1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. スポーツ
  4. スポーツ総合

「8年間待っていた」日本女子バレーの新星セッター・籾井あき(20)の“直言”をチームは受け止められるか?

文春オンライン / 2021年6月6日 6時0分

写真

日本代表のセッターとして注目を浴びる籾井あき ©AFLO

「いやあ、すばらしいですね」

「やっと出てきた感じがします」

 記者たちが絶賛するセッターが、日本女子バレーボール界に現れた。

 彼らが異口同音に称えるのは、セッターの籾井あき(20)だ。バレーボール女子日本代表は、5月25日に始まった国際大会「ネーションズリーグ」に参戦している。世界ランク7位の日本を含む強豪16カ国が参加し、オリンピックの前哨戦に位置づけられた大会だ。

 しかもコロナ禍で次々と大会が中止になり実戦経験を積む場がなかった中での貴重な機会。ファンの1人として「いまの日本はどんなもんだろ」と楽しみにしていた。

 最大の興味は、2017年に木村沙織が引退して以来いまだ定まらないエースの行方と、アメリカや中国のような強豪との力関係だった。しかしタイとの初戦に楽勝すると、2戦目の世界ランク1位の中国に3-0でまさかの完勝。その後ブラジルにこそ負けたものの、韓国、イタリアを撃破し、6月2日には世界5位のロシアに3-0のストレートで勝利した。6戦を終えて日本は5勝1敗。上位4チームが進出できるファイナルラウンド圏内を走っている。

セッターは高校2年生から

 そんな日本チームの中で、籾井は一際大きな注目を集めている。日本代表では初出場だが堂々とプレーし、コートの中で誰よりも存在感を発揮している。バレーを長く取材するスポーツ紙の記者も、籾井についてはマークしていなかったと驚いていた。

「とりわけ目を引くのは、バックアタックやミドルブロッカーへのクイックをうまく使うバリエーションの広さです。所属先のJTマーヴェラスでは外国人エースを使う素直なトスが多い印象でしたが、これほどの引き出しがある選手だったとは。まだ20歳と若く、中学ではスパイカーだったので本格的にセッターを始めたのは高校の途中から。それなのに初出場の代表戦でも冷静にプレーしているメンタルの強さにも驚きます。アタッカーの攻撃が決まっているのも、彼女のトスワークによる部分は間違いなくありますね」

新人なのにチームの問題点を臆せず指摘

 日本だけでなく、世界もこの新星セッターに熱い視線を送っている。国際バレーボール連盟のオフィシャルメディア「バレーボール・ワールド」は「Momii sports a winner's mindset」と題した特集を組み、「彼女のポジティブな姿勢が日本の成功の鍵」「ポテンシャルの高さが証明された」と絶賛した。中でも強調されたのが籾井の勝利に対する“欲求”の強さだった。

「籾井はブラジルに負けた後、『戦う以前に、自分たちの勝つっていう気持ちがあまり出せていない』とコメントしましたが、これは一歩間違えばチームメイト批判です。荒木絵里香(36)のようなベテランならともかく、代表戦初出場の籾井が発するにはかなり強い言葉です。ただ、問題だと感じた部分をずばっと指摘できるのも、勝ちたいという気持ちが強ければこそ。周囲もそれが分かっているので、このコメントをマイナスに捉える人はいません。そういえば竹下佳江(43)も真っ直ぐすぎる発言で物議を醸したこともありますし、似ている部分があるのかももしれませんね」(同前・スポーツ紙記者)

 籾井は名門の八王子実践高校を卒業し、2019年にJTマーヴェラスへ加入。1年目からレギュラーに抜擢され、チームのリーグ連覇に貢献している。女子バレーは木村沙織(34)や栗原恵(36)・大山加奈(36)など高校時代から代表入りするケースも多いが、籾井は日本、ペルー、スペインの血を引いていて、高校時代まではペルー国籍だったため年代ごとの日本代表にも入っていない。

 高校時代から帰化申請を始め、今回ようやく代表入りが叶った籾井を、バレー関係者たちは絶賛する。

「ようやく、ですよ。8年間待っていたんですから。日本の女子バレーは、セッターが定まらないと強いチームはできません。過去にも、現在日本代表の監督を務める中田久美さん(55)や、アテネ、北京、ロンドンと3大会連続でオリンピックに出場し日本に28年ぶりの銅メダルをもたらした竹下さんなど多くの名セッターがいました。

 ただ竹下さんの存在が大きかった分、彼女が2013年に引退すると“ポスト竹下”探しは難航してきました。真鍋政義監督時代のリオ五輪は宮下遥と田代佳奈美の2人体制、リオ五輪後に就任した中田監督も複数のセッターを起用してきましたが、周囲を納得させるだけの結果を残す選手はついに現れませんでした。でも籾井は今大会で活躍し、しかも日本が待ち望んでいた高身長のセッターです。竹下の場合は身長が低いため、どうしてもブロックの場面で相手に狙われがちでしたが、籾井はその点でも穴がない。竹下以上の選手になるよう、期待したいですね」(Vリーグ関係者)

メダル予想からも外れていた女子バレー

 石川祐希や柳田将洋が現れた男子バレーに押されがちだった期待感も、徐々に盛り上がりを取り戻しつつある。

「竹下が引退した2013年以降は国際大会でも結果が出なくなって、『日本女子は終わり』という声も出るほどでした。東京オリンピックのメダル予想でも、バレー女子を押す人はほとんどいませんでした。しかし今大会でその空気は一変したと言えます。その変化の中心にいたのは、間違いなく籾井でしょう。彼女はまだセッターになって4年で唯一の弱点は経験ですが、オリンピックの1年延期はその経験を積む時間を与えてくれました。あらゆる意味で“持ってる”選手ですね」(前出・スポーツ紙記者)

 バレー通からの評価だけでなく、ファンからの人気も急上昇している。

「試合中は険しい表情ですが、笑うと途端にあどけなさも出ます。試合以外の場面ではのんびりした表情の時も多く、趣味はパン作りや料理。試合でのかっこいい姿とのギャップも魅力ですね」(同前)

 中田久美、竹下佳江の後継者、そして木村沙織の引退後スターが誕生していなかった女子バレー界の大きな期待を背負って、籾井あきの大会はまだ続いていく。

(小野 歩/Webオリジナル(特集班))

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング