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《誤った“五輪ファースト”》「富士山に行きたい」に従え!? 組織委がタクシー会社に「運転手枠」取り消しの横暴《バブル方式完全崩壊》

文春オンライン / 2021年8月1日 11時0分

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東京シティエアターミナルの様子

 東京都の新型コロナウイルスの感染者数は31日、4000人を初めて超えた。

 五輪開催中の感染拡大を防ぐための肝として組織委員会が掲げるのが、関係者が選手村と練習・試合会場以外を移動できない「バブル方式」だ。広がり続けるコロナウイルスの感染を防ぐため、関係者の生活区域を必要最低限の場所だけに限定することが狙いだ。

 ところが、五輪開催1カ月前の6月28日、日本交通や帝都自動車交通など、関係者の夜間送迎を行う大手タクシー会社6社を集めた説明会の質疑応答で、組織委からそんなバブル方式を無視するような、耳を疑う説明がなされたという。

「乗車した五輪関係者の指示が最優先」

 説明会に参加した運転手が証言する。

「ある運転手が、現場指揮の優先順位について質問したんです。五輪は大会規模も大きいですし、外務省や警察など関わる関係者の数も多い。いざ、何か判断に迷うことがあった時に、どこからの指示を最優先すればいいのかを確認したわけです」

 すると、組織委の説明担当者は「乗車した五輪関係者の指示が最優先」だと答えたのだという。前出の運転手が続ける。

「運転手が『では、例えば乗客が富士山に行きたいと言ったら、行かなければならないのか?』と質問すると、組織委は『行ってください』と断言した。続けて『関係者がレストランに行きたいと言ったら、連れて行ってください』とわざわざ補足までしたんです。質問した運転手は勤続年数も20年を超えており、過去には国際会議などで閣僚の送迎もしたベテランです。そういった経験から、今回のような国際イベントではどこからの指示を優先すべきかを、事前に決めておかないと現場で混乱が生じることを理解していた。そうした事態を見越して質問したのでしょうが、思いもよらない答えが返ってきました」

説明会は紛糾

 選手や大会関係者の行動ルール(プレイブック)には、

「許可される行き先は大会にとって不可欠な場所」

「散歩をしたり、観光地、ショップ、レストラン、バー、ジムなどに行ってはいけません」

 と書かれており、組織委が説明したとするレストランへの“寄り道”はご法度。富士山は言わずもがなだ。認識があまりに低いといわざるをえない。

「説明会は紛糾しました。ただでさえ高齢ドライバーも多いですし、『乗客の寄り道につきあえ』という指示はどう考えてもおかしい。我々が説明会にいくように伝えられたのも前日でしたし、組織委は開催直前でもバタバタしていて、基本的な情報共有ができていなかったのでしょう。他の会社の運転手からも同様の質問が出て、説明会はもめにもめました。とりあえず『この場で断言せずに一度持ち帰って回答をいただけないか』と運転手側が申し入れをし、その場は一度収まったんです」

 ところが説明会から約1週間後の7月7日、説明会で質問した運転手は、組織委の「復讐」を知ることになる。

会社が受注していた夜間送迎の3枠を組織委が全て打ち切る

 会社が受注していた7月13日から8月10日までの夜間送迎の3枠を、組織委が全てキャンセルしたのだ。事態を受け、会社は説明会に参加していた6人を注意。通知も渡され、内容には「研修中の受講態度があまりにも悪く、オリンピック・パラリンピック大会組織委員から苦情及び受注業務を断る旨の通知を受けた」とある。

「会社を通じて伝えられた苦情の中身は、質問内容や、説明会中の『聞いていない、話が違う』といった運転手の独り言がうるさいという内容だったようです。スムーズな運営を妨げたという言い方もあったようですが、全体で2時間弱の説明会の後、質問した時間なんて10分ぐらいです。組織委としては『恥をかかされた』と思ったのでしょうね。自分たちの手落ちを棚に上げ、質問した運転手に罪を擦り付けるなんて横暴すぎます」(説明会に参加した別の運転手)

 結局、質問をした運転手は業務停止7日間の処分を受け、体調を崩し休養しているという。

五輪関係者なのか、パッと見の判別はつかない

 では実際に、組織委が主張するバブル方式は機能しているのだろうか。五輪関係者を送迎したことがあるというタクシーの運転手は話す。

「五輪関係者や報道陣は、まず空港から専用のリムジンバスで東京シティエアターミナルに来ます。そこから事前にナンバーを伝えられた専用タクシーに乗り継ぎ、宿泊先などに向かうのですが、誘導するボランティアの英語力が不十分ということもあって案内がわからず、迷って一般のタクシーに乗ってしまったという事例も聞きました。バブル方式なんてそんなものです。実際、オリンピック前から住んでいる外国人なのか、五輪関係者なのか、パッと見の判別はつきませんし、とりあえず手を挙げているなら拾っちゃうと思いますね」

いまだ杜撰さが目立つバブル方式

 “寄り道”についても実際に起きていると、送迎にかかわる運転手は話す。

「組織委からは『トイレなど緊急の場合は、少し離れたところに止めてコンビニに行かせてもよい』と内々で説明を受けています。トイレだけなら仕方ないですが、買い物の寄り道に付き合うことも多いです。スーパーで停車させられて、2リットルの水を5、6本買い込んできたり、お酒とパックの氷を買ってきたり、アイスクリームやスイーツを買ってきたりして大きいビニール袋を両手に帰ってくる関係者は多い。あと競技会場などから宿泊先に帰る途中で、ホテルまであと500mといったところで、『ここで大丈夫』と言われたので降ろしたら、すぐ目の前の飲食店に入っていくのを見かけました。ホテルの1駅前で停車して、そこから写真を撮りつつ、散歩しながら帰っていく人たちも多いです。しっかりと観光を味わっているようですね(笑)」

 開催を迎え、いまだ杜撰さが目立つバブル方式。

 抜け道“バブル”に終息はくるのだろうか。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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