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「闇カジノを摘発しても、ケツ持ちの暴力団までは…」警察を悩ませるヤクザの巧妙な“博打ビジネス”

文春オンライン / 2021年4月4日 17時0分

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闇カジノでは一晩で1億円のカネが動くこともあるという(※写真はイメージ) ©️iStock.com

「闇カジノの“みかじめ料”は最低1000万円」ヤクザはどうやってギャンブルで儲けているのか? から続く

 一晩で億単位のカネが動くこともあるとされる「闇カジノ」。定期的に警察の摘発がなされており、今年に入ってからも東京・渋谷の高級住宅街のマンションや名古屋の繁華街で相次いで店長らが逮捕された。多くは暴力団の資金源になっているとみられる。近年では闇カジノに人気スポーツ選手がカネをつぎ込んでいたことが発覚し、大きな社会問題となったこともあった。

 この「闇カジノ」とヤクザには、どのような関係があるのか。

一晩で1億円のカネが動く闇カジノ

 闇カジノ事情に詳しい指定暴力団幹部が実態について説明する。

「カジノは夕方から夜にかけて店を開けて、明け方まで客に遊んでもらう。客はだいたい身なりのよい金持ち。一晩に数千万円から1億円のカネが動くこともある。警察の摘発を逃れるために定期的に店舗を移す。そのたびに費用が必要になるが、それでも十分にカネになる」

 暴力団犯罪の捜査を続けてきた警察当局の幹部は、「闇カジノを摘発しても店長止まりとなることが多い」と打ち明ける。

「闇カジノの営業中に踏み込んで、その場で店長や店員、客を逮捕することはよくある。闇カジノの売上げから、ケツ持ち(後見役)のヤクザにカネが渡っているはずだが、逮捕にいたるのは店長止まり。バックにいるヤクザやオーナーにたどり着けるケースはあまりない。本来なら、さらに突き上げ捜査を進めねばならないのだが……」

 警察による摘発が繰り返されても、次々と新規オープンする闇カジノ。前出の指定暴力団幹部は、「客が絶えないのは、勝った時の高揚感が忘れられないのだろう。しかし、負ける時もある。負ければ、取り返したい。それでまたつぎ込む。その繰り返しだ」と解説する。

有名なスポーツ選手も賭博に…

 勝った時の高揚感が忘れられずに通い続けてしまったのか、2016年4月に闇カジノをめぐり衝撃的な事実が発覚した。

 現在、バドミントン男子シングルス世界ランキング1位の桃田賢斗が都内の闇カジノ店で賭博を行っていたことを記者会見で明らかにした。現在、東京五輪でメダル獲得が期待されている桃田だが、当時はリオデジャネイロ五輪の出場前のことで、賭博発覚で無期限の出場停止、リオ五輪への出場の道も絶たれることとなった。

 会見で桃田は、バドミントンの先輩選手に誘われて2014年10月から、6回ほど店へ行ったことを明かした。「リオ五輪がほぼ確定している中で、みんなの期待を裏切ってしまい申し訳ない気持ち」と謝罪した。

「1回10万円くらい持って行き、トータル50万円負けた。いけないこととは分かっていたが、好奇心もあり、楽しんでいる自分もいた」と率直に打ち明けた。桃田を誘った先輩選手は60回にわたり店に行き、トータルで1000万円負けたという。

 有名なスポーツ選手の賭博問題はこれ以前にも発覚しており、多くの非難の対象となっていた。

 2010年5月、大相撲の人気力士らによる野球賭博が発覚。警視庁が強制捜査に乗り出すと、相撲で八百長が行われたことも判明。多くの逮捕者が出た。さらに2015年には、プロ野球巨人の選手らが野球賭博に関与していたことが発覚。選手らは球界から一時追放となったほか、球団にも処分が下った。

 大相撲、プロ野球と人気スポーツ選手らによる賭博が問題になったにもかかわらず、闇カジノに通っていたことで桃田への風当たりは強かった。ただ、その後は出場停止処分が解除されており、最近のインタビューでは東京五輪に前向きな発言をしている。

警察手帳を偽造して闇カジノを狙う犯罪グループ

 賭博は違法であることを知りつつも多くの人たちを引き付けるだけでなく、多額のカネをも吸い寄せる。巨額の利益が上がるが、違法な手段で得たカネであるため、そもそも公にはできない。

 だからこそ、その「闇のカネ」を狙う犯罪グループのターゲットとなるケースがあった。

 前出の警察当局の幹部が、大々的に強制捜査に乗り出した事件について語る。

「かつて、犯行グループが『警察の強制捜査だ』と言って、闇カジノの男性経営者の自宅を襲い、数千万円のカネを強奪したことがあった。経営者からすると、違法なカネだったうえ、警察を名乗る相手ではどうしようもなく、言われるがままカネを差し出したようだ」

 犯行グループは「POLICE」などと印刷された偽物の警察官の制服に身を包んで男性経営者宅を訪れて、偽造した警察手帳と捜索差押令状を示して、「賭博開帳図利容疑で家宅捜索する」と男性宅に押し入った。そして、室内を物色して多額の現金を発見すると、「このカネを証拠として押収する」と言い放って持ち去ったという。

「表に出せないお金」という弱み

 数カ月すると、犯行グループが再び男性経営者宅に押しかけて、偽造した逮捕状を示して、「賭博開帳図利容疑で逮捕する」と男性に手錠をかけて用意した車に押し込んで拉致。数時間にわたり車で連れまわす一方で、こっそりと男性の親族に身代金を要求。親族を通じて支払われた数千万円を奪うと、男性は解放されたという。

 男性も当初は警察による捜査だと思い込んでいたとはいえ、半信半疑だった時もあるという。しかし、奪われたのは違法な闇カジノで稼いだカネ。表には出せないという弱みがあった。

 男性は、この段階で地元の警察署に被害に遭ったことについて相談し、強盗や身代金目的の誘拐事件だったことが発覚。「本物の警察」の捜査が始まったということだった。

“後ろめたいカネ”だから狙われた

 警察当局は犯行グループの男女5人を割り出し、全員を逮捕した。前出の警察幹部がその後の経緯について振り返る。

「犯行グループが着ていた偽の警察官の制服や持っていた警察手帳、手錠などはインターネットで購入したイミテーションだったことが後に判明した。捜索令状や逮捕状はパソコンで作成したものだった。

 警察が作成する令状はかつて縦書きだったが、当時は横書きだった。しかし、犯行グループが持っていた虚偽の令状は縦書きだった。『警察が作る書面は縦書き』と誰かが入れ知恵したのだろう」

 犯行グループは、この被害者と同様に別の闇カジノ経営者の自宅に押し入る事件も引き起こしていた。

「多額の現金を銀行口座に入金すると足がつき税務署の目に留まるため、自宅で保管していた。だからこそ狙われた。いずれのケースも、当初は警察に被害の申告はなかった。闇カジノの収益だから後ろめたいのだろう」

警察に捕まっていなければ…

 犯行グループが強奪した総額は約1億7000万円に上った。奪ったカネは高級クラブやフィリピンパブでの遊興や、海外旅行などで大半は使い果たしていた。

 犯行グループはワルの上前をうまくはねた格好だが、警察幹部が指摘するように闇カジノの多くには暴力団がバックについている。事の顛末がこちらに発覚したらどのような制裁が待っているか分からない。警察に逮捕されたことで救われたと言えるかもしれない。
(文中敬称略)

(尾島 正洋/Webオリジナル(特集班))

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