようなので、妻である私たちも現実をおさえておいたほうがいいかもしれません。

EPISODE 1 いつも笑顔だった夫が

 A/Yさん(夫53歳/妻39歳 7歳女の子、5歳男の子)

 穏やかでいつも笑顔なところが夫の良さだったのに50代直前くらいから口うるさくなったり、突然キレるようになりました。例えば、若葉マークをつけた車が駐車スペースに入れるのに時間がかかって待たされていたとき、突然、クラクションを5回連続で鳴らしたんです。駅前だったので周りの人たちが見てるし「やめなよ。かわいそうだよ」と言うと「うるせえな。何が悪い」と大きな声で怒鳴られて。また、園行事でママ友と子どもたちとの写真を撮るのを夫にお願いしたとき、ママ友と笑いながら喋っていたら突然「失礼だろ、もう撮らない」とどこかに行ってしまい、ママ友たちも唖然。その夜「俺のことをママ友と一緒に笑ってた、悪口でも言ってたんだろ、不愉快だ」という内容が書かれた勘違いの長文メールがきました。ただママ友と話していただけなのに。子どもに対しても小うるさくなり、常にパパのご機嫌を窺うようになりかわいそう。これがずっと続くかと思うとうんざりします。

EPISODE 2 「性欲が減った」と

 F/Oさん(夫47歳/妻37歳 7歳男の子)

 もともと性欲が強めだった夫。子どもが生まれてからもセックスレスの夫婦にはなりたくないというのがお互いの共通認識で、結婚して10年ですがずっと欠かさず週1回はありました。でもここ1年「疲れてるから」としないことが頻繁に。浮気を疑い理由を聞くと「性欲が減ってする気が起きない」との返事が。子どもとよく公園で遊んでいたのに、最近はすぐ帰ってきて「疲れた」と言うようになり心配です。

EPISODE 3 酔って絡んでくるように

 E/Iさん(夫54歳/妻40歳 9歳男の子)

 周りからも「あんないい旦那さんいないよね」と言われるくらい優しくてマメ。朝食は毎日夫が作るくらい、家事にも育児にも積極的なタイプでした。でも2年くらい前から気持ちの浮き沈みが激しくなり……。機嫌のいいときは「家族で出かけよう」と提案してきて外出するのですが、機嫌が悪い日は一日中自分の部屋から出てきません。そしてお酒の飲み方が激変。今までスマートな酔い方だったのが、すぐ酔っ払って大声を出したり、絡んでくるように。仕事と私への文句が止まらなくなるので、「お酒を飲む量を減らして」と何度も言い争いになりましたが「俺の唯一の楽しみを奪うのか」と激昂。男性にも更年期があると知り、夫にサプリをすすめたら「病人扱いするなんて。俺を薬漬けにするつもり?」と全く取り合いません。夫のことを嫌いになるまっしぐらです。

EPISODE 4 将来への不安を口に

 R/Kさん(夫45歳/妻35歳 7歳・3歳女の子)

 毎週末のゴルフが趣味でアクティブだったのに、最近は「やる気がしない」と家にいるようになりました。子どもの入学を機に家を買おう、と乗り気だったのは夫なのに、「ローンを払っていけるか心配。あなたももっと働いて」と将来への不安を口にするようになったり、「娘の結婚を見届けられるかな」と呟いたりして、こっちまで不安になってしまいます。夫の会社の知人からは、夫のポジションが上がったから周りに気を遣っている、と言われていて、その反動もあるのでしょうか。

先生のコメント「4人全員、男性更年期障害の可能性があります」

「A/Yさん〈いつも笑顔だった夫が〉のケースは、当たり散らしたり、不機嫌になったりと、精神的症状が強く出ています。真面目な人、几帳面な人、責任感が強い人がなりやすいのですが、もともといわゆる男性らしい、エネルギッシュな人、パワフルな人など、男性ホルモンの分泌が多かった人ほど、分泌量の減少によって強く症状が現れることが多いです。E/Iさん〈酔って絡んでくるように〉の場合のように、お酒を飲むとより男性ホルモンが減ります。R/Kさん〈将来への不安を口に〉は不安感や落ち込み、全体的な行動力の低下、余暇活動に興味がないように見られることが男性更年期障害の症状です。F/Oさん〈「性欲が減った」と〉のように性欲の減少や勃起障害といった性機能関連に症状が出てくることも、男性更年期障害の大きな特徴です」

男性の場合目安がない

 更年期障害は、女性特有のものではなく、働き盛りの40~50代の男性にもある「病気」です。“男性更年期障害”とは、加齢に伴う男性ホルモン(テストステロン)の低下によって引き起こされる症状のことで、医学上はLOH症候群(late-onset hypogonadism、加齢男性性腺機能低下症候群)と呼ばれています。最も多いのは50代ですが、40代以降でも発症します。男性の場合は女性のように閉経前後といった目安がないので、気づきにくかったり、人によっては長引くケースもあります。

一般的な老化との違い

 テストステロンの量は、20歳ごろをピークに年齢とともになだらかなカーブを描いて減少していきますが、“ストレス”によってテストステロンが急激に減ることで症状が現れやすくなります。老化の一つですが、“ストレス”が誘因になることが一般的な老化との違いです。男性の40~50代に多いのは、加齢によるテストステロンの減少に加えて、中間管理職になっての職場での責任感や、子どもの受験や親の介護など家庭でのストレスの多い時期だからとも言えます。

AMSスコアでチェック

 症状は大きく身体症状と精神症状に分けられます。身体症状は、朝勃ちの消失や勃起不全(ED)といった男性機能の低下などの他、のぼせ、多汗、全身倦怠感、筋肉や関節の痛み、筋力低下、骨密度低下、頭痛・めまい・耳鳴り、頻尿などがあります。精神症状としては、不眠、無気力、イライラ、性欲減退、集中力や記憶力の低下などとともに、うつ症状が出る場合も。さらに、男性更年期障害によって、肥満や糖尿病、心筋梗塞、脳卒中などの病気のリスクが高まることも分かっています。症状は多岐にわたり、人によって現れ方はさまざま。「ただの疲れ?」「歳のせい?」などと思い込んでしまい、症状を放置して重症化してしまうことも珍しくありません。もしも夫に心当たりの症状があったら、男性更年期障害なのかどうか「AMSスコア」でチェックしてみてください。AMSスコアは男性更年期障害の診断に世界的に広く用いられている質問票で、17項目の質問に5段階で回答し、それぞれの点数を合計して総点数で評価します。

メンズヘルス専門の外来がベスト

 医療機関を受診する場合は、男性更年期障害専門外来やメンズヘルス外来など専門の外来があるところがベストです。 「日本Men's Health医学会」のホームページ には全国にあるメンズヘルス外来など専門外来が掲載されています。採血してテストステロン値を調べ、診断がついたら漢方薬、または注射や塗り薬のテストステロン補充療法、そして生活改善を指導します。これらの治療で8~9割の患者さんの症状が改善します。普段の生活での予防・改善策としては、適度な運動、スキンシップも有効なので夫婦で手を繋いでウォーキングもいいですね。またビタミンEが多く含まれたアボカドや山芋やオクラなどのネバネバ系の食品は、男性ホルモンの増加に効果的です。

半集中 風の呼吸 暖簾に腕押し糠に釘(編集後記)

 私はいま50代で、LOHど真ん中世代。「男性更年期盛り」の年齢だが、AMSテストを試してみると、これがほとんどあてはまらない。ほんとに。テストステロンが分泌過剰なのか、まさかのノー・ストレスなのか……。ただの変態オヤジという可能性も否定できない。「人生の山は通り過ぎた」という自覚はもちろんある。実際、そうだから。定年、そして死というものがリアルに視野に入ってくると、春になれば「この桜もあと何回観られるのか」と思うし、校了日には「あと何回VERYに関われるだろう」と少し黄昏れる。「憂うつな気分」とはこのことか。

 さて、一般的に、男性はいろいろ弱ってくると、守りに入り警戒心も強くなる。すぐにイライラするのも、「俺をバカにしただろう」と突然キレるのも、被害妄想的・過剰防衛反応。男性更年期障害という指標を知っていれば、「あ、このイライラはいよいよね」と冷静に対応できる。不機嫌オーラを出してくる人間は基本「かまってちゃん」なので、まずは相手にしないこと。下手にかまうと「待ってました」とますます絡まれる。露骨に無視をするとこじらせる危険性があるので、鈍感力全開の疑似コミュ障演技で気づかないふりをする。「そういう空気読めない人間なんです私」(これは不機嫌でその場を支配しようとする職場の上司に対しても有効。ただし、一貫性、持続性が要求される技)。彼らはイライラし甲斐がなくなるので、少なくともあなたに不機嫌オーラを発動することはなくなるはず。「糠に釘」の糠になれ、壱ノ型・糟糠之妻。それでダメならプロの力を借りるネクストステージへ。いずれにせよ、更年期もいつか終わります。それはそれでまた、さびしいけど。(フォレスト・ガンプJr.)

取材/立花あゆ イラスト/88:70 編集/フォレスト・ガンプJr.

教えてくれたのは…

井手久満先生

 獨協医科大学埼玉医療センター泌尿器科教授・低侵襲治療センター長、こころとからだの元氣プラザでも男性更年期外来にて診療
 

 

(「VERY」編集部)

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