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「WHITE」の刺青を消しても気持ちは変わらず…バイデンの“公開処刑“を望むアメリカ極右集団のヤバい“思想”

文春オンライン / 2021年3月16日 6時0分

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議事堂に軍隊フォーメーションで突入するOath Keepers (United States District Court, D.C.の文書より)

 コロラド州コロラドスプリングスに「リデンプション・インク」という名の刺青サロンがある。全米から、改心した人種差別主義者や白人至上主義者が、ナチ党のかぎ十字シンボルや黒人蔑視の刺青などを消すために集まる特殊なサロンだ。実際に消すのは困難なため、美しい花や縁起の良い刺青を上彫りする。

 1月6日の米議事堂乱入事件直後から、この刺青サロンに予約が殺到している。現在予約待ちがおよそ700人。サロンによると、最近の客は改心のためというよりは、警察の捜査や人の目を恐れてという印象を抱くという。また、かなりの数の客が米軍関係者だという。

メンバー数は3.5万、米国最大の反政府過激団体

 議事堂乱入には、いくつもの過激派、白人至上主義団体やヘイト・グループが加担した。その中で最も注目を浴びているのが「オース・キーパーズ(Oath Keepers)」という名の極右集団。現役、もしくは退役した軍人、警察関係者により構成され、襲撃時に組織力と武装力のレベルの高さを見せつけた。メンバー数は自称35000人(2016年)。現在、米国最大の反政府過激団体である。

  オース・キーパーズは2009年に、スチュワート・ローズという名の頭脳明晰だが偏った危険思想を持つ男によって創設された。彼は名門イエール大学を出た弁護士で、オース・キーパーズ設立前は、共和党有力議員の秘書をしていた。また、荒くれ者が多いと言われる米軍の落下傘部隊に所属していたこともある退役軍人である。

 ローズは「国内、国外からのあらゆる敵から米国憲法を守る」という売り文句で、軍関係者と警察関係者に狙いを定めてリクルートし、自警団体として短期間で急成長させた。各州に支部を作り、それぞれが軍隊レベルの訓練を行い、大量の戦闘用武器を全国に備蓄している。ローズは自身のカリスマ性と高い指導力でメンバーを魅了し、洗脳してゆく。ローズの真の目的は政府転覆だ。メンバーらに、現政府や政治家がいかに腐敗しているか、この世がいかに嘘に溢れ、市民が政府によって欺かれているかを説き、オース・キーパーズこそが、アメリカの価値観と市民を守る最後の砦だと叩き込む。メンバーオンリーのチャットは、陰謀説に満ち溢れている。いつミャンマーのような状態になってもおかしくないような論調だ。

 ここ数年、黒人住民と警察の衝突があるたびにどこからともなく現れ、「市民を守る自警団」としてAK-47や突撃銃を持って街を徘徊し、地元住民から気味悪がられていたのもオース・キーパーズだ。

 彼らはトランプ元大統領が就任した直後から、「我々の思想を理解する真の大統領」として全面的に支持をしていた。議事堂乱入事件直後から、司法省とFBIが危機感を持って最優先でオース・キーパーズを捜査しているのは、このトランプ元大統領に対する過剰なまでの思い入れと、小さな国並みの量の武器を隠し持っているとされている事が理由である。

防弾チョッキ、武装した予備軍 ── 周到に準備された議事堂襲撃

 議事堂襲撃当日は、ローズ自らが乱入を指揮していたことがわかっている。暗号化されたチャットを使い、メンバーらに侵入経路を指示しつつ、全体の状況を逐一報告していた。一部のニュース映像には、軍隊式のフォーメーションで列をなし、議事堂に突破侵入する数人のメンバーが捉えられている。

 さらには、ワシントンDC市内に銃砲が持ち込み禁止のため、ポトマック川の対岸バージニア州に銃砲で武装した予備軍を待機させていた。ローズは、いざとなったら予備軍をフェリーで送り込もうと計画していた。これはオース・キーパーズがかなり前から襲撃を計画し、全面的な衝突となった場合は団体をあげて戦い抜こうとしていたことを示している。

 すでにローズ以外のリーダー格9人が逮捕された。逮捕された実行犯らは当日軍服に身を包み、防弾チョッキにヘルメット、手には棍棒という完全装備で目立ったため、早い逮捕に繋がった。リーダー格以外のメンバーは、当日平服で武器を持たずに参加するように指示されていた。そのため議会襲撃に関与した、一説には数百とも数千とも言われている「オース・キーパーズ」のメンバーはそれぞれ地元に戻り、次の襲撃に向けて準備をしているとされている。

「オース・キーパーズ」をはじめトランプ元大統領を盲信する人たちは、未だにトランプ氏が大統領に返り咲くと信じ続けている。トランプ氏が戒厳令を宣言し、軍隊に守られる中、再び大統領の座につき全面戦争が始まる、というのが彼らのシナリオだ。その日を「嵐の日」と呼んでいる。

反対派は全て粛清、トランプ大統領が返り咲く「嵐の日」のシナリオ

 最初は3月4日だと予告していた。3月4日は、現在の大統領就任式の日程(1月20日)に変わる以前の就任式の日程だった。こじつけに過ぎないが、トランプ氏のサポーターたちは、本気でその噂にしがみついていた。しかし3月4日が何もなく過ぎると、今度は3月20日だと言い出した。3月20日は、共和党が創設された記念日に当たる。具体的な日時を予告するのは得策ではないと考え始めた一部のサポーターたちは、「実はトランプ氏は未だに元大統領として陰で国の指揮を執り、来たる全面戦争の準備をしている。バイデン大統領は、実はトランプ氏が操るサイボーグ人間」という荒唐無稽な説を流している。

 彼らが心待ちにする「嵐の日」には、トランプ大統領が返り咲き、バイデン大統領及びハリス副大統領、その他存命中の元大統領ら、現役政治家全員、報道関係者やなぜか芸能人までもが逮捕され、軍事裁判にかけられ、すぐさま全員がホワイト・ハウスの庭に設けられた処刑台で公開処刑となる。そして軍隊が政権を引き継ぎ、彼らは勝利するというのがシナリオだ。

 あの日、1月6日に議事堂を襲ったトランプ元大統領の支持者たちは、真顔でこの説を訴えている。こんな現実味のない話にしがみつくほど、彼らは洗脳され、追い詰められ、行き場を無くした状態にある。これが最後のチャンス、この戦いに負けたらアメリカという国がなくなるという恐怖でまともな思考ができない状態にある。

 当然の如く、トランプ氏が大統領に返り咲くことはあり得ない。しかし彼らは待ち続ける。というわけで、一触即発の状態は続いて行く。

「最悪は内戦」アメリカを悩ます反政府勢力の動き

 先日、次期司法長官に指名されているメリック・ガーランド判事の承認公聴会が開かれた。ガーランド氏は温厚な物腰ではあるが、ホームグロウン・テロリズム対策のベテランである。クリントン政権で司法副長官だったガーランド氏は、オクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件(1995)やユナボマー事件(1996)、アトランタ五輪爆破テロ(1996)と連続して起きた米国史上最悪の国内テロの捜査を指揮した経験がある。公聴会で、「1月6日の議事堂襲撃事件についてどう考えているか」という質問に対し、ガーランド判事は「もし私が司法長官に任命されたなら、最優先事項として捜査を命じます。捜査は、司法省とFBIにとってこれまでにない最も大規模な捜査になるでしょう。これはアメリカ民主主義の根幹を揺るがす重大犯罪です」と述べた。

 襲撃当日の朝、オース・キーパーズのメンバーがトランプ元大統領の側近中の側近を護衛している様子が映像に捉えられている。3月4日、トランプ元大統領に近い国務省の元職員が襲撃に参加したことで逮捕されている。複数の現役共和党議員、トランプ氏の長男が襲撃に加担した疑いを持たれている。ガーランド判事が承認され大規模捜査が始まったとすれば、捜査の手は早い段階でトランプ元大統領の周辺及び共和党内に伸びることは明らかだ。その時、今にも爆発しそうなほど興奮しているトランプ支持者やオース・キーパーズのような過激派らは、どのような行動に出るのだろうか。オース・キーパーズのメンバーには、いつ内戦が始まってもいいように飲料水、非常食、キャンプ用品、弾薬を買い込むように命令が出ているという。

 陰謀説を主軸とする反政府活動とトランプ支持者たち。そこに白人至上主義団体や今の社会に不満を持ったあらゆる米国人が便乗し、さらにトランプ元大統領が彼ら全員を巧みに操り利用する。これがこの先しばらく米国政府を悩ます最大の不安定材料である。

(石 紀美子)

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