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36歳になった綾瀬はるか 「ダイエット企画挑戦のグラドル」がなぜ国民的女優へ転身できたのか?

文春オンライン / 2021年3月24日 11時0分

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綾瀬はるか ©文藝春秋

 きょう3月24日は女優の綾瀬はるかの36歳の誕生日である。つい3日前には、主演ドラマ『天国と地獄~サイコな2人~』が最終回を迎えたばかりだ。また、先週金曜(3月19日)からは、2017年に主演したテレビドラマの劇場版である『奥様は、取り扱い注意』も公開されている。こちらは昨夏公開の予定がコロナ禍にともない延期となっていた。

『天国と地獄』では、高橋一生演じる殺人鬼と人格が入れ替わる刑事という役どころだった。一方、劇場版『奥様は、取り扱い注意』はドラマ版と同じく元特殊工作員の専業主婦役ながら、本作では記憶喪失になったという設定で、綾瀬によれば、ほとんど別人を演じている気分だったという(※1)。いずれも、1つの役で2つの人格を演じ分けなければならず、演技派として知られる彼女にもかなりハードルが高かっただろう。

綾瀬に多かった“突飛な役どころ”

 2つの主演作品はまた、物語の前提となる設定が現実離れしている点でも共通する。思えば、綾瀬には初期からこうした突飛な役どころが多い。映画『僕の彼女はサイボーグ』(2008年)ではタイトルどおり、未来からやって来たサイボーグを、同年公開の『ICHI』では盲目の女旅芸人をそれぞれ演じた。ジャンルもSF、アクション、時代劇と問わず、コメディからシリアスな作品まで幅広くこなし、赤塚不二夫のマンガの実写版である映画『ひみつのアッコちゃん』(2012年)のアッコちゃんまで演じている。《彼女は聞いた方が一瞬「え?」と思うようなヘンな企画や役柄で成功している》とは作家の小林信彦の評だ(※2)。

ホリプロの先輩・深田恭子との共通点と差異 

 突飛な役どころが多いという点では、綾瀬のホリプロの先輩である深田恭子とも重なる。ただ、深田がこうした役を演じると非現実性がより際立つのに対し、綾瀬の場合、どんなに現実離れした役を演じても、どこか日常と地続きというか普通っぽさを残している。

 綾瀬はまた、ときどきバラエティ番組に出演しては、持ち前の天然ボケで笑いを誘っている。これについては、本業での演技派ぶりとのギャップも感じるが、じつのところ、演じる彼女も、天然な彼女もまた地続きで、本質的に変わりはないのかもしれない。それが証拠に、綾瀬の演じる役には、一見きっちりしていても、どこか隙のある女性が少なくない。

随所に感じる「隙の多さ」は綾瀬の魅力のひとつ

 ドラマでいえば、『ホタルノヒカリ』(2007年・10年)で演じた面倒くさがりで恋愛も放棄してしまった「干物女」をはじめ、『義母と娘のブルース』(2018年)で演じたバリバリの元キャリアウーマンも、結婚後は慣れない家事や子育てに苦心する。『天国と地獄』の女性刑事にしても、任務をきちんと果たそうとするあまり、「風紀委員」とあだ名されるほどの正義感がかえってピンチを招いたりと、まさに隙だらけだった。そうした役がまわってくるのはやはり彼女の資質に合っているからだろう。観ているほうも、バラエティでのイメージもあいまって、いつしか彼女にそういうキャラを求めるように刷り込まれてしまったのではないか。

 綾瀬の天然ボケは、『紅白歌合戦』で過去3度(2013・15・19年)、紅組司会者を務めたことで国民的に知られるようになった。司会のたびにセリフを噛んでも、視聴者からは批判の声よりチャーミングだと肯定的な反応が上回る。もちろん、女優としての実績がなければこうはならないのだろうが、隙の多さすらも魅力に見えてしまう天性のキャラによって許されているところも多分にあるはずだ。その意味において彼女はもはや、高座で寝てしまっても客席から「寝かしておいてやれ」と声がかかったという古今亭志ん生や、あるいはホームランを打ちながらホームベースを踏み忘れてふいにしたといった話までもが伝説として伝えられる長嶋茂雄などと同じ域に達しているのかもしれない。

もともとは「ダイエット企画挑戦経験」もあるグラドル

 いまでは日本を代表する女優との呼び声も高い綾瀬だが、デビュー当初はアイドルとして売り出され、グラビアやバラエティを中心に芸能活動を始めた。ホリプロタレントスカウトキャラバンで審査員特別賞を受賞した翌年、2001年には『週刊文春』巻頭の名物グラビア「原色美女図鑑」に初登場する。この年にはドラマ『金田一少年の事件簿』で女優デビューしているが、「美女図鑑」登場は『B.C.ビューティー・コロシアム』というバラエティ番組の企画で1ヵ月で7キロのダイエットに成功した“ご褒美”としてで、肩書も「水着アイドル」となっていた(※3)。

 もともと芸能界にさほど憧れはなく、スカウトキャラバンも友達の付き添いで出場したら合格してしまったのだという。郷里の広島から上京しても早く帰りたかったというのが本音で、女優の仕事に対してもあまり意欲を持てなかったらしい(※4)。それがドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)に出演したあたりから、しだいに演技に開眼する。同作では白血病にかかった少女を演じ、治療中の場面では頭を本当に丸坊主にした。

2013年には大河ドラマの主演に抜擢

 広く世間に認知され、女優として地歩を固めたのは、2009年に『JIN―仁―』で武家の娘を演じた頃だろうか。当時、「原色美女図鑑」に登場した際、《時代物、もっとやりたいなって気分になってます。大河ドラマにも出てみたいなと思ったり(笑)。/他にもやってみたい役があるんです。キャリアウーマンの母親役とか》と語っていた(※5)。その念願がかない、NHKの大河ドラマでは2013年の『八重の桜』で主人公・山本(のち新島)八重の役に抜擢され、2019年の『いだてん~東京オリムピック噺~』にも主人公のひとり金栗四三の妻役で出演した。

 キャリアウーマンの母親役も、前出の『義母と娘のブルース』で実現した。さらに今月6日、東日本大震災から10年を前に放送された単発ドラマ『あなたのそばで明日が笑う』では、中学生の子供を持つ母親を演じている。劇中、彼女の演じる母親は、震災で夫が行方不明になってからというもの、一人息子には彼のことをほとんど語ってこなかったが、ある出会いをきっかけに徐々に口を開き始める姿が強く印象に残った。

「私には野心が足りない」の意味とは?

 毎回、新たな役に挑戦するたびに努力を惜しまない彼女だが、2018年刊のフォトブックのインタビューでは、意外にも、《私には野心が足りないんです。他の俳優さんがすばらしい作品に出ているのを見たら「うらやましいな」とは思うけど、ライバル意識を持つことはないし、人と較べることもしないし。30代だからこんな役がやりたいとか、40代になったらあんな役をやりたいとか、そういうのもないんです》と打ち明けていた。同書ではさらに、《私はこの仕事をもともと辞めようって思ってきて、『世界の中心で、愛をさけぶ』のときは本当にそう思ったし、『八重の桜』のときも、これでもう辞められるって思ったんです》とまで告白しており、驚かされる。それにもかかわらず、いままで続けてこられたのは、《関わってくれる人たちに喜んでほしいし期待に応えたい》、《観てくださる方々の心を揺さぶるような演技ができるようになりたい》との思いからであったという(以上、※6)。

女優業以外でも幅広い活躍を見せる綾瀬

 女優業の一方で、ここ10年あまり、TBSの『NEWS23』を中心に、戦争経験者に話を聞き、若い世代に伝える仕事も続けてきた。綾瀬の祖母の姉が広島の原爆で亡くなっていることも、この仕事を引き受けるきっかけだったという。

 2015年暮れに綾瀬と対談したイギリスの小説家カズオ・イシグロは、自身もまた母親が長崎で原爆に遭っていることもあり、彼女がそうした仕事をしていると知って「非常に価値のあること」と評価した。

綾瀬はるかが演じる「いやな女」が見てみたい!

 イシグロとの対談は、綾瀬が彼の原作によるドラマ『わたしを離さないで』(2016年)に主演するのを前に熱望して実現にいたった。そこでは同作を中心にさまざまなことが話題にのぼり、対話はしだいに熱を帯びたという。終わりがけには綾瀬から《今日、こうして二時間近くお話をさせていただいた感触から、私が今後、どういった役柄を演じたら面白いと思われますか?》との質問も飛び出した。その後ノーベル文学賞も受賞する世界的な作家に、こんなことが訊けるのも“天然”のなせるわざだろうか。これに対し、イシグロからは、《全く正反対のタイプに見える役をやるのも時には面白い効果が出ます。だから、はるかさんが悪女的なファム・ファタール(運命の女)を演じると、面白いのではないでしょうか》といった答えが返ってきた(以上、※7)。

「悪女的」といえば、『天国と地獄』で殺人鬼と人格が入れ替わった刑事役にはその片鱗がうかがえた。老若男女を問わず人気を集める綾瀬だが、今後はそれを逆手にとって、これ以上ないというほどいやな女を演じるのも見てみたいところではある。

※1 劇場版『奥様は、取り扱い注意』パンフレット
※2 『文藝春秋』2017年7月号
※3 『週刊文春』2001年12月20日号
※4 『週刊文春』2006年10月19日号
※5 『週刊文春』2009年10月15日号
※6 『Document 2015-2018 綾瀬はるかフォトブック』(KADOKAWA、2018年)
※7 『文藝春秋』2016年2月号
 

(近藤 正高)

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