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『パンツの穴』でデビュー、17歳で武道館を満員に…菊池桃子が“お嬢様アイドル”を脱ぎ捨てた日

文春オンライン / 2021年4月25日 17時0分

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菊池桃子さん ©時事通信社

 コロナでウンザリするような空気が続くが、季節はいつも通り巡り、すっかり春。花が咲き、風が暖かく感じると、聴きたくなる声や音楽がある。

 菊池桃子がまさにその一人だ。

 最近では自身のYouTubeラジオ「今日もお疲れさまです」で、Adoの大ヒット曲「うっせぇわ」のカバーを歌い、「全然うるさくない」と話題になっている桃子。なるほど、全然うるさくない。「うっせぇわ」という言葉さえやさしい。怒り突き放す言葉がここまで似合わない人も珍しいと思った。

 この動画の聞きどころは「うっせえわ」のカバーでなく、菊池桃子の語り。「うっせえわ」の曲紹介も「とっても素敵な曲で、とっても迫力のある曲で……」と、ひたすらかわいい。そこから彼女の声と合わない「うっせえわ」を聴いた反動もあり、猛烈に「青春のいじわる」から全盛期のヒット曲を聴きたくなった。そんな人は多かろう。

 桃子のウィスパーボイスは神様からの贈り物。怒りより、やさしさと四季と宇宙が似合う。

桃子の声が最高にクール!

 さて、そんな菊池桃子ソングで今ものすごく遅れてきたマイブームなのが1988年、彼女を中心に結成したロックバンド、ラ・ムーの曲である。

 当時、デビュー曲「愛は心の仕事です」を初めて歌番組で聴いたときは戸惑った。声量があるとはいえない彼女が、ダンスをしながらロックを歌うというギャップ。そして桃子より100倍歌が上手そうなバックコーラスを従えていたこともやはり戸惑った。今、新垣結衣がロックデビューしたくらいのサプライズと例えれば、当時の衝撃がわかっていただけるだろうか。

 しかしこれ、約30年の時を超えて今聴くとものすごくいいのである。

「愛は心の仕事です」以外にも「少年は天使を殺す」「Rainy Night Lady」などすこぶる名曲揃いで、桃子の声が最高にクール! 特にCD音源は加工もスタイリッシュで、近未来的なメロディーと、とても相性のいい歌唱と気づかされる。彼女のアイドル歌手時代を知らない人のほうが先入観がないので、曲を楽しめるかもしれない。

 動画のコメントでも、再評価する内容がとても多い。サブスクで解禁されたら、回り回ってブームが来そうな気もする。

歌ってみて初めてわかる凄さ

 このように、単純に「ヘタ」と思い込んでいたアイドルの評価が、時を経てガラリと変わる、そんなことがよくある。

 特にカラオケで歌ってみると、そのアイドルが意外に難しい歌を歌っていた、もしくは実は凄い表現力と声だったと知ることが多い。菊池桃子と田原俊彦は、まさにその最たる例。

 実際、私は「哀愁でいと」を歌ってひっくり返った覚えがある。歌い始めから低めのメロディーが続き「こんなテンション低い歌だっけ?」と首をかしげつつ唸るように歌った。やっと「ないほうがましさ~♪」で盛り上がってきてヨシヨシと思ったら、サビで「バイバイ哀愁でいっ」と、「でいと」の「と」を発音するのも許されないくらい低くなってゲッ。結局、お経のようになり、途中でやめた。

 マジか……。これを激しく踊りながら、スウィートに歌えていたトシちゃんって、凄い歌手なのでは。そう思い直したのである。そして改めて彼の他のシングル曲も聴き、彼の甘い声の威力にやっと気づいたというわけである。

桃子の歌声がエモーショナルな理由

 菊池桃子も同じコースをたどった。「卒業―GRADUATION」にカラオケで挑戦した時、低くゆったりしたメロディーを持て余し、退屈極まりない「卒業」になってしまった。

 が、桃子が歌えば春の風が吹く。彼女の曲すべてがあんなにエモーショナルなのは表現力があってこそ、声量の少なさ、音域の狭さをカバーして余りある、声の美しさと「曲を演じる」表情。その先に季節と風景が見えるのである。

 最近では音程を全く外さず数オクターブをケロリと出す歌手もいる。なかには、跳んだり回ったりダンスをしながら、その超絶技巧を発揮するツワモノもいる。そんな時代だから、一人ステージでふんわりとたたずみ、「ムードと可愛さ」で成立させるソロのアイドル歌手は、絶滅危惧種といえるかもしれない。

 だからこそ私は猛烈にそれが懐かしくなり、菊池桃子が聴きたくなる。

17歳で打ち立てた“武道館伝説”

 私はこの「カラオケで田原俊彦と菊池桃子を歌い惨敗案件」で、そもそも「ヘタ」の定義はなんなのか、とまで考えるようになった。

 アイドル歌謡の上手い下手のボーダーラインは、与えられた世界観の主人公になり切れるかどうかではないか。

 表現力の巧みさと声質の良さでいえば、田原俊彦も菊池桃子も、ヘタどころか超一流である。

 菊池桃子は1985年、当時、最年少(17歳)で日本武道館でのコンサートを敢行。そしてビートルズの公演の観客動員数を抜き(2万2000人超!)、入場できなかった観客も1万人超いたという。グループアイドルではなく、たった1人。派手なダンスもない、あの明らかにTV向けな囁き歌唱で、桃子は武道館を埋めた。

 この菊池桃子武道館伝説は、『可愛いのプロ』は世界を救うパワーを持っていると証明した事件だと思う。

浜辺美波が歌手活動をした感じ……?

 このように全盛期の桃子人気はすごかったのだが、今でいうと誰のような存在だったか、例えたい。そのほうが分かりやすいと思うのだが、これが全く思いつかない。

 驚くほどかわいい顔にかわいい声。そして「桃子」という素晴らしくスイートな本名。この3つがミラクルに揃った菊池桃子。アイドルとして生きる宿命を授かった人としか思えない。現役芸能人でいえば、顔も声も名前もかわいい浜辺美波が歌手活動をした感じかな? そう無理やり答えを絞り出したが、異論もちろん受け付けます……。

青春エッチコメディー映画『パンツの穴』でデビュー

 話を戻そう。桃子のデビューは、意外にも青春エッチコメディー映画『パンツの穴』である。公開は1984年で、当時はシブがき隊や角川3人娘など、アイドル映画花盛りの頃。私も劇場に観に行ったが、主演の山本陽一と菊池桃子がなんとも爽やかで、下ネタの多さも「青春」として成り立たせていて、妙に感心したのを覚えている。

 しかしなにより私が強烈に覚えているのが、1988年の日本テレビ開局35周年記念番組ドラマスペシャル『スクールガール・セレナーデ 桂華學女小夜曲』。これで菊池桃子は大正時代反体制運動にのめりこむ女子大生を演じた。最後に特高に殴られた体を引きずり、首を吊るシーンがあり、その静かな迫力に度肝を抜かれた。

 このドラマでお嬢さまアイドルというイメージをドロップキックで壊され、「女優・菊池桃子の本気」を感じたのを覚えている。

 そんな彼女も今年でデビュー38年。キャリアを順調に積み、若い世代なら、2020年のNHK朝のテレビ小説「エール」で、主人公・古山裕一の母親役で印象に残っている方も多いだろう。

 ガチガチの優等生に見えて、柳のように柔軟。菊池桃子はしなやかに、いろんなことに挑戦し、新陳代謝を繰り返している。

 そして「カワイイは正義」を体現し続けている。

(田中 稲)

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