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「『欠陥人間』と否定されるような気持ち」「傷つかないで済む」 “結婚相手”を“親”に任せる女性の本音とは

文春オンライン / 2021年4月7日 11時0分

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©iStock.com

 一人ひとりの人生に正解なんてない。誰もがその人なりの幸せを追い求めればいい。スタイルも価値観も十人十色。そうした多様な価値観の尊重が進む一方で、「男は結婚してこそ一人前」「子育ては母親の役割」といった古い価値観もまだまだ蔓延っている。親世代との結婚観のズレで軋轢を感じたことがあるという人は決して少なくないだろう。

 ここでは、共同通信社に所属する筋野茜氏、尾原佐和子氏、井上詞子氏ら3名の女性記者が現代人のリアルな結婚観に迫った『 ルポ 婚難の時代 悩む親、母になりたい娘、夢見るシニア 』(光文社)を引用。親が子どもの代わりに結婚相手を見つける「代理婚活」の世界を紹介する。(全2回の1回目/ 後編 を読む)

◆◆◆

共依存の母子

 親が代理婚活をしている30代後半の女性の話だ。実は、私は彼女と十年来の知り合いである。なんでもそつなくこなすキャリアウーマンで、派手さはないが、気さくな面もあって、決してモテないタイプではない。インタビュー取材を通じて、長い間、両親、特に母親との関係に悩んでいることを知った。過去の出来事を語るときは涙を流していた。

「親が断られるなら、私は傷つかないで済む」

 母親が代理婚活をしているという都内在住の美帆さん(39歳・仮名)は、率直な気持ちを吐露した。

 父親は大手銀行に勤め、母親は専業主婦。一人っ子で、小学校から高校まで私立の「お嬢様学校」に通い、有名私立大学を卒業後、総合職で大手食品会社に入った。

「もともと真面目で引っ込み思案な性格だから、親の期待に応えることを優先して生きてきたの」

 と振り返る。母親は地方議員の長女。就職のために上京し、父とのお見合い結婚を機に専業主婦になった。「頑張れば幸せになれる」と「あなたの人生のためよ」が母親の口癖だったという。美帆さんは母親が進学や就職に口出しするのは当たり前だと思っていた。大学は母親の憧れだった慶應義塾大学を第一志望にして、見事合格。日本を代表するIT企業から内定をもらったときも、母の「もっと安定した会社がいいわ」という助言で断りを入れた。思い返せば、人生の大きな決断はいつも母の顔色をうかがっていた。

 食品会社での業務成績は同期の中でもトップクラスだった。その分、残業や休日出勤は当たり前、プライベートを犠牲にして働いていた。20代の頃に交際した男性とは、すれ違いが原因で自然消滅した。33歳のとき、突然、両親が「この年になって独身で親と同居なんてみっともない。仕事ばかりしていないで早く結婚しなさい」と言い出した。仕事を評価してくれていた両親の思いがけない言葉に動揺した美帆さんは、すぐに約30万円を支払って結婚相談所に登録した。

 しかし、恋愛経験が少ないせいか、お見合いでの会話は盛り上がらない。両親に反対されないために家庭環境を確認しようと、初対面で「親御さんはどちらの会社にお勤めでしたか」と尋ねたら、露骨に嫌な顔をされた。

「勉強は頑張れば正解が分かるけど、婚活には答えがない。やればやるほど『お前は欠陥人間だ』と否定されたような気持ちになった」

 3年間、土日のどちらかを婚活にあてるというノルマを自分に課したが、成果は挙がらず、心身ともに疲弊していった。ある日、十円玉の大きさの円形脱毛症を見つけたとき「もうやめよう」と踏ん切りがついた。

親心ではなく自己保身で代理婚活に励む母を見て

 美帆さんと入れ替わるように、母親が熱心に代理婚活の交流会に参加するようになった。しかし、母が気に入るのは、「最終学歴が早慶以上」「年収1000万円」「医者」「総合商社勤務」など、あからさまにスペックが高い男性ばかり。婚活を3年間続けてきた美帆さんには「高望みしすぎて絶対に自分とはマッチングしない」と分かるが、後ろめたさから口出しはしないでいる。実際、これまで何度も断りの連絡がきているようだった。

 美帆さんは「みっともない」という言葉を浴びてから、母親の行動が親心ではなく自己保身なのではと疑うようになった。美帆さんに対しては結婚しないことをなじる母親が、法事の席で親戚に「相手はいるんだけど、キャリアを大切にしたいから、理解できる人かを見定めているんですって」と嘘の説明をしているのを聞き、やはりと確信した。ただ、老いを見せ始めた両親を落胆させたくない、という気持ちとも葛藤している。

 好きに生きていいよ、と言ってくれたら楽になれるのに──。

 そう言って、美帆さんは声を震わせた。

幸せになるのを妨害する親

 実は、私の周囲には、美帆さんのように母親との関係に悩む女性が複数いる。高学歴のキャリアウーマンに多いのが特徴だ。

 国家公務員の40代半ばの麻耶さん(仮名)は、一人っ子で母親と二人で買い物や海外旅行によく出かけるほど仲良しだ。

 恋愛についても、全て母に相談してきた。約10年前、友人の紹介で知り合った交際相手からプロポーズされたものの、断った。交際中に両親に会わせた後、相手の職業や学歴を聞いた母が「凡人すぎる」「容姿がいまいち」と批判したからだ。

 数年前、麻耶さんは母が喜ぶ国家公務員と結婚。幸せに暮らしているのかと思いきや、母がたびたび新婚宅に泊まったり、夫の実家に一緒に帰省するのを嫌がったりするようになった。夫からは「子離れできていない」と批判されて仲が少しずつ悪くなり、子どももいない。「幸せになるのを妨害されているのは分かっている。でも、母を悪者にすることはできないから」

 とうつむくばかりだ。

 いずれのケースも、母は娘の人生を自分の思い通りにしようとし、娘は親を失望させることに強い罪悪感と恐怖心を抱いている。両者はお互いに切っても切れない「共依存」の関係のようにも見えた。美帆さんが、母親の見つけた相手と結婚したら、家族計画や親の介護など、過干渉でまた苦しめられるのではないかと心配してしまう。なんとか時間をかけても苦しみから解放されてほしいと願っている。

 このように「代理婚活」といっても、親心は十人十色だった。個人的には、結婚という大事な選択を親に任せてしまってよいのだろうかという疑問はぬぐえない。私が書いた代理婚活の記事はツイッターなどで瞬く間に拡散された。ツイッターのコメントは「世も末だ」「子どもは親の所有物ではない」「自分の介護担当を探しているだけでは」などと批判の声が多かった。若い世代のこうした反応は予想通りだった。そして代理婚活と名前を変えただけで、中身は昔のお見合いのシステムと同じだという指摘も寄せられた。

 子心も十人十色であり、他人が全否定することはできない。実際に代理婚活で母親が見つけてきた相手と結婚した女性は、「親の反対がない安心感もあって、話が早く進んだ」「仲のいい家族を作るという夢を母のおかげでかなえられた」と話してもいた。

 親も子どもも納得しているなら、お見合いと同様に効率的でいい選択なのかもしれない。

炎上する昭和の価値観

「婚難の中で」を連載したのは平成も終わろうとするときだった。

 しかし、30年以上昔の昭和の古い価値観は、今も若者たちを苦しめ続けている。親たちも自分たちが経験した価値観に縛られていると感じた。それは政治の世界も同じ。結婚や出産を巡り、政治家の問題発言は何度も繰り返されてきた。

 連載中、最も鮮明に覚えているのが2018年6月の自民党の二階俊博幹事長の、

「この頃、子どもを産まない方が幸せじゃないかと勝手なことを考える人がいる」

「皆が幸せになるためには子どもをたくさん産んで、国も栄えていく」

 という発言だ。この発言を知ったときは、戦時中の発言かと耳を疑った。子どもを産まない(産めない)人にはさまざまな事情がある。そもそも結婚も出産も個人の自由であるし、収入や年齢などの理由で出産したくてもできない人もいる。そうした人たちの声に耳を傾けるのが政治家の役割ではないか。

 これが与党三役の発言かと思うと、頭がくらくらした。

 令和に入ってからも同じような発言が続いた。2019年5月には、「失言のデパート」と呼ばれた自民党の桜田義孝五輪相(当時)が、千葉市で開かれたパーティーで少子化問題に言及し、

「お子さんやお孫さんにぜひ、子どもを最低3人くらい産むようにお願いしてもらいたい」

 と来場者に呼びかけて批判を浴びた。その会合では「最近は結婚しなくていいという女性がみるみる増えちゃった」とも語った。いかに「結婚しない=絶対悪」という考え方が通底しているのかよく分かる。政治家というよりも、まるでひさしぶりに法事や結婚式で会う、心ない親戚のおじさんのようだ。

 過去には2003年に当時の森喜朗首相が、「子どもを一人も作らない女性が好き勝手、自由を謳歌して、年を取って、税金で面倒をみなさいというのは、本当はおかしい」と発言。2007年には、柳沢伯夫厚生労働相(当時)が「女性は産む機械」と発言し、大問題に発展した。

「結婚しない=絶対悪」を捨てない限り、少子化に歯止めはかからない

 男性だけではない。2017年には山東昭子参院議員が「4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰することを検討してはどうか」と述べた。そもそも、子どもを国家のために産むという発想そのものが時代錯誤も甚しいものだ。

 これらの問題発言を口にした政治家の多くが、60~70代、つまり代理婚活に熱心な30~40代の親世代。「女性は結婚して子どもを産むのが当たり前」という価値観の中にどっぷり生きてきた人が多い。時代の流れを理解しようとせず、結婚しない人生を簡単に否定する。

 当人としては失言というより、本音に近いのかもしれない。古い価値観を持つ人たちは少子化の責任を女性だけに押しつけようとする。そして、たくさんの女性たちがプレッシャーに押しつぶされそうになっている。それこそ本物の地獄絵図ではないだろうか。

 政治の世界の認識が変わらない限り、少子化に歯止めはかからないだろう。取材をしていると、政党や性別を問わず、若手議員を中心に、少子化問題に関心が高かったり、性的少数者を含め多様性のある社会への理解が深かったりする人に出会うこともある。若い世代の有権者が投票に行き、どういう考えの議員なのかをしっかりと見極めることが、政治を変えていく一歩となるだろう。

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オンライン告白、バーチャル同棲、会った当日プロポーズ!?  コロナで変わった「婚活」現場のリアル へ続く

(筋野 茜)

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