1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 芸能総合

日本アカデミー賞がジャニーズへの忖度をやめた? 草彅剛「奇跡の受賞」が示す“巨大な変化”

文春オンライン / 2021年4月1日 17時0分

写真

映画「ミッドナイトスワン」生中継つき大ヒット記念舞台あいさつに出席した草彅剛 2020年11月29日、東京・六本木

 3月19日に東京・グランドプリンスホテル高輪で授賞式が行われた「第44回日本アカデミー賞」で、映画「ミッドナイトスワン」に主演した草彅剛(46)が最優秀主演男優賞を受賞した。

 壇上に立った草彅は「いや、あの、マジですか、って感じですね。いいんすか? どうしようかな、これ」と声を詰まらせた。そして「なんか、奇跡が起きるんだなと思って。諦めたりしないで一歩ずつ。たまには振り返ることも、人間誰しもあると思うんですけど、またそこから少しでも進むと、なんかいいことあるんだなと思って。本当にこの映画を愛していただいてありがとうございました」と感謝の言葉を口にした。

日本アカデミー賞は“ジャニーズのための賞”?

「ミッドナイトスワン」は最優秀作品賞も受賞し、日本アカデミー賞で堂々の2冠となった。昨年9月の公開以来、観客動員は52万人を超え、興行収入7億円超というスマッシュヒットになった同作品。映画館へ複数回足を運ぶ人も多く、“追いスワン”という流行り言葉も生んだ。

 それでも、日本アカデミー賞を取ると考えていた映画関係者はほとんどいなかった。日本アカデミー賞とジャニーズ事務所の密接な関係は、業界では周知の事実だからだ。

「草彅は言わずと知れた元SMAPメンバー。2017年9月に稲垣吾郎(47)、香取慎吾(44)と共にジャニーズ事務所を離れて独立し、SMAPを育てた元マネジャー・飯島三智氏の下で『新しい地図』として活動してきました。しかしジャニーズからの有形無形の圧力や、忖度によってテレビやスポーツ紙に登場する機会は大きく制限されていました。そして、日本アカデミー賞は、ジャニーズと関係が深い日本テレビが放映権を持っています。そんな賞で、ジャニーズを“裏切った”草彅が選ばれたわけなので、ザワつくのは無理もないです」(芸能事務所関係者)

 草彅は自分の立場がどれほど厳しいかをわかっていたからこそ、受賞を「奇跡」と言ったのだ。

 草彅が「ミッドナイトスワン」で演じたのは、男性として生まれながら女性として生きるトランスジェンダーの主人公。ニューハーフショークラブに勤めながら、育児放棄された遠縁の女児を引き取り、バレリーナとしての才能を応援しながら、「母になりたい」という感情を芽生えさせていく繊細な役柄を見事に演じきった。

「『ミッドナイトスワン』の内田英治監督は、ネットフリックスで大ヒットしたドラマ『全裸監督』の監督でもあります。草彅は地上波出演が激減していた2019年大みそかの『笑ってはいけない』(日本テレビ系)で、白ブリーフ一丁で全裸監督こと村西とおる監督のパロディーを演じたこともあり、実は縁があるんです(笑)」(同前)

 ジャニーズと日本アカデミー賞の関係は密接だ。最優秀主演男優賞でも、2015年に岡田准一(40)が「永遠の0」で、2016年に二宮和也(37)が「母と暮せば」で受賞。今回も二宮が「浅田家!」でノミネートされていたが、草彅がそれを破って受賞した。

ジャニーズの影響力が急激に低下

「他に主演男優賞にノミネートされていたのは小栗旬(38)、佐藤浩市(60)、菅田将暉(28)と、今の日本映画界のトップ俳優ばかり。日本アカデミー賞は約4000人と言われる映画関係者が投票するのですが、かつては各テレビ局が出資した映画が持ち回りで受賞すると言われたほど、いろいろな意向が働きます。その中で、テレビ局が絡んでいない『ミッドナイトスワン』と草彅が受賞したことは本当に価値が大きい。ジャニーズに対する忖度が弱まったことの証でもあります」(映画雑誌編集者)

 ジャニーズと日本アカデミー賞の関わりは、実はそれほど長い歴史があるわけではない。2007年には木村拓哉(48)が「武士の一分」で優秀主演男優賞にノミネートされながら、辞退したこともある。

「当時のジャニーズは、同じ所属事務所のタレント同士が賞をめぐって争うのは好ましくないということで、レコード大賞などの音楽賞も一切辞退していた。しかしそれならばノミネート段階で断ればいいのですが、ノミネートされてからの辞退ということで物議をかもしました。しかしその後ジャニーズは賞レースにも参加するようになり、2015年以降は毎年のように主演男優賞にはジャニーズタレントが入るようになったのです」(スポーツ紙芸能デスク)

二宮の受賞スピーチは「ジャニーさんとメリーさんとジュリーさん」

 SMAP解散騒動の渦中に行われた2016年の授賞式では、最優秀主演男優賞を獲得した二宮和也の受賞スピーチも話題になった。

「二宮の受賞スピーチは“ジャニーズ賛美一色”でしたね。前年に最優秀主演男優賞を獲得した岡田の話はともかく、『ジャニーさんとメリーさんとジュリーさんと、今までずっと迷惑をかけてきた人たちに、ちょっとは恩返しができたかと思うと、すごくありがたいです』と事務所の人の名前を出したのは異例でした。山田洋次監督(89)やW主演の吉永小百合(76)には触れずに、自分の事務所のトップへの感謝だけを示したわけですから。SMAPの解散が問題になる中で『誰に忠誠を誓うか』を公の場で示す必要があったのでしょうが、周囲はドン引きでしたよ」(映画関係者)

公取委の注意処分と、ジャニー氏の死

 しかし2020年には6年ぶりにジャニーズタレントが優秀主演男優賞にノミネートされず、今年は草彅が受賞と、ジャニーズとの蜜月は終わりつつある。両者の関係に亀裂が入るきっかけとなったのは、2019年7月に発覚したジャニーズ事務所に対する公正取引委員会の「注意処分」だったという。ジャニーズ事務所がテレビ局に対して、退所した3人のメンバー(草彅、香取、稲垣)を出演させないよう圧力をかけた場合、独占禁止法に触れるおそれがあるというものだった。

「公正取引委員会による『注意処分』によって、ジャニーズもおおっぴらにテレビ局に忖度を要求することは難しくなりました。しかも、創業者ジャニー喜多川氏が2019年7月に87歳で亡くなり、副社長としてジャニーさんを長年支えてきた姉のメリー喜多川氏(94)も会長、そして昨年9月には名誉会長へと現場から退きました。2人のカリスマが去ったことで、メディアへの影響力が一気に落ちたんです」(テレビ局関係者)

 誰からも愛されたジャニー氏と、強権発動をも厭わないメリー氏という最強のコンビから後を継いだのは、メリー氏の娘の藤島ジュリー景子社長(54)と滝沢秀明副社長(39)だった。18年9月で現役を引退した滝沢氏は、ジャニー氏の死後の19年9月に副社長に就任した。

「滝沢氏は、同世代のジャニーズJr.をトップとして束ねるなど、たしかにカリスマ性はあります。ただ、それも全てはジャニーさんの寵愛があってのこと。ジャニーさんが滝沢氏を自分の後継者と考えていたのは確かですが、滝沢氏個人に事務所をまとめる力量が備わるにはもう少し時間が必要でした。そういう意味では、経営者としての実績を積み上げる前にジャニーさんが亡くなってしまったことが、滝沢氏の不幸でした。バックにジャニーさんのいない滝沢副社長だけでは、先輩のジャニーズとの関係構築も難しく、後輩たちに対しても説得力が足りないのです」(女性誌編集者)

 事務所内の規律が緩んでいる影響は表からも見てとれる。草彅が日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した翌々日の「サンデーLIVE!」(テレビ朝日系)で、キャスターを務める東山紀之(54)が「(草彅)剛、よかった。乗ってるよね。彼らの歌みたいにオンリーワンになって来た」と、SMAPの「世界に一つだけの花」の歌詞を引用して笑顔で祝福している。「事務所を辞めた草彅を褒めるなど、メリー氏がにらみを利かせていた頃ならば考えられないことだった」(テレビ局関係者)と言われており、芸能界の転換を感じさせる“事件”だった。

草彅の受賞を扱わなかった新聞も

 さらに、ジャニーズの影響力が低下していることを示したのは、日本アカデミー賞だけではない。2月23日に発表されたブルーリボン賞でも、草彅は「ミッドナイトスワン」で主演男優賞を獲得しているのだ。

 ブルーリボン賞は在京スポーツ新聞7社の映画担当記者で構成される「東京映画記者会」が主催している。つまり、普段はジャニーズに忖度しまくりのスポーツ紙もジャニーズに反旗を翻したことになる。

「ひとくくりにスポーツ紙と言っても、ジャニーズに対する距離感は大きく違います。大手はジャニーズから受ける恩恵が大きいので忠実ですが、小さいスポーツ紙はほとんどジャニーズに便宜を図ってもらえないので、それほど忠誠心もありません。なので、授賞式翌日の紙面には新聞社ごとのスタンスが如実に表れていました。ジャニーズが連載しているスポーツ紙は、草彅の受賞などなかったように主演女優賞の長澤まさみ(33)を大きく取り上げていましたよ(笑)。日本アカデミー賞の時も紙面では草彅の写真を使わず受賞者の欄に名前を書いただけのところもあります」(スポーツ紙芸能デスク)

 そもそも現在のジャニーズの威光は、平成最大のアイドルグループ・SMAPによって築き上げられた部分が大きい。ジャニーズ事務所の顔色を窺うスポーツ紙記者の中にも、SMAPの育ての親である飯島氏に世話になった人が数多くいるのだ。

「2016年にSMAPが解散して『新しい地図』の3人が離脱して以降、ジャニーズ事務所はスターの退所やグループ解散が続いています。錦戸亮(36)、中居正広(48)、手越祐也(33)、山下智久(35)ら全国区の知名度を持っていたタレントが次々と抜け、嵐の大野智(40)も活動休止、3月いっぱいでTOKIOの長瀬智也(42)、11月にはV6が解散して森田剛(42)も退所が決まっています。タッキー副社長の指揮下でKing&PrinceやSnow Man、SixTONESは頑張っていますが、SMAPや嵐のような国民的スターには遠く及ばない。今のジャニーズに、テレビ局がどうしても欲しいタレントはほとんど残っていないんです」(ワイドショー関係者)

“普通の事務所”になりつつあるジャニーズ

 一方、ジャニーズの呪縛から解き放たれた草彅は、NHK大河ドラマ「青天を衝け」で徳川慶喜役を演じて、改めて存在感と演技力を示している。

「草彅の連続ドラマへの出演は、2017年の『銭の戦争』(フジテレビ系)以来、4年ぶりです。それだけジャニーズの力が強かったわけですが、これからは急速に“普通の事務所”になっていくでしょう。とはいえ固定ファンは健在ですし、昨年11月の『嵐フェス2020』で、配信でもファンがお金を払ってくれることが証明されて経営的には盤石です。わざわざ競合相手を潰さなくても稼ぐ力はあるので、これからは自社のタレントの魅力を磨くことに集中して欲しいですね」(スポーツ紙芸能デスク)

 ジャニーズのメディア支配が終わり、新時代の芸能界のパワーバランスを示した草彅の日本アカデミー賞受賞。俳優たちがフェアに評価される時代が来るとすれば、それは誰にとってもいいことなはずだ。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング