「安倍前首相は韓国の“国民情緒”をつかめなかった」文在寅大統領のブレーンが歴史問題に吠えた!

文春オンライン / 2021年2月2日 6時0分

写真

徴用工への賠償を訴えるデモ

「徴用工判決」によって日本製鉄や三菱重工など日本企業の資産が次々に差し押さえられ、まもなく強制的に売却されようとしている。

 韓国はそこにさらなる追い討ちをかけてきた。

 戦時中に従軍慰安婦だったと称する人々が韓国ソウル中央地裁に日本政府を訴え、裁判所は日本政府に慰安婦1人あたり1億ウォン(約1000万円)を支払うよう命じる判決を出したのだ。

 だが、国際慣習法上、主権国家が外国の裁判で被告とされることはありえない。しかも、2015年の日韓慰安婦合意では「最終的かつ不可逆的な解決」を世界に向けてアピールしていた。それにもかかわらず、韓国は国際約束を一方的に破棄。さらにGSOMIA(日韓秘密軍事情報保護協定)の破棄表明、自衛隊機へのレーダー照射など、韓国が日本に対して行ってきた敵対行為は枚挙に暇がない。

 いったい韓国は日本との断交を望んでいるのだろうか?

“文在寅のブレーン”の正体

 外交交渉をするには、まず相手国の内在論理を知らなければならない。

 韓国の外交政策のキーマンは、韓国大統領府の文正仁・統一外交安保特別補佐官(69)である。文在寅大統領の外交・安全保障における最大のブレーンとして、同氏は強い影響力を持っている。

 文氏は韓国の名門・延世大学政治外交学科教授を長らく務め(現在は名誉特任教授)、金大中、盧武鉉大統領時代に政権中枢で大きな役割を果たした。とりわけ北朝鮮に宥和的な「太陽政策」の企画・立案に関与し、南北首脳会談にも同席している。

 文氏は約1年前には国際会議で「北朝鮮の非核化が行われずに在韓米軍が撤退したら、中国が韓国に『核の傘』を提供し、北朝鮮と交渉する案はどうだろう」と中国側に問いかけ、物議を醸した。

 凍りつく日韓関係について、文氏はどう見ているのか? 同氏は「文藝春秋」のインタビューに応じ、現在の日韓関係について語った。まずは日本に対する文氏の思いを聞こう。

「韓国の国民情緒に合わない」

「日本では『徴用工問題が解決されなければ、韓日首脳会談や韓日中三カ国首脳会談は難しい』との報道があるが、それは望ましくないと思います。むしろ、徴用工問題があるからこそ、首脳会談は開かれるべきです。会ってこそ解決の糸口がつかめるのではないですか。

 日本の首相が北朝鮮の金正恩委員長には『無条件で会う用意がある』と言いながら、韓国には『徴用工問題が解決されなければ訪韓しない』と条件をつけるとすれば、韓国の国民情緒にも合わないでしょう。建設的な韓日関係のために、それはよくない。歴史問題を解決するには、まずは大韓民国の国民の心をつかまなければならないのです。日本は大局的な政策をとるべきです」

 韓国では、しばしば法や国際条約よりも「国民情緒」が優先するとされる。それを念頭においた発言が続く。

「文在寅大統領とはこの前も似たような話をしましたが、徴用工問題や慰安婦問題などの歴史問題は、首脳間の話し合いで妥結する問題ではない、というのが大統領の基本的な考えです。国民の情緒が関連するため、時間をかけて治癒していくヒーリングの過程が必要なのです。韓日間の戦略的協力、北朝鮮の核・ミサイル、米中の葛藤問題――このようなテーマについて両首脳が虚心坦懐に話し合い、経済協力のような具体的プランを用意する。すなわち戦略的協力と経済協力が進展すれば、国民世論が形成され、自ずと歴史問題の解決策も出てくるということです」

「東京五輪で南北融和を」

 そして、文氏の批判の矛先は安倍晋三前首相に向けられる。

「ところが日本側はその手順(sequency)を変え、まず歴史問題を解決しよう、その後に経済協力や戦略的協力をしようというのです。安倍晋三前首相と文在寅大統領が噛み合わない最も大きな理由が、まさしくそこにありました。

 これは常識の問題ですが、歴史問題を大統領一人でどう解決するのですか? 戦略的協力と経済協力を強化していくことで韓日親善の幅が広がれば、自然に歴史問題の解決策が出てくるはずです。そうすれば韓国の国民情緒も良くなるはずですが。日本の政治家の方々に、このメッセージはぜひ伝えて頂きたいです」

 さらに文氏は、今夏開催予定の東京オリンピックを「南北融和のきっかけにしなければならない」と位置づけ、金正恩委員長の出席の可能性については「金委員長に招待状を送り、環境づくりをする作業はかなり必要になるでしょう」との見通しを語った。

 ――こうした文氏の発言を不快に思う日本人は多いだろう。しかし、韓国の内在論理を把握したうえで、日本はそれに負けないしたたかな外交を展開しなければならないのである。

 その第一歩として絶好の素材である文氏のインタビュー「 徴用工問題に『癒しの基金』を 」の全文は「文藝春秋」2月号および「文藝春秋digital」に掲載されている。

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2021年2月号)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング