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葬儀の規模を決めるのは「年賀状の枚数」!? 知らないと損をする“お葬式”のリアル

文春オンライン / 2021年4月27日 6時0分

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『終のひと』第1巻 ©双葉社

 伊丹十三監督の『お葬式』、滝田洋二郎監督の『おくりびと』、“葬儀”を題材にした映画といえばこの2本は外せないだろう。「漫画では?」と問われると思い浮かぶ作品はあまりない。そんな葬儀を題材にした意欲作が『終のひと』(双葉社/アクションコミックス)だ。

 突然だった母親の死に戸惑う梵 孝太郎(そよぎ こうたろう)の前に現れたのは弔いのプロフェッショナル・嗣江 宗助(しえ そうすけ)。お金、親族、参列者、エンディングノート…何から手をつけていいかわからない梵を「葬儀社」の嗣江が導いていく。そこには命の終わりにしか見ることが出来ない物語があった。“葬儀”のヒューマンドラマを描いた本作。その裏側を作者・清水 俊さんに聞いた。

【漫画】『終のひと』第1話を読む

作品のきっかけは『コウノドリ』

――葬儀社を漫画の題材に選んだのはなぜでしょうか。

清水 「ダークなお仕事モノ」という依頼があり、一般的な葬儀社ではなく闇社会の人々の葬儀を題材にしたアウトロー路線の漫画を描こうと。その作品を進め始めたら普通の葬儀社を題材にした漫画にしようという話に変わっていきました(笑)。そこからしっかり取材をし始めました。

 自分は元々、スポーツや格闘漫画を描くのや読むのが好きだったのですが、鈴ノ木ユウ先生の『コウノドリ』のアシスタントを経験したのが一つの転機になりました。第1話を読んで感動してアシスタントに応募したのですが、『コウノドリ』が命が生まれるドラマなら、自分は人が亡くなったあとの「死から始まる物語」を描いてみたいと思ったんです。

 葬儀社を題材にした作品は少ないので、自分なりの形でドラマを描ければと考えています。また「葬儀社」で働く姿が格好良い男を、自分なら描けるな、と。

葬儀の仕事には「正解」がなかった

――取材を通して印象に残っていることはありますか。

清水 葬儀業界には大手と呼ばれる葬儀社、家族経営の少人数の会社、ネット系葬儀社と呼ばれる会社があります。私は大手葬儀社に勤めている方と、地域に根付いた家族経営の葬儀社さんを中心に取材をしました。それぞれの立場で仕事への考え方の違いもあり面白かったのでネタにしています。

 取材した皆さんが共通して仰っていて印象に残っているのは「葬儀の仕事に正解はない」ということでしょうか。

 例えば「良いお葬式」というのはなんでしょうか。一人一人感じ方は違いますし、死生観も人それぞれ違います。葬儀社の顧客は直接的には喪主さんになりますが「誰の為の葬儀」なのかと言えば、故人のものであるし、喪主のものでもあるし、他の遺族、参列者の方の為など、なかなか一概に言えるものではないと思います。

 形式に関しても、通夜・告別式という流れが一般的である印象ですが、親族中心で行う「家族葬」、また通夜も告別式も省略し、火葬のみを行う「直葬」などもあります。宗派や地域によっても様々な風習があり、それぞれフォーマットはありますが、故人の生前の状況、喪主を中心に遺族の事情も葬儀には関わってきます。なので正しい葬儀の形はない、と取材を通して思いました。

 命や死を描く漫画として「医療モノ」というジャンルは作品も数多くあると思います。「医療モノ」では命を救うことが正解、一つのお話の結末になります。しかし葬儀の仕事に関しては「この弔い方」という正解がないので、漫画を描く上で難しいところであり面白いところでもあります。

葬儀は他人事ではない

――いざ喪主をやらねばならない状況を想像すると、本当にどうしたらよいか迷いますよね。

清水 葬儀がテーマの漫画を描いていながら、自分でも絶対に混乱すると思います(笑)。実家の宗派やお墓事情など把握できていませんから。また親族や故人の友人への連絡なども戸惑うと思います。漫画では最初に「エンディングノート」を登場させているので、連絡まわりはスムーズなのですが。

 取材の際に伺ったのですが、葬儀の規模を決める上での基準として「年賀状の枚数」というのが一つの参考になるとのことです。年賀状のやり取りをしている間柄というのは、亡くなった際に連絡を取ってもまず差し支えないだろうと。最近は年賀状のやり取りも減ってきているので、今後はわからないところですが。

準備の時間がない冠婚葬祭

――葬儀は亡くなってから、すぐに行う印象も強いです。

清水 正確にはいつまでに行う必要があるという取り決めはないのですが、通常亡くなってから1週間ほどで行われる事が多いと聞きます。

「冠婚葬祭」と括られる中で、唯一時間をかけて準備できないのが葬儀です。死は誰にもいつか訪れる事ですが、その亡くなった後のことを準備できている人は少ない。そしてこれから喪主を務める可能性が高い我々も、親の葬儀の準備や覚悟ができているかというと、不謹慎の怖れもあってか現実的に想定している人は少ないでしょう。

――コロナ禍でまた葬儀の形も変わってきているようです。

清水 葬儀の小規模化や家族葬、あとはやはり接触の機会や時間を減らす「一日葬」の需要が増えているようです。「リモート葬」というのも注目されています。

 最初のエピソードで描いた葬儀は「直葬」です。通夜や告別式という宗教儀式を行わずに火葬をする形式です。少ない参列者で、また金銭的負担も最小限になる形式ですが実際に直葬を行う際には注意することが多いです。一般的に行われる儀式がないため親族の合意がなければトラブルの元になりますし、家によっては菩提寺との関係性も考慮する必要がある場合もあります。

 コロナ禍で葬儀の形に様々な制限がありますが、どう弔うのかを考えた上での選択がこの作品のテーマです。皆さんが今後の葬儀について考えるきっかけになってくれれば作家冥利につきます。

【漫画】『終のひと』第1話を読む

◆◆◆

『終のひと』第1巻は、本日4月27日(火)発売されます。

“ウチは大丈夫”と思っていても何故かモメる“お葬式”「トラブルの大半は金がらみです」 へ続く

(清水 俊)

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