週刊文春記者が見た! 危険すぎる中国産食品#2 イカ・白身魚フライ編

文春オンライン / 2017年10月23日 7時0分

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©徳山大樹

「週刊文春」誌上で展開した「中国猛毒食品」キャンペーンは、読者から大きな反響を呼びました。取材班の一人だった徳山大樹記者が近著 『怖い中国食品、不気味なアメリカ食品』 (奥野修司氏との共著、講談社文庫)で書ききれなかった「潜入取材」の内実を、衝撃的な写真とともに明かします。前回の 「週刊文春記者が見た! 危険すぎる中国産食品#1 漬物編」 に続く第2弾は「海産物製品」です。

◆◆◆

ニセモノや劣悪商品が当たり前に並んでいる

「週刊文春」で特集した「中国猛毒食品シリーズ」では、取材班のメンバーが中国全土へ足を運んだ。中でも、中国・山東省は「日本の食料庫」と呼ばれるほど、私たちの食卓と縁が深い。「山東省統計年鑑」によれば、2014年の山東省の輸出額はおよそ1450億ドル。そのうち、約160億ドルが日本向けだ。

 山東省の現地取材で、水産加工物の生産地・文登市(現文登区)に来ていた私は取材予定だった市場周辺の飲食街を、通訳を担当してくれた日本人ジャーナリスト・林真宣氏と訪れた。そこで「九州拉麺」と書かれた店の看板を見つけ、目が釘付けになってしまった。

 よく見ると、看板に描かれた絵は、有名な日本のアニメキャラにそっくりなのだ。

 どう見ても、「一休み」の姿勢をとった室町時代のとんち坊主だ。彼の頭に、髪を描き足してコック帽を被せ、ラーメン丼を持たせている。中国には、こうした悪質なニセモノや劣悪な商品が当たり前のように並んでおり、驚きの連続だった。

「日本の食料庫」山東省の市場に度肝を抜かれた

 翌朝、市場を見学した。果物や肉類なども数多く並んでいたが、「山東省最大の魚の生産基地」と呼ばれる港町・石島管理区から運ばれてくる豊富な魚介類がウリだという。

 肉類の売り場を見ていくと、主に豚肉や鶏肉が置かれており、大量のハエがたかっている。どす黒く変色した木の板の上に生レバーを置いている肉屋もあって、度肝を抜かれた。

 ゴミと思われるチラシの上に並ぶ豚足は売り物なのか、もはやよくわからない。

 海産物売り場へ足を向けると、ステンレスやプラスチック製のバットに氷は一切敷かれず、常温で商品が並べられていた。そのため、魚の腐ったような異臭が漂っていた。新鮮なイカは鮮度に応じて無色透明から白、ピンクへと順番に色が変化してゆくという。写真のイカは鮮度が落ちて傷み始めていた。新鮮な魚介類が集まるとされる市場でもこの有様だ。

 石島の食品加工場へ潜入してみると、さらに衝撃的な光景を目の当たりにした。

日本向けに冷凍イカリングなどを年間5000トン出荷する加工場

 訪れたのは、石島の中心街から約30km郊外にある小さな加工場だ。30人ほどの従業員が黙々と作業を行っていた。

「石島で取引先を探しています」

 潜入取材のため、当然ながら記者だと明かすことはできず、商談に来たというポーズで私たちから挨拶すると、色黒で、頭髪の薄い社長が機嫌よく出迎えてくれた。商売っ気の強い人物らしく、いきなり日本と直接取引がしたいと訴えてきた。

 厚労省の2016年度「輸入食品監視統計」によれば、魚の冷凍食品の輸入届出量は、1位が中国で15万3846トン。山東省でも多くの水産加工物が日本向けに作られている。

 加工場の社長によると、日本向けに冷凍のイカリングやイカの加工品、白身魚のフライを年間5000トンも出荷しているという。

 こういった日本へ輸入される中国産の海産物製品は、安価な飲食店やお惣菜、弁当の食材に使われることが多い。冷凍食品では中国産のイカがよく使われている。

 ところが、加工場の従業員は、私服姿でマスクもしていない。古くなったピンク色のイカは黒く汚れた軍手を使ってさばかれ、錆びたバットへ入れられていた。加工場内は、生臭く、清潔な印象は微塵もなかった。

 続けて、切ったイカを添加物に漬ける工程も見せてもらうことに。大きな金属製の容器に入れられた添加物の溶液に漬けこんだ後、イカリングのサイズにカットされるそうだ。

 イカ社長から「酸化防止剤です」と説明されたが、刺激臭がしたのでふと気になり、イカが入っていない隣の容器に指を入れて味をたしかめようとした瞬間、「危ない! それを絶対口に入れるな!」とイカ社長に怒鳴られた。

「その溶液に浸すと、イカが膨れて見た目がよくなるんだ。高く売るためだよ。でも、その溶液は口にしてはならない。自分なら形が悪くても添加物のないイカを食べるからね」

 日本向けに大量の水産加工品を作っておいて、イカ社長は悪びれもせずこう言い放った。

 実際に添加物の効果を見せてもらった。下の写真をご覧いただきたい。

 左が無添加、右がさきほどの添加物に浸したイカリングだ。あきらかに形や色ツヤが違う。とても酸化防止剤とは思えない薬品に漬けられているのだから怖い。

なぜか「生産地 青島」と書かれたダンボールが……

 ふと、製品を詰める段ボール箱を見て、あることに気付いた。

 生産地の欄に「山東 青島」と記載されているのだ。青島は石島から200km以上離れている山東省の大都市だ。日本でもおなじみの「青島ビール」でご存じの方も多いだろう。

「このイカはどこで漁獲されたのですか?」

「石島近海ですよ。このあたりではたくさん獲れますから」

「でも、生産地が『青島』となっていますよ。産地偽装では?」

「え? いやあ、なんでかな(笑)」

 イカ社長は問い詰められて、あきらかに狼狽した。

「さっき、日本へ輸出しているとおっしゃっていましたが、本当に“輸出権”を持っている?」

イカ社長が産地偽装を認めた!

 中国では、企業が日本へ商品を輸出する際、政府に対して「対外貿易権」の届出・登録が必要となる。輸出の権利を持たない企業は、海外取引を直接行うことが許されていない。

「え? 持っていますよ、ははは……」

 社長はとぼけながら、応接室へ私と通訳を案内すると、観念したようにため息をついた。

「実は、輸出権を持っているのは青島の大きな企業で、商品をそこへ送って日本と取引してもらっているんです……」

 やはりウソをついていた。こうなると、5000トンの出荷量も眉唾だ。

 産地偽装を認めたイカ社長は不機嫌そうにこう言い訳した。

「10年前は日照市(山東省)で水産加工の工場を営んでいましたが、化学薬品工場がたくさんできたので水質が汚染されて、石島へ移転したんです。我々はまだマシですよ。この近くに100パーセント日本向けの白身魚フライ工場があるけど、そこもひどいもんです」

生臭いニオイが充満する白身魚フライ加工場へ潜入

 その工場に潜入したい――。交渉の結果、近くの白身魚のフライを加工する工場へ入れてもらえることになった。

「あそこの工場は悪いヤツとつながっていて評判が悪い。しかも孫請けなのさ。日本の企業と直接契約しているわけではない。だから、日本人に見られたくない。バレたらどうなるかわからないから、絶対に日本語を話さないでくれ」

 イカ社長から重大な注意事項を言い渡され、私と通訳の林氏に緊張が走る。イカ社長の車で、5分ほど走ったところに問題の加工場はあった。中はイカ社長の加工場同様、薄暗い。

 加工場内はハエが飛び交い、生臭いニオイが充満している。あたりに段ボール箱が散乱しており、整理しきれていなかった。

 段ボールの外側には、「開きメゴチ」や「アジフライ」、「あんこう肝」などと日本語で商品名が書かれていたのである。この加工場は、間違いなく日本向け食品を製造していた。他にも「サーモン大葉フライ」など、日本の大手水産加工会社の企業名が記載された箱も確認した。

 作業員たちはエプロンに作業着、手袋とマスクをしていて、イカ社長の加工場より一見清潔にしていた。ところが、ある作業員がさばいていた魚を数匹地面に落としてしまい、どうするのか見ていたら、拾ってそのまま他の魚と一緒にバットへ入れた。地面は魚をさばいた後に出る生ゴミで汚れていた。日本語で抗議するわけにもいかず、林氏と黙ってため息をつくしかなかった。

「もう、いいだろ。昼の休憩なんだ」

 その加工場の責任者は、無愛想な表情でイカ社長に言った。明らかに見学者の我々を煙たがっているようだ。聞きたいことは山ほどあったが、仕方なく我々は外へ出た。すると、従業員もぞろぞろと出てきた。おもむろにマスクや長靴を脱ぎ、日光で干しているように見えた。

 中国でも衛生的な加工場はもちろん存在する。まともな所だと、長靴や作業着は滅菌室で殺菌され、こうして着用したまま無造作に外へ出ることはない。この加工場では、作業員の消毒に対する意識はほとんどなかった。

 日本に戻った後、段ボールに名前が載っていた企業へ、石島の加工場と取引があるのか確認してみたが、全ての企業が「そのような企業との取引はありません」と回答した。

 では、我々が石島の加工場で見た光景は何だったのか。中国のどこで作られたのか把握できていない食品を我々の食卓へ届けている日本企業も存在する。それは紛れもない事実だ。一消費者として、食品企業の担当者には、もっと自分たちが扱う商品の管理を徹底して欲しい。

写真=徳山大樹・林真宣

(徳山 大樹)

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