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「触んなよ! オラァ!」フジテレビ主催展覧会で転売ヤーが“超3密暴動”に警察出動

文春オンライン / 2021年5月14日 20時0分

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4月16日、警察が出動する騒ぎに発展した転売ヤートラブルの様子 ©文藝春秋

「ダンボールちょうだい! ダンボール!」

「触んなよ! オラァ!」

「なんで俺の肩に手当ててんだよ!」

 4月16日朝10時過ぎ、渋谷の複合文化施設「Bunkamura」では客の怒号が飛び交っていた。エントランス前には数百人を超える人だかりができ、内部は人が押し寄せて、歩くスペースもないほどの“超3密”状態。警察も出動するほどの騒ぎとなった。

 折しも東京都は4月12日に適用された「まん延防止等重点措置」の最中でのことだった。感染拡大の歯止めがかからず、政府はその後、同月23日に3回目の緊急事態宣言を発令する方針を発表、25日に発出した。そんな状況下で、Bunkamuraでは一体何が起きていたのか——。

お目当てはミイラではなく……

 この日はBunkamuraでの「古代エジプト展」の開催初日だった。この展覧会は、オランダ・ライデン国立古代博物館の所蔵品250点が展示され、展示されているミイラのCTスキャン結果が世界初公開されるなど、開催前から話題を呼んでいた。

 しかし、この日殺到した人々のお目当てはミイラではない。

「彼らは展示会限定のグッズを買うために集まったんです。ほとんどが“転売ヤー”ですよ」

 そう語るのは、自らも転売するための商品を購入する目的で仲間2人とBunkamuraを訪れたA氏だ。

“転売ヤー”とは、希少商品の転売で儲けようとする業者のこと。商品の流通を妨害するケースも多く、コロナ以降は巣ごもり需要で価格が高騰したゲーム機器「Nintendo Switch」や人気ゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」などを転売ヤーが買い占めたことが話題となった。

「この展示会では『ライデン国立古代博物館所蔵古代エジプト展開催記念 BE@RBRICK!!』が販売されたんです。『ベアブリック』というテディベアをモチーフにしたフィギュアシリーズの限定品で、ベアブリックは他にもドラえもんや高級グラスブランド・バカラとコラボするなど、色々なシリーズが発売されています。実はこれがいい金になるんですよ」(A氏)

ベアブリックはいま「最も美味しい商品」

 ベアブリックは2001年に株式会社メディコム・トイが開発した商品だ。世界中の企業やアーティストとコラボレーションし、バリエーションは数千種類にのぼる。

「著名人にもファンが多く、浜崎あゆみさんが2018年4月にインスタグラムへアップした写真には大量のベアブリックが写り込んでいました。有名ブランドCHANELとコラボしたベアブリックはBIGBANGのメンバー・G-DRAGONの楽曲『WHO YOU?』のPVで使われ、オークションでは230万円で落札されていますよ。

 ベアブリックはレア度が高ければ元値の数倍の値段が付くんです。利益率がめちゃくちゃ高いので、いま転売ヤーの間では『最も美味しい商品』のひとつになっています」(同前)

公式サイトに「個数制限なしでご購入いただけます」

 古代エジプト展では、会場でしか買えない限定品の通常サイズ(7センチ)と、大きな4倍サイズ(28センチ)が販売されたという。

「今回発売したベアブリックは発売後すぐの転売相場だと、定価1万3200円の4倍サイズは約6万円、定価1980円の通常サイズは約4000円の高値がついていました。

 しかも公式店舗で限定品が発売される際には、混乱を避けるために完全事前抽選制なのですが、古代エジプト展では違ったんです。4倍サイズを購入するためには当日に配られる抽選券をゲットして、その後の抽選で当選したら購入できるシステムでしたし、通常サイズはエジプト展の公式サイトに『個数制限なしでご購入いただけます』と記載があった。これは買いにいかない理由はないですよね」(同前)

開園時間前に約600人が集まっていた

 同じ発想の転売ヤーは大勢いたようだ。4月16日は開場時間の午前10時の前には、エントランス前に長蛇の列が出来ていた。行列の先頭集団は「前日の終電で渋谷に到着して徹夜で並んだ」という。

「10時の時点では、600人くらいの人がいたんじゃないですかね。コロナ禍でこんなに人が殺到しているのを見たのはここくらいです(苦笑)。並んでいたのはほとんどが転売ヤーでしょうね。みんな朝から殺気立っていましたよ」(同前)

 いまかいまかと待ち構えていた転売ヤーは、10時の開場とともに一斉に特設ショップに雪崩込んだという。

「僕らは前日から並んでいたので、開店と同時にレジに向かい『通常サイズ1000個ください』と店員さんに伝えました。ベアブリック1つにつき約2000円、計200万円の利益が出る計算になる。興奮しますよね。

順番無視に商品強奪…暴動の一部始終

 でも、店員が陳列棚とバックヤードからベアブリック1000個をとってこようとしていたところに、すぐ後ろに並んでいた外国人バイヤー集団が列の順番を無視して店内に押し入り、陳列してある通常サイズのベアブリックのほとんどをカゴに詰めていったのです。それを見た後方に並んでいたバイヤーたちも店内になだれ込んだ。そうして陳列している商品の奪い合いが始まったのです」

 そこからは「暴動みたいな状態」(同前)に発展していったという。

警察官すら意に介さない転売ヤー

「先頭集団の『順番守れよ!』という怒鳴り声や、それを無視して力ずくで商品を奪うバイヤーたちで店内は大混乱状態でした。『アフロディーテギャング(みたい)だわ』と言っている人がいましたが、アフロディーテギャングっていうのは大麻所持で逮捕された舐達磨を中心としたHIPHOP集団で、ガラの悪い集団を指すスラングなんです。それくらいめちゃくちゃ治安が悪かった。それで対処しきれなくなった店員がレジを一度止めて、警察を呼んだんです」(同前)

 その後しばらくして警察官が到着したが、混乱は収まらなかった。

「駆けつけた警察官は7人くらい。でも転売ヤーは意に介してもいませんでした。陳列棚から商品がなくなった後、転売ヤーはスタッフルームの出入口を取り囲みだしたんです。

 そしてバックヤードから商品が入ったダンボールを持ってきた店員から、無理やり商品を奪い取っていった。警察官も『お前らいい加減にしろ!』『下がれ!』と血管が切れるんじゃないかってくらいの大声で怒鳴っていましたが、誰も聞き入れませんでした。

 ショップ内だけでなく、外の様子もすごかったですよ。4倍サイズの抽選券を持った人たちが、抽選待ちでごった返していた。これでクラスターが起きない方がおかしいと思うような状態でした」(同前)

 その後、約3時間にわたって店内の至るところで、商品の奪い合いから喧嘩が発生し、怒鳴り声が飛び交ったという。人がごった返し、歩くこともままならないような異常事態だった。

「暴動は予測できなかった」バックヤードで担当者が謝罪

「混乱が徐々に緩和されてきたのが13時少し前くらいだったと思います。警察が先導して、商品を持っている人からレジで会計をする流れになった。だから僕らを含めた先頭集団は1つも通常サイズのベアブリックが買えず、後ろから人を押し退け、力ずくで商品を奪った人達が買っていくという状況でした。

 そんなの納得できませんから。店員にそれを主張すると、バックヤードに呼ばれました」

 A氏と仲間2人が案内された部屋には、グッズの企画や販売を行っているという「株式会社アートボックス」の代表を名乗る人物と、主催社の一社であるフジテレビの名札を下げた担当者、スタッフらしき人物の計3人が待っていた。

「その人たちからは、『今回の暴動は予測できなかった。先頭に並んでいたにもかかわらず購入できなかったことについては申し訳ない』と謝罪されました。後方から流れ込んできて、力ずくで商品を奪った人たちに購入をさせないようにして欲しいと伝えましたが、『それはできない』と。ただ先頭に並んでいた僕らは、特別措置として在庫から1人20個を購入できるように取り計らってもらいました。本当は1000個購入する予定だったんですけどね……」

 A氏が前述するように、メディア・トイの公式店舗でベアブリックの限定品が発売される際には、こうした混乱を避けるために完全事前抽選制で販売されている。しかし運営側は今回、そうした方策をとっていなかった。

主催のフジテレビらは「一時的に混乱」とコメント

 展示会の主催社の一社であり、A氏の対応にあたったフジテレビと、今回のグッズの企画・販売を行っている株式会社アートボックスに事実関係を確認したところ、「古代エジプト展」(東京展)広報事務局の担当者から「古代エジプト展」主催者の名前で、以下のような回答があった。

「古代エジプト展の初日に、展覧会特設ショップに来場者が集中してショップ内が一時的に混乱したため、来場者から通報を受けた警察が出動したことは事実です。販売方法は製造元の株式会社メディコム・トイとも相談したものですが、購入者が殺到するとは予想しておりませんでした。なお、今回の事態を受けて販売体制の見直しを行っており、その後のトラブルは発生しておりません」

 取材班は現場で撮影された動画を入手。そこには転売ヤーが殺到し、大混乱する様子が記録されていた( #2 )。

《“暴動”動画公開》「アフロディーテギャングだわ」ベアブリック転売ヤー“超3密”騒動で警察出動 へ続く

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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