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「身体が発達するにつれて客がつかなくなる」未成年“援デリ”の胸クソ悪い現実とは

文春オンライン / 2021年7月7日 6時0分

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©️iStock.com

「夜の仕事は全部やったかな」30代後半の援デリ嬢が、部隊の“稼ぎ頭”だったワケ から続く

 いわゆる管理売春には「管理型個人売春」「ボーダーライン風俗店」「他業種偽装」という大きくわけて3つの分類がある。 『アンダーズ〈里奈の物語〉』 で描かれる「援デリ」は、このなかでは管理型個人売春に分類される。そして、性風俗店と管理売春(特に援デリ)には、決定的な差が5つほどある。(全2回の2回め/ 前編 を読む)

性風俗店と管理売春、決定的な5つの差とは

(1)糞客、NG客の管理が困難(セキュリティ問題)

 あくまで個人売春を装う援デリには、一般の風俗店を出入り禁止になっているような(一般の女性とパートナーシップを結ぶのも難しいような)、暴力や違反プレイの常習者、性器が大きすぎて女性にけがをさせかねない者、盗撮癖、性病の放置等々の問題を抱えた客も流入してくる。

 あくまで集客に「個人・素人」を標榜しているため、被害を未然に回避することが難しい。問題が起きたのちに業者が買春客を詰めることはあるが、個々の業者に横のつながりやセキュリティ面の業界基準がないため、NG客の情報共有がなく、むしろ個々の業者が情報を抱え込む。後述するが、未成年援デリ独自の“糞客”も存在する。

※『アンダーズ〈里奈の物語〉』1巻では、主人公が4時間戻ってこないのを打ち子の長峰がのんきに放置しているシーンがあるが、これは長峰が「糞打ち子」の事例。風俗店だったら大騒ぎだ。

(2)身体(女性器)の消耗

 性器の挿入を前提とする援デリでは、1日4本5本と客を取る中で、確実に女性器が消耗する。風俗のような事前のプレイ行為を学ぶ機会がなければ、客対応は挿入しかないのが、その最大の理由。事前に潤滑剤を性器に仕込ませたり、鎮痛剤などで対処するも、消耗の度合いは身体的な個人差が大きく、「寝ているだけでいいから楽」と言えてしまうような身体的に優位なキャストとの格差が生じやすい。

(3)福利厚生が皆無

 生理休暇、定期的な性病検査、客がつかなかった日の日給保証といった福利厚生がほとんど存在せず、むしろ性病検査のために成人の保険証をレンタルするのに全額負担の診療費以上のレンタル代を課すようなひどすぎる業者も。

(4)部隊の存続性の低さ

 客付きの安定性、キャスト女性の安定確保、他業者との縄張り争い、地場ヤクザの介入、関係者の逮捕(OG少女の補導なども含む)などの外的要因が多すぎて、同じ援デリ部隊が長期に存続できず、すぐ解散。その都度キャスト嬢は条件の違う打ち子のもとを渡り歩くことになる。

(5)「矜持」をキープしていられる期間が短い

 以上が、性風俗店と管理売春の主な差だ。

未成年売春独自の市場ニーズの問題

 援デリと性風俗を一律にセックスワークとすることに、プロのお兄さんお姉さんが「一緒にすんな!」というのも分かる。けれど、ここで改めて注目したいのは、上記の「(5)矜持のキープが困難」についてだ。

 実はこれ、『アンダーズ』に描くような未成年の管理売春業かいにこそ、顕著な傾向。前回は未成年援デリ嬢たちの爆発するような矜持と万能感について書いたのに、どういうことかと思われるかもしれない。だが、残念ながら多くの場合、その矜持は継続しない。残酷ではあるが、それも援デリの現実の一つだ。

 援デリ業者で働く少女らが突き当たるのは、まず“糞客”にどれだけ対応できるか、性器の消耗にどれだけ対応できるのかといった、個人差の問題。けれど、それはしっかりと稼ぎを得ていれば、相殺される問題だし、1日に取る客の本数を下げ単価を上げればリスクは低減される(見ているだけでも痛いので、この時点で不適正であればそれ以上この業種にこだわってほしくはないと思うものの)。

 だが一方、次に突き当たる「年齢の問題」は、この問題と拮抗する。ここでいう年齢の問題とは未成年で家出生活を継続しているリスクなどではなく、「身体が発達するにつれて客がつかなくなる」という、未成年売春独自の市場ニーズの問題だ。

 本当に気持ち悪くて吐き気がするが、「未成年援デリ独自の“糞客”がいる」と書いたのがこれだ。

北海道からわざわざ関東に買春遠征してくる中学校教員も

 実はこの市場には、未成年の「未発達な身体的特徴」(童顔だけではなく)と、未成年で売春への慣れがないことによる「怯えのメンタリティ」「未熟で幼い言語」等々を求める客層が一定数いるのだ。それこそ、かつて取材した援デリ業者の客には、こうした少女を求めて北海道からわざわざ関東に買春遠征してくる中学校教員が居たりもした。

 こうした買春客は、キャスト少女が少女らしい身体特徴をキープしている間は、そして売春に恐怖を感じている間は、リピーターとしてガンガン金を落とす。『アンダーズ』作中では主人公の里奈が「顔面偏差値」というチート技で客をリピートさせているとの言及があったが、実際には彼女の身体が未発達だったことが大きかっただろう。

「こうした客は少女が多少肥満だったりしても“幼い肥満”は買う」、なんてことを援デリ業者から聞いた日には、嫌悪感と殺意で鳥肌が立った。

 だが、そう。当然ながら、こうした「児童」を求める“糞客”は、少女が少女でなくなり、売春のプロとしてメンタルが落ち着けば、金払いも悪くなるし、リピートどころかメールブロックする始末。こうなると、少女が矜持を維持するだけの収入をキープしたければ本数を増やすしかなくなるが、結局そこには「性器の消耗」が立ちふさがるという訳なのだ。

エンコーしか知らない子どもが勝負になるわけない

 胸糞悪い話で申し訳ないが、解決のための戦略としては、まず性風俗店のように、プレイを学ぶことで性器そのものの使用を軽減することがあるが、援デリも「経営効率」から考えれば、客がつかなくなった「元少女」を指導研修するよりは、新たに「現少女」を新人としてキャッチした方が合理的。

 そしてもう一方の戦略としては「コミュ力・人間関係の形成でリピーターを確保する」なのだが、ここで新たに障壁となるのが、そう……冒頭に登場したような、夜職マスターのプロ援デリ嬢なのであった。

「ぶっちゃけ未成年狙いを客にしてる時点で、援デリって駄目なんだよね」

 とお姉さん、ちょっと吐き捨てるように言った。どんな話でも通じる博学なお姉さんだったが、この話をしたときはちょっと雰囲気が変わったのを印象的に憶えている。

「いやね。援デリだって、大人の女相手にしてる客がほんとの客で、これは落としどころがあるんですよ。単に抜きじゃなくて、一緒に飲んで楽しいとか、さみしいときにすぐ会えるとか、どんな話でもついてくるとか、そういうのがリピ客の開拓に必要なのは、夜職でも風俗でも変わらないでしょ。だからソープ業界とかだってあたしより年上の姉さん方が現役でフツーにやってたりするわけで。あたしは最初15でピンサロから風に入ってやってきたけど、最初はマジ顎がまっすぐ閉じなくなるし、痛くてヨーグルトしか食えなくなった時だってあったけど、一杯経験して勉強して、教えてくれる客もいて、いまがあるわけ。エンコーしか知らないガキが勝負になるわけなくね?」

胸糞悪い事情なんか、想像もつかない

 それはもう、誰にでもできることではないし、経験を積むしかない。10代は消耗を重ねながらも学んで生き残るしかない。そうお姉さんは言うわけだが、ここで同じ現場でこうしたプロのお姉さんたちに対峙することで、「一度は得た矜持」を打ち砕かれる援デリ少女がいるのは、もう言うまでもないだろう。

 なにしろ彼女らは、自分の身体が発達して大人になったことで客がつかなかったりリピーター客がシカトしてくるようになったなんて胸糞悪い事情なんか、想像もつかない。何がいけないんだろう、どうして稼げないんだろうと思っている目の前で、自分の母親とさほど変わらないような年齢のお姉さんが、圧倒的コミュ力と知識と経験値と実技力をもって、ガンガン本数つけてリピーターを開拓していくのだ。

『アンダーズ』作中では、主人公の里奈が消耗するキャスト少女らの救済として、まずは身体消耗を回避する実技力を養成するために、経験のあるサクラに講習を依頼した。これは援デリ業者の経営効率や未成年買春客の市場ニーズ的には合理的ではないが、里奈のモデルとなった少女が実際に自腹でキャスト少女への研修を風俗嬢に依頼したエピソードは、ちょっとした業界の語り草だったと思う。

 けれどそれは、あえて物語にしなければならないほどのレアケース。多くの援デリ少女らは、売春に消耗し、輝いた矜持の瞬間を失い、セックスワークの格差底辺へと落ちていく。あの日取材した現場にいた15の少女も19の少女も、ほんの半年後には行方も知れず、携帯番号も解約され、そもそもその業者自体が解散していた。

 これが現実。僕が、「さりとて」セックスワーカーの一部は外部の支援と接続する道をもっと開拓すべきだと思う所以なのだ。

(鈴木大介)

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