「34歳と36歳では市場での立場が全然違う」マッチングアプリ“3カ月婚”の会社員女性が告白《コロナ婚活の現実》

文春オンライン / 2021年2月25日 17時0分

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写真はイメージです ©️iStock.com

 コロナ禍の「新しい生活様式」でダメージが大きかった業界というと飲食店や百貨店の印象が強いが、それらの業界に負けず劣らず大きな影響を受けたのが「婚活」だった。

「人に会う」こと自体のハードルが上がり、合コンやお見合いのようなリアルでの活動が難しくなった。厚生労働省が発表した人口動態統計速報によると、2020年1~9月の婚姻数は前年比で14.8%減と急落しており、中でも緊急事態宣言が発令された4、5月の落ち込みが大きかった。

 そんな中で存在感を増したのが「婚活アプリ」である。国内で最大の登録者数を抱えるマッチングアプリ「Pairs(ペアーズ)」は、1~8月のアプリのダウンロード数が前年と比べて2倍に。累計登録者数も1000万人を突破し、「Pairs」以外のアプリも大きく登録者数を伸ばしている。

 そんなコロナ禍の真っただ中に、とあるアプリを使って婚活に挑んだ34歳の女性A子さんに「コロナ禍の婚活」の現実について話を聞いた。

「34歳と36歳では婚活市場での立場が全然違う」

 結論を言えば、A子さんはアプリ婚活に成功。2021年の春に1歳年下の会社員男性と入籍予定だ。A子さんは都内の大手教育系企業に勤めており、同世代の平均より収入は安定している。笑顔が特徴的な小動物系のルックスで、社交的なタイプで友人も多い。それでも、婚活については大きな危機感を感じていたという。

「20代の頃は何人かお付き合いしていたんですが、30歳を超えてしばらくは彼氏がいない時期が続いていました。30歳を過ぎた頃から結婚を意識して合コンに参加したり知人に紹介してもらったりしていましたが、32歳を過ぎたあたりからじわじわ出会いの機会が減ってきて焦りを感じていたんです。それで2020年のはじめに同期の既婚者の友人に『今年こそは結婚する』と宣言したら、その途端にコロナ生活が始まりました。

 ただでさえ減っていた合コンは全くなくなり、知人に紹介してもらう場をセッティングするのも気が引ける。でもこの生活がいつ終わるかわからないし、その間婚活がストップするのは怖すぎました。2年で落ち着くとしても、34歳と36歳だと婚活市場での立場はかなり変わってくる。女性の1年は本当に重いんですよ(笑)。

 婚活アプリは少し前に登録していたんですが、本格的に使ったのはそれからですね。正直そこまで期待してなかったんですけど、リアルの出会いも減って、もうアプリしかないと。それで6月にあるアプリの有料サービスに入会しました」

 有料の婚活アプリは複数あるが、総じて結婚相談所と比べるとリーズナブルな価格だ。A子さんは調べてみて「安い」と感じたという。

「月に3000円~5000円のアプリが多かったんですけど、私は男女ともに毎月1万円くらい払うものを選びました。女性もお金を払っているので真剣度が高いイメージがありましたし、身分を証明する書類なども提出するので男性の身元もしっかりしてるかなと。それでも入会費などがないぶん、結婚相談所よりはかなり安いという印象でしたね」

「家族じゃないとダメなんだな」

 それまで活用していなかったアプリでの婚活を決断したのには、心情的な理由もある。自粛生活が始まる中で、「家族」と「それ以外」の間にある“超えられない線”の存在を痛感したという。

「私は昨年の早い時期に在宅勤務になり、恵まれてると思う一方で誰とも話さない日が続くのはやっぱりキツかった。結婚した友人とも『別にいつでも会えるし』と思っていたのですが、感染リスクのことを考えると実際には遠慮してしまって疎遠に。向こうに子供がいたらなおさらですよね。

『結局、家族じゃないとずっと一緒にはいられないんだ』という孤独を痛感しました。周りの雰囲気としても『(コロナを)家族にうつされた』のは許されても、『友人や恋人と会って感染した』は許されない感じでしたよね。それで、どんなに仲が良くても家族じゃないとダメなんだなって」

 家族を探す、という目的が定まったA子さん。だが現在のマッチングアプリは多種多様だ。割り切った関係を探す人が集まるアプリから、真剣に結婚相手を探すアプリ、その中間の恋人探しに適したものまで、雰囲気はさまざま。その中から“真剣な婚活用”のアプリを選びはしたものの、「まったく知らない人と会う」ことの不安は消えなかったという。

「アプリは相手の素性が分からないところが一番不安でした。たとえば、お見合いなら仲人が保証人の役割をしてくれるわけですけど、アプリ婚活はすべて自己責任。本当は結婚している男性に騙されたらどうしようとか、遊び目的の人だったらどうしようとか。34歳で変な人につかまって時間を無駄にするわけにはいかないのに……という不安はありました。私が課金したアプリでは独身証明書や年収の証明書を提出する仕組みがあって多少は安心でしたけど、どんな人なのかは結局会ってみないとわからないし、最後までドキドキしていました」

 アプリ経由での出会いと聞くと、膨大な人数のプロフィールを「アリorナシ」で次々と斬っていくような“数打てば当たる式”の出会いを想像する人も多いのではないだろうか。A子さんも自分で使うようになるまでは同じような偏見を持っていたが、使ってみて想像とは逆に、「出会う人の少なさ」に驚いたという。

「いいね」の中にも温度差がある

「私が登録したところは1日に紹介されるのは1人だけで、その人に『いいね』を押すかどうかを選ぶ形でした。年収や学歴、体型や喫煙者かどうかみたいな条件を入力してはいるんですけど、何日も微妙な人を紹介され続ける時期もあってそれは正直イラッとします(笑)。でも候補者が大勢いすぎると逆に決められなくなりそうで、1日1人というのは私には合っていたと思います。

 お互いに『いいね』がついたらアプリ側が待ち合わせ場所と時間を決めてくれて、30分限定のお茶をする流れでした。その後に両方が『今後も連絡をとりたい』と答えると、初めて直接メッセージが送れるようになるんです。スケジュール調整も全てアプリ側がやってくれて、勇気を出して連絡先を聞く必要もないので楽すぎて感動しましたね」

 A子さんは「いいね」をつけるのに慎重だったが、それでもマッチした4人の男性とは直接会ったり、オンラインで話す機会があった。そして「いいね」をつけるかどうかの判断自体もシビアだが、その「いいね」の中でも自分の心の中には温度差があるのを感じたという。

「『いいね』の中でも、『すごくいい』から『まあまあ』までグラデーションは正直ありますよ。最初にオンラインで話すかいきなり会うかの希望を出せるんですけど、やっぱり『すごくいい』人には会ってみたいし、一応話してみようというくらいならオンラインの方が楽。結婚となると最終的には会わないと決められませんけど“足きり”というか、合わない人を見極めるのには十分でした。交通費やお茶代がかからないし、映らなければ下はパジャマでもいいから楽。初回をオンラインにするのはおススメです」

 そんな中でA子さんが4人めにマッチングしたのがB男さんだった。B男さんはイベント系の会社で働く会社員で、年齢はA子さんより1つ下。コロナ禍で抱えていたイベントの多くが中止になり、時間ができたことで数カ月前から真剣に婚活を開始していた。

「B男さんとは、初回から『直接会おう』と思いましたね。年齢や年収は希望を入力したうえで紹介されているので大丈夫だし、プロフィール写真も好きな雰囲気でした。しかも会ってみたら『同じ人だとわかるのに、写真よりかっこいい』珍しい人で、『よかった!』と思いました(笑)。

 最初の時はカフェで30分くらい話したはずなんですけど、緊張しててあんまり何を話したかは覚えてません。でも『初回は会って30分で帰る』というルールも自然に守ってくれて、連絡先を聞くわけでもなくそのまま解散したのも好印象でした。家に帰ってすぐ『引き続き連絡をとりたい』というボタンを押しました」

「たくさん会い過ぎるとわからなくなりそう」

 B男さんも「連絡をとりたい」という意思表示をしてくれたことで、晴れて2人はマッチングすることに。一度目のデートは美術館へ。二度目のドライブデートの帰りにB男さんが「付き合ってください」と告白し、A子さんも「はい」と答えてカップル成立となった。

「私の場合は彼と話してるのがとにかく楽だったので、それが決め手でした。直接やりとりするようになってからは、他の出会い方と差はないと思います。『もっといろんな人を見ないと決められない』と迷うかなと心配してましたが、思ったよりすんなり決断できた自分に驚きました。でもアプリを始める前から合わせれば大勢の人とすでに会ってましたし、たくさん会い過ぎると逆によく分からなくなっちゃいそうで」

 A子さんがカップル成立で退会を決めたのは、6月にアプリに登録してから3カ月後の9月、B男さんと初めて会った7月からは2カ月というスピード退会だった。それでも、今後のことはまだ未定の部分も多いという。

「私もB男さんも親が寛大で、『顔合わせもオンラインでいいんじゃない?』という雰囲気だったのでまだ向こうの両親には直接会えていません。入籍は4月の予定ですけど、結婚式はまだ全然わかりませんね。半年後に式場を予約したとしても状況がどうなってるかわからないし、B男さんの仕事がイベント系なのでその見通しも立っていないので。幸い私の仕事は安定しているので、何とかなると思ってますよ」

 結婚を決め、家族や友人にもお互いを紹介しはじめたA子さんとB男さん。出会いが婚活アプリであったことを隠すカップルもいる中で、2人は最初からすべてオープンにしているという。

「私の周りではアプリで婚活するのは割と普通で、婚活中も他のアプリを使っている人に『そっちはどう?』って聞いたり、『この人どう思う?』って相談したりしていました。私が結婚を決めたのを伝えたら、友人が2人同じアプリに入会したって報告が来ましたよ(笑)。

 親も偏見がなくて、逆に『親戚の子がこのサービスで結婚したらしいからやってみれば』って勧めてくるくらい。親や周りに隠し続ける必要があったらやっぱりストレスはあったでしょうね」

これまでアプリにいなかった層と出会うチャンス

 A子さんとB男さんは「コロナ禍の婚活」に適応して、どちらも婚活アプリを始めて数カ月で“運命の人”に巡りあったことになる。『100日で結婚』などの著書があり、結婚相談所を主宰する仲人の鎌田れい氏も、2人のようなケースは増えていると解説する。

「婚活市場全体でみて婚姻数が劇的に増加しているわけではありませんが、『家族が欲しい』という気持ちは確実に強まっています。結婚はしたいのに出会いの機会は激減している状況を受けて、これまで婚活アプリを使っていなかった層が流入してるので、新しい人と出会うチャンスも増えています。アプリで出会って結婚する、というケースはしばらく増え続けると思います」

 コロナ禍という新たな状況の中で、婚活市場も新たな局面に入っている。変化を恐れず環境に適応した人が生き残るのは、ここでも同じのようだ。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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