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《森友公文書改ざん》「安倍さん、あなたは夫を3回殺しました」赤木雅子さんが憤る理由

文春オンライン / 2021年7月6日 6時0分

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開示された「赤木ファイル」を見る赤木雅子さん

「夫は、これで3回殺されたんですね……」

 赤木雅子さん(50)はそうつぶやいた。安倍晋三前首相その人の公式ツイッターを見て。

〈赤木氏は明確に記している。「現場として(森友学園を)厚遇した事実はない」この証言が所謂「報道しない自由」によって握り潰されています。《秘書アップ》〉

 この公式ツイートにある「赤木氏」とは、雅子さんの夫、赤木俊夫さん(享年54)のこと。4年前、森友学園との国有地取引を巡る公文書を改ざんさせられ、それを苦に命を絶った。

 俊夫さんが生前、改ざんの実態をまとめた「赤木ファイル」と呼ばれる文書が6月22日、ようやく国から妻の雅子さんに開示され、マスコミで大きく報じられた。その2日後、安倍前首相の公式ツイートが投稿されている。一体なぜだろう? そして雅子さんはなぜこれを「夫は3回殺された」と表現したのだろう?

首相が揶揄した赤木ファイルの記述

 赤木ファイルの冒頭で、赤木俊夫さんは確かに以下のように記している。

〈本省(財務省)の問題意識は、調書から相手方(森友)に厚遇したと受け取られるおそれのある部分は削除するとの考え。現場として厚遇した事実もないし、(会計)検査院等にも原調書のままで説明するのが適切と繰り返し意見(相当程度の意思表示し修正に抵抗)した〉

 この「現場として厚遇した事実もない」という部分を、安倍前首相の公式ツイートはとらえている。

 財務省近畿財務局は鑑定価格9億5600万円の国有地を8億円以上も値引きして1億3400万円で森友学園に売った。その土地に建つ小学校の名誉校長が安倍首相(当時)の妻、安倍昭恵さんだったから、「首相の妻に忖度して不当に値引きしたのではないか?」と国会で追及された。これに対し安倍氏は「私や妻が(取引に)関係していたら総理大臣も国会議員もやめる」と見得を切った。

 だから今回の赤木ファイルの「厚遇した事実もない」との表現をとらえ、マスコミに「報道しない自由で握り潰されている」と揶揄した。一見もっともらしく思える。

「厚遇した事実もない」は上司が伝えた内容

 だが、赤木俊夫さんは公文書改ざんの当事者ではあるが、国有地取引の当事者ではない。俊夫さんが担当部署に異動してきたのは国有地売却の翌月だから、実際の交渉には関わっていない。取引の経緯を直接知らないのである。だから「厚遇した事実もない」と書いたのは、売買交渉に携わった上司の池田靖統括国有財産管理官(当時)が俊夫さんに伝えた内容だろう。雅子さんは当時を振り返る。

「夫は池田さんのことを信頼していました。森友問題が発覚した当初『取引は正当だと池田さんに聞いている』と話していました。だからあのように書いたんでしょう」

 しかし時がたつにつれ、俊夫さんは池田さんへの不信感を募らせていく。値引きの理由は地中深くにあるゴミとされたが、その存在は誰も確認していない。その年の人事異動で俊夫さんだけが担当の職場に残され、池田さんや他の職員はみな異動していなくなった。そして異動後、問題の国有地取引に関する資料が職場から消えていたという。

「むっちゃ落ち込んでました。一人だけポツンと残されて、資料はすべて処分されて……夫に取引の真相を知られたくなかったんですよね。あんまりです」

 その直後、俊夫さんはうつ病と診断され休職。職場に戻ることはできなかった。休職中、池田さんへの不満を漏らす。

「池田さんは仕事が雑や。ちゃんと(国有地を)売っていたらこんなことにならんかった。大学に売っとったらよかったんや」

 大学とは、国有地の隣にある大阪音楽大学のこと。森友学園より先にこの土地の購入を希望し、7億円以上の額を提示したとされるが、近畿財務局は売らなかった。それを森友学園には1億3400万円で売った。これが厚遇でなくて何だろう。

池田さんも「値引きに根拠が足りないこと」を認めている

 そもそも売買の当事者である池田さん自身が、8億円以上の値引きに根拠が足りないことを、雅子さんに認めている。森友学園との交渉でも「(籠池)理事長がおっしゃるゼロ円に近い金額まで、私はできるだけ努力する作業を今やっています」と発言している。まさに厚遇そのものだ。

「厚遇した事実もない」と書かれていても、それは俊夫さんの実体験ではなく、土地を売った池田さんの“言い訳”にすぎない。だからマスコミは「厚遇はなかった」とは報じない。当時の首相ならこうしたいきさつをわかっていて当然だが、公式ツイッターでは「握り潰されている」と非難する。

告発を「なかったこと」にする“三度”の殺人

 改ざんは、安倍前首相の「関係していたら総理大臣も国会議員もやめる」という答弁が発端になった。それは財務省も認めている。改ざんで財務本省が近畿財務局にメールで真っ先に指示したのは、安倍昭恵さんや安倍首相(当時)の名前を消すことだった。それが赤木ファイルで初めてわかった。だから大きく報じられた。これで「関係ない」と言えるだろうか?

 赤木雅子さんから見れば、安倍首相(当時)の発言が発端となって夫が改ざんをさせられ、死に追い込まれたのが「第一の殺人」。真相解明の再調査を拒否されたのが「第二の殺人」。そして今回の安倍前首相の公式ツイートは「第三の殺人」。すべては俊夫さんの告発を「なかったこと」にするものだと雅子さんは憤る。

「夫が死に物狂いで残した赤木ファイルを汚されたような気持ちがします。安倍さんは自分の発言が改ざんを招いた責任を感じてほしいです」

 ツイートには「秘書アップ」とあるが、安倍前首相本人の公式ツイッターであり、責任は免れない。225万人もの人がフォローしていて、5万4000もの「いいね」が付いているのである。

 赤木ファイルと安倍前首相の公式ツイートについては、発売中の「週刊文春」(7月8日号)でさらに詳しくお伝えしている。

「あまり細かく知らない」と答える麻生財務大臣

 赤木ファイルの「厚遇した事実もない」という記載と、それを受けた安倍前首相の公式ツイートについて、7月2日、麻生太郎財務大臣の会見で東京新聞の記者が認識をたずねた。やり取りを 毎日新聞が詳しく報じている 。それによると、麻生大臣はこう答えた。

「あまり細かく知らないねえ。それしか答えようがないよ今。質問の意味をもう1回、俺に分かるように分かりやすく説明してごらん」

 財務省の最高責任者である財務大臣が「あまり細かく知らない」と答えること自体、問題を軽く見ていることを示す。さらに麻生大臣は、重ねて「厚遇した事実」について認識をたずねる記者にまともに答えない。

「赤木ファイルとして厳然と存在しているわけじゃありませんから。あんた分かってないで質問なんかするなよ。赤木さんが関与したと思われるところだけずーっと出して、その全てを出したのをまとめて、赤木ファイルと呼んでいるんだよね」

 事実の認識が間違っている。財務省の職員が大臣に耳打ちする。

「赤木さんがまとめたファイルです」

 だが麻生大臣の答えは、記者の質問と最後までかみ合わない。

「全然頼りねえ顔してるけど、質問するんだったらちゃんと、きちっと知ってないと具合悪いよ」

 きちっと知ってないと具合悪いのは麻生大臣の方だろう。

赤木雅子さんは「馬鹿にされたように感じます」

「厚遇した事実もない」という赤木ファイルの記載の持つ意味と、安倍前首相の公式ツイートのことを知らないのだろうか? それとも知っているけれど、それこそ具合が悪いからはぐらかしたのだろうか? いずれにせよ財務大臣にふさわしい態度とは思えない。

 記事を読んで赤木雅子さんはあきれた。

「麻生さんは財務大臣で、夫の上司だったんだから、もう少し夫のことに真剣に向き合ってほしい。赤木ファイルについてきちんと理解して話してほしい。遺族のことが見えていないと思うし、馬鹿にされたように感じます」

 安倍前首相、麻生財務大臣。森友学園への国有地値引き売却も、土地取引をめぐる公文書改ざんも、このお二人が責任者の時に起きた。しかしお二人の態度からは、その責任を感じているようには見えない。

誰の発案だったのか? 再調査を麻生大臣はまたも拒否

 赤木ファイルでわかったこと。改ざんの最初から、財務省は安倍昭恵さんや安倍前首相の名前を削るよう現場に事細かに指示していた。財務省が何を気にしたかがわかる。佐川宣寿理財局長(当時)の指示で国会答弁に合わせ書き換えた。

 まだわからないこともある。こんな大それた行為を誰が発案したのか? 改ざんを指示した佐川氏に、さらに指示した人物はいないのか? 省内で改ざんはどのように指示伝達されたのか? わからないから再調査が必要だが、麻生大臣はまたも拒否している。

 それでも赤木雅子さんは、夫が安倍さんに“3回殺され”ても、真相解明の再調査を求め続ける。

「何回殺されてもわたしは何回でも助けに行きますから。諦めません」

写真=相澤冬樹

(相澤 冬樹)

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