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〈烏龍茶のシェアを追い抜いた!〉いまイチバン売れている飲料“無糖炭酸水”…でも各メーカーの「ちがい」は何?

文春オンライン / 2021年9月2日 6時0分

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王者ウィルキンソンと今年発売された新商品

 近年、無糖炭酸水は生産数量を伸ばし続けており、コロナ禍の2020年も前年比115%の約57万キロリットルとなった(全国清涼飲料連合会調べ)。カテゴリー別の生産量シェアでは飲料全体の2.7%を占め、烏龍茶カテゴリー(2.5%)を抜き去り、野菜飲料と肩を並べている。炭酸カテゴリーの中では、透明炭酸飲料(1.9%)を上回り、コーラ炭酸飲料(5.4%)の半分の規模まで拡大してきた。

 炭酸水の市場規模は約2000億円規模で、販売数量は6000万ケース超とみられる(1ケース=500mlPET×24本など)。家計消費支出(総務省)においても、炭酸飲料全体の1世帯当たり年間支出金額は、2019年の5710円から2020年は6649円で約16%伸ばしているが、その牽引役は無糖炭酸水だ。市場に、いま何が起きているのだろうか。

「ウィルキンソン」の独占市場に起こる異変

 もともと炭酸水は、欧米で食事の際に飲まれていたが、硬水の商品が多かったため、軟水に慣れた日本人には直接飲用が定着せず、BARなどの割り材として長年親しまれてきた。10年前まではビン容器が多く、外食店向けの業務用商品の性格が強かった。2000年代後半のハイボールブームなどで割り材としての需要が高まっていった。

 本格的な成長のきっかけは、2011年にアサヒ飲料が「ウィルキンソン」の500mlをPET容器で発売したこと。最近では、カロリー離れや砂糖離れなどの消費者の健康志向により、そのまま飲む“ストレート飲用”の需要が高まって、炭酸水ユーザーが増加している。

 今年も市場成長は続いているが、昨年と異なるのは、フレーバーのついていないプレーンタイプに大手各社が注力していることだ。

 これまでプレーンのカテゴリーは、市場を切り開きトップシェアを築いた「ウィルキンソン タンサン」(アサヒ飲料)の独壇場であり、競合はフレーバー商品に活路を見出していた。

 しかし、市場で販売構成比の約7割を占めるのはプレーン。今後の成長を図る上では「ウィルキンソン」の独走を指をくわえてみているわけにはいかない。今年、日本コカ・コーラとサントリー食品インターナショナルが相次いで強炭酸を特徴とする新ブランドを投入し、市場では激戦が繰り広げられている。

コカ・コーラの誇る“最強の強炭酸”は技術をアピール

 そのひとつが、5月に発売された“日本コカ・コーラ社史上最強”の強炭酸水「アイシー・スパーク from カナダドライ」だ。プレーンの「アイシー・スパーク」(500mlPET)と、凍結レモンピールエキスを使用した「アイシー・スパーク レモン」(490mlPET)の2種類が展開されている。

 一般的に、炭酸ガスなどの気体は、水の温度が低ければ低いほど溶けやすいという特性がある。その性質に注目し、“冷却スパーク技術”によって製造時の冷却工程を改良。過去最高のガスボリュームの圧入に成功したことで、日本コカ・コーラ社史上最強の無糖強炭酸水が開発できたという。

 同社は開発にあたって、炭酸水ユーザーの声をきき、大きく2つのニーズがあることを突き止めた。ひとつは、“本当に強い炭酸の刺激でリフレッシュしたい”という根源的な価値の需要。もうひとつはどの製品も強炭酸を訴求していて、“どれを選んでいいかわかりづらい”という声が多かったことだ。そのため、“強炭酸を実現できた理由やその裏にある技術”を伝えることで、広く認知してもらうことを目指したのだという。

 この戦略が功を奏し、2021年5月10日の発売後、累計出荷本数ベースでは3週間で1600万本となった。日本コカ・コーラの担当者は、ユーザーに支持されている背景について次のように語る。

「コロナの影響により、手軽で健康的なリフレッシュを求めている消費者が増加し、そこで浮かび上がってきた“強い炭酸”を求める無糖炭酸水ユーザーのニーズにマッチした製品を開発できたと考えています」

“顔”を大きく変えたサントリーの「五感」戦略

 炭酸水市場でナンバー2のサントリー食品インターナショナルは、「THE STRONG 天然水スパークリング」(510mlPET、1050mlPET)を6月末から発売。非常に好調な売れ行きとなり、2021年1-7月累計の同社の天然水スパークリングブランドの販売数量は約2割増となった。

 同社はこれまでも「天然水スパークリング」を展開してきたが、“雪解け水のような澄み切ったおいしさ”という「サントリー天然水」の安心・安全なやさしいイメージが表に出てしまい、強炭酸感が伝わり切らないことが課題だったという。そこで、新ブランドを立ち上げ、極限まで刺激を突き詰める開発に取り組んだのだ。同社の担当者は「コロナ禍をきっかけにまん延する、閉塞感やストレスに対し、新商品を開発して発散の一助になりたい」と語っている。

 サントリー食品によれば、ヘビーユーザーにとって、炭酸水は飲むだけでなく、強い刺激でリフレッシュできる切替ツールになっているという。そこで、「炭酸水の刺激以外の価値」として五感に着目し、天然水ブランド最高レベルのガス圧にするなどこだわった中味とともに、ボトルデザインの革新を断行。五感を通して刺激を伝えることを目指した。

 こうして誕生した今回のデザインは、特にボトル形状のデザインが重要だったという。ボトル全体で氷の山をイメージさせようと、一般的な形状と異なる“バキバキ”の凹凸が施されたデザインを採用。手に取った瞬間から五感に訴えて「刺激」を伝えるべく、持ち手の中心になる「重心」部分をバキバキ形状にしていることも、こだわったポイントだ。

迎え撃つウィルキンソンの「ユーザー拡大策」

 一方、迎え撃つ炭酸水売上ナンバーワンブランドの「ウィルキンソン」は、今年1-6月の販売数量が1454万ケース(前年比106%)となり、過去最高実績を更新するなど好調を続けている。

 自宅で過ごす時間が多くなる中、「気分をすっきりさせるのに適している」「リフレッシュしたい」という意識から炭酸水の需要が高まり、「刺激、強め。」という独自の価値を持つ「ウィルキンソン」が支持されたという。中でも家でお酒を飲む機会が増えたことから、割り材としての需要も高まった1Lペットボトルは、上期の販売数量が前年比116%となった。

 現在、ユーザーの拡大に向け、女性や若年層をターゲットにした施策にも取り組んでおり、フレーバータイプの積極的な提案を行っている。7月には「ウィルキンソン タンサンピーチ」を、9月14日には「ウィルキンソン タンサン マスカット」を発売し、女性ユーザーの飲用拡大を図った。

 また店頭販促では、「ウィルキンソン タンサン」「ウィルキンソン タンサンレモン」の1Lペットボトルを対象に、製造後最短6日で届ける「強炭酸体感パック」が抽選で5000人に当たるキャンペーンを行うなど、過熱する炭酸水市場のさらなる活性化を図っている。

 加えて、ECチャネル(通販)でのまとめ買い需要に対応するため、「ウィルキンソン タンサン」プレーンとレモンで、500mlペットボトル32本入の商品を4月から楽天市場で展開。従来の24本入から本数を増やすことで、注文する手間やダンボールを廃棄する手間を減らして利便性を向上させようという試みだ。

フレーバー人気も続く炭酸水市場…なぜこんなにもウケているのか

 今年はプレーンタイプで各メーカーの猛攻が続いているが、もちろん、昨年「主役」だったフレーバータイプの勢いも侮れない。

 

 たとえば、昨年とくにラインナップが増加したレモンフレーバーの炭酸水。すでに多くのファンがついており、主力ブランドからもそれぞれレモンはラインアップされているが、なかにはレモンを中心に展開するブランドもある。

 キリンビバレッジは、「キリンレモン無糖」(450mlPET)を、2021年4月から中味・パッケージをリニューアルして発売し、幅広い世代から人気を集めた。7月単月では前年比約2割増と昨年を大きく上回っている。「あまくないのに、キリンレモンの味わいを楽しめる」がコンセプト。担当者は、「市場浸透を図り、コロナ禍で加速する健康・リフレッシュニーズに応えていきたい」とする。

 ポッカサッポロフード&ビバレッジは、2020年の期間限定販売時にヒットした「キレートレモン 無糖スパークリング」(500mlPET)を3月末から定番品として展開したところ、前年を上回る売り上げで推移している。レモンに強い企業としての強みを活かし、レモン1個分の果汁が入った無糖炭酸水となっていることが差別化ポイントだ。

 異色の存在でいえば、伊藤園が7月から展開している「カテキンGO!SPARKLING」(500mlPET)も面白い。緑茶成分”カテキン”が1本(500ml)あたり80mg入っており、「お~いお茶 緑茶」コップ約1杯分(200ml)と同じレベルのカテキンが入った無糖炭酸水である。炭酸水市場は、健康志向の高まりから需要が伸びた側面もあり、お茶に関する知見と経験を活かした伊藤園ならではの提案は、市場の新たな選択肢になる可能性もある。

 無糖炭酸水市場は、コロナ禍でも継続的に伸長しており、清涼飲料市場の中でも最も元気なカテゴリーである。新型コロナの影響で、運動不足への懸念も含めて健康志向がより高まっているため、無糖という健康感と、炭酸の刺激によるリフレッシュという独自の価値で、炭酸水のユーザーはさらに増加するだろう。飲料各社も積極的に新商品やリニューアル商品を投入しており、まだまだ市場ははじけそうだ。

(菊池 美智世)

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