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「大げさは誇張じゃなくて、その人には重大ってこと」「もっとみんな喜んでいい、悲しんでいい」“引き算のできない表現者”ゆっきゅんが目指す“DIVA”の姿

文春オンライン / 2021年9月9日 11時0分

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多様な女の子のロールモデルを発掘する“ミスiD”で、男性初のファイナリストに… 自らを“DIVA”と名乗る「ゆっきゅん」って何者? から続く

 多様な女の子のロールモデルを発掘するというオーディション「ミスiD2017」で、男性初のファイナリストとして注目を浴びたゆっきゅんが、2021年5月に待望のソロ音楽プロジェクトを開始。その名も「DIVA Project」。あるがままの姿を貫き、自分の感情を卑下しない彼の姿は、ファンを惹きつけ、奮い立たせてやまない。新世代「DIVA」の、強烈なきらめきを全身に浴びるインタビュー。(全2回の2回目/ 前編 を読む)

「ゆっきゅんらしさ」はどこにある?

――ご自身を「王子様」と表現されていた時期もありましたね。

 上品で貴族っぽい、王子様みたいな存在を意識していたんです。自分の中にあるものを、わかりやすく、ポップに見せるとしたら王子様かな、と。人前に出る時には絶対にハーフパンツに白いタイツを穿いて、ふりふりのブラウスを着ていました。今の私服もそんな感じだし、王子が「DIVA」に変わった、ということではないんです。それに、今までやってきたことや当時の選択に、納得がいっていなかったわけでは全くなくて、全部並行している感覚もあるくらいです。ずっと「DIVA」だったし、王子様でもいい、みたいな。

 ただやっぱり、「DIVA」の方が「今の自分」という感じがしますね。あえて言うなら、「王子様」は見られ方を意識していたのかもしれません。自分が着たい服を着て、ありたい姿でいる時、人から見たら王子に見える、ということですね。「DIVA」はやはり精神性というか、「私がDIVAです」って言い張っている内面的な部分です。

「DIVA ME」を聴いた今までのファンの方には、驚きと納得が一緒に来ている、と言われました。「ゆっきゅんはこれがやりたかったんだ」とハッとする一方で、歌詞の内容は今まで発信してきたことと同じだと思う、と。まさにその通りだと思います。だからあの曲から私を知っていただいても、今までの私のイメージとあまり齟齬がないだろうと思っています。「DIVA ME」は自己紹介ソングですね。

あらゆるものに似ている表現を目指したい

――「DIVA ME」の感想で、うれしかったものや意外なものは他にありましたか?

「DIVA ME」って、聴いてくださる人によって想起してくださるアーティストさんの名前が本当にバラバラなんです。藤井隆さん、ハロー!プロジェクトやつんく♂さん、浜崎あゆみさんなどのエイベックス系の方や、海外の「DIVA」もありました。それがすごくうれしかったですね。というのも、それは私が表現としてずっと目指しているものなので。

 4、5年前、映画監督の山戸結希さんにラジオで相談したことがあるんです。「自分は好きなものがたくさんあるけれど、結局それらの影響下にある表現しかできていない気がする。そんな表現に意味があるのかと考えると、何をしたらいいのかわからなくなるんです」と。そうしたら、山戸さんはすごく丁寧に答えてくださったんです。

 山戸さんがはじめて映画を発表した時、洋邦問わず多くの映画監督の名前を挙げて「似ている」と評されて、「でも○○と××の作風が合わさったものは初めて見た」と言われたらしいんですね。そこで、「似ている」って本当は一番すごいことなんじゃないかと考えるようになったらしくて。全てに似ている芸術は、全ての人の郷愁に触れられる。だからそのジャンルの全ての先人たちに似ている芸術を目指したらいいんじゃないでしょうか、とおっしゃったんです。

 その当時の自分には、到底すぐに実現できることではなかったのですが、この言葉はずっと覚えていました。だから今回、いろんな人の名前を挙げてもらえたことで、山戸さんに言われたことの第一歩を踏み出せたような気がして、すごくうれしかったです。しかも自分が意識している方以外のお名前の方が多いくらいなんです。新しさを志向しながら、既存のいろんなものと良さが共通しているのは、芸術にとってすごく価値があることだと思います。そして、好きな人やものがたくさんあることって本当に最高だなって思います。

――ゆっきゅんさんが意識して「DIVA ME」に取り入れたものもたくさんあるのでしょうか。

 初めての曲だから、自分が好きなものを全部ぎゅっと詰め込みました。取り入れた、というのではなくて、私の心の血肉になっているあらゆるものからの影響が滲み出ていると思います。私、最大公約数って言葉は嫌いなんです。ずっと、足せよ、かけろよって思っているんですね。これは、まさに「足してかけた」曲です。

大げさは「重大」だってこと

 歌詞についても、1行1行を見てみると、友人や、ファンの方、本で読んだ人など、いろんな人を思い浮かべて書いたなと思います。書いている時はもちろん、見たことがないものを書こうと思っていたんですけれどね。「DIVA ME」の歌詞は、加藤シヅエという日本のフェミニストの本を知った時に、方向性がバチッと定まりました。作家の柚木麻子さんが教えてくれたんですけれど、加藤シヅエの本の中にこういう言葉があるんです。「あなたは大げさです。私も大げさ。だからあなたの気持ちがよくわかる。日本では、つつましいことやおとなしいことのほうを人はほめますが、大げさな人のことは、誤解されやすく非難されやすい。つまり、つつましいことよりも値打ちが下がるのが日本です。だから日本は進歩しない」(加藤シヅエ・加藤タキ『加藤シヅエ 凛として生きる』大和書房)。この言葉を読んで、「本当にその通りだな」と思いました。ずっと昔に、もうそんなことを言ってた人がいたんですよ。

 大げさっていうのは、誇張しているということじゃないんです。ある人にとって重大なことが、他の人にはそう見えないってだけのことなんですよ。でも自分にとって重大なことは、誰に何と言われようと重大なことなんです。地球や世界で起きていることと比べてちっぽけだからと、自分の苦しみを矮小化するのはやめたいですよね。もっと喜んでいいし、悲しんでいい。そういう謙遜はもういらないだろうって思います。

 私自身、忙しいと思うハードルがすごく高いんです。でも自分の感情や反応を小さく片づけたり、卑下したりって、本当に時間の無駄のような気がします。感情のハードルを下げたいし、自分に素直になるタイミングを早めたいですね。Twitterで忙しいアピールをしてもいいし、そんなことないよって誰かに言ってもらうつもりで何かを言ってもいいじゃないですか。そんなの自分の自由だよねって思います。

 以前私は、エッセイを集めて『友達の遅刻は最高』というZINEを作ったんですね。その中で『この世界の片隅に』に触れたんです。すずさんが不発弾で自分の右手を失ってしまうシーンについて、「私も彼女に『でも生きていてよかったね』と言ってしまうかも」と。ある人が辛かった経験を話してくれた時、相手を元気づけたいという気持ち故に、いいところもあったよねって、励ましてしまうことはよくあると思います。でも本当は、当人が感じていることが答えだし、悲しいこと自体がない方がずっとよかった。不幸中の幸いを、当事者以外の人が積極的に探すのは危険なことだなと感じるようになりました。まずはいったん相手の辛さを受け止めるところから始めないと間違ってしまう。

引き算のできない表現者

――ゆっきゅんさんにとって「重大」な価値観を教えてください。

 私の中で「面白いこと」は、すごく大事な基準ですね。

 私は面白いことが好きだし、面白いことしかしたくないし、面白いって言われたいんです。一番不安なのはつまらないことです。コラムなども書けたらすぐに友達に送ります。「これ本当に面白いかな?」って。

――ゆっきゅんさんが今後目指す「面白さ」とはどんなものでしょうか。

 私は過剰でキャンプなものを面白いと思うんです。だからさりげなくできない、慎ましくなんてならない、「引き算のできない表現者」として徹底的に盛って、面白いことがしたいですね。

 それから、聞いたことがない、見たことがないものってやっぱり面白い。既存の価値観だけでやっているものはつまらないですね。マーケティングだけでできているもの、方程式通りのものには、すごく牙をむいています。

 でも奇をてらいたいわけではなくて、事実が面白い。「DIVA ME」の歌詞にも書きましたが、「真実が最高」なんです。真剣に取り組んでいないものはつまらないですね。冷笑へのアンチテーゼだと思います。

「DIVA ME」は、本当に自分に起きていることを書いています。天井を見ているとか、代引きが払えないというのはただの実話(笑)。自分の気持ちをわかってほしくて書いたわけではないので、逆にこの曲がこんなに普遍性をもって届いていることが本当にうれしいです。私みたいな人はやっぱりいるんだ! と思えました。もっとたくさんの人に聴いてほしいので、今後は「わかりやすく伝える」という壁にもぶつかっていくと思うんですが、噓はつきたくないですね。

 それから、その人固有の切迫が昇華されているものって面白いですよね。切実な気持ちは泣けるバラードにだけあるものではない。「DIVA ME」も私にとっては切実な曲です。

「構想26年」は噓のない実感

――改めて、この7年間を振り返ってみていかがでしょう?

 どの部分も、かなり「DIVA Project」につながっている実感があります。やはり「電影と少年CQ」の活動で得られたものはすごく大きいですし、東京でたくさん行ったライブ、見た映画にも影響を受けています。大学や大学院で学んだこともつながっていますね。歴史に敬意を払い、きちんと研究する姿勢が身につきました。何かを発表する時には、絶対に先人がいるから、その人の仕事を見ておくべきだなって。「DIVA ME」を初披露したとき「全てがこれにつながっていたんだ」と全身で感じて、構想26年かかったプロジェクトなんだって本当に思いました。

 全部つながっているとも思うし、やっと始まった気もします。

――最後に、今後の展望をお聞かせください。

「DIVA Project」は私がなけなしにもほどがあるような貯金で、なんとかやっているだけのプロジェクトなんですね。だから活動を継続させていくために、お金をちゃんと稼いでいきたいです。「DIVA ME」のMVはどうにか安っぽくならないように工夫して撮ったんですが、もっと予算がある状態で撮ってみたいですし(笑)。それから、ミニアルバムを制作中です。

 この活動でやりたいことは思いつくだけでも100個はあるので、ひとつひとつ満を持してやっていきたいです。でも何より、「自分のままで個人として生きることを楽しく面白く肯定して鼓舞していく」というコアを忘れず、私のやり方で届けることが出来るいちばん遠くの人のところまで、必ず届けたいですね。ずっとゆっきゅんに出会いたかったと思ってくれている人が、まだまだいるはずなんです。だから、頑張ります。

(撮影=平松市聖/文藝春秋)

(ゆっきゅん/別冊文藝春秋)

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