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長嶋一茂と駒田徳広が甲子園で対決…阪神優勝を予言する映画「ミスター・ルーキー」がいろいろすごい

文春オンライン / 2021年9月19日 11時0分

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佐藤輝明 ©時事通信社

 いきなりですが、先日衝撃のデータを見つけてしまいました……。70年以上あるセ・リーグの歴史、今までのペナントレースで「阪神1位 巨人2位」のシーズンは一度もないのです。しかし、「巨人1位 阪神2位」は16度もある。つまり、阪神はペナントレースが宿敵巨人と一騎打ちになると、0勝16敗というわけです。最初に見た際は、なにかの間違いだと思いました。これはこれで逆に難しいのではないか、とも。

 こんな不吉なデータを見つけましたが、いいニュースも2つあります。1つは矢野タイガースが首位を走っていること。一度失速したように思えましたが持ち直し、9月18日時点で2位ヤクルトに2.5ゲーム、3位巨人に3.5ゲーム差をつけています。

今年の快進撃と重なる、縁起のいい映画『ミスター・ルーキー』

 もう一つのいいニュースは、今年の快進撃と重なる、縁起のいい映画を発見したことです。その名も『ミスター・ルーキー』。星野監督の就任元年で盛り上がった2002年に公開されたことや、社会人野球の大阪ガスに所属していた頃の能見篤史選手(映画の中でも阪神の14番をつけていました)が出演していることでご存じの方もいらっしゃると思います。私も2003年の地上波での放送を見たような気がするのですが、その後すっかり忘れていました。しかし、最近この映画の主演俳優がテレビに出ずっぱりなことで記憶の外側から蘇りました。

 ビール会社に勤めているこの映画の主人公・大原幸嗣は、謎の整体師にして阪神の出入りにするスポーツ用品業者「楊さん」との出会いによって、プロ注目球児だった頃に負った肩の故障を克服し、阪神に入団します。大原は、昼は会社で働き、夜は会社に副業がバレないように覆面をかぶり、新人守護神「ミスター・ルーキー」としてライバル「東京ガリバーズ」を倒し、優勝に貢献するまでの軌跡が描かれています。大谷翔平選手もビックリの二刀流ですね。 

 19年前の映画ですが、今年こそ巨人との優勝争いを制する「17度目の正直」を予言しているかのように思えます。なにしろタイトルが『ミスター・ルーキー』ですから。伊藤将司投手、中野拓夢選手、そしてなによりドライチ・佐藤輝明選手の3人の活躍によって、首位を快走する今シーズンにピッタリではないですか。まだ、阪神球団の歴史が持つ巨人に対する負のイメージを持っていない新人たちが恐れることなく巨人に立ち向かい、新しい歴史をつくるだろうというメッセージに思えます。

 また覆面をかぶって登場した大原のように、3打席連続ホームランや場外ホームランなど、ド派手なデビューシーズンを送っている佐藤選手。現在2軍調整中ですが、大原にも同じく登録抹消されていた時期がありました。会社だけで大変なのに、阪神のストッパーを「やらされている」ことを苦々しく思い野手に八つ当たりをしていた大原が、監督のきつい言葉や妻のゲキから野球を見直し、負けの許されなくなった終盤戦の活躍につなげました。佐藤選手が野球をやらされているとは思っていないと思いますが、この機会に心技体を見直し、復帰後「ミスター・ルーキー」と呼ばれるような活躍を見せられるか、これも優勝へのひとつカギになると予想します。

 先述したこの映画の主演俳優は、よりにもよって、宿敵巨人軍の象徴にしてミスタープロ野球のご子息。そして自身も巨人でプレーしていた。つまり長嶋一茂さんです。この映画で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した一茂さんが、阪神の快進撃と合わせるようにタレントとしてブレークしていることも、何かの暗示に思えます。ちなみに、ライバルのガリバーズの主砲、武藤秀吾は駒田徳広さんが演じています。現役時代さながらのスイングと191cmもある長身は、ライバル役にはピッタリでしたが、「長嶋一茂と駒田徳広が、投手と打者として甲子園で対決している」と思うと、ちょっと不思議な気持ちになれます。

この映画で一番重要だと思う点とは

 この映画の状況をメタ的に捉えると、「元巨人の選手が、阪神の優勝の立役者となる」とも言えそうです。同じように巨人から移籍してきた選手がいたら、彼がキーマンになるに違いない!

 とはいえ、現実では宿敵同士である巨人から阪神への移籍、そしてその逆も稀で、70年の歴史の中で5度しかない(そのうち1つが江川卓選手と小林繁選手のトレード)。移籍した途端に活躍されたら、ファン心理としては堪らないでしょうから、避けたくなる気持ちもわかります。しかし、昨年11月に貴重なそのうちの一度、両球団間16年ぶりのトレードで、阪神に移籍してきた選手がいるではないか! それが山本泰寛選手です。

 余談になりますが、山本選手の天然ぶりが、先日CBCテレビさんのYouTubeチャンネル「燃えドラチャンネル」で、井端弘和さんに暴かれていました。出塁後サインを見ることに精一杯で、つけていたバッティンググローブを外すなりコーチに向かってを放りなげたり、「ヘッドスライディングするな」というチーム方針が出た直後にヘッドスライディングしたりというエピソードに、おっちょこちょいの私は親近感を持っています。

 若手の活躍に引っ張られるように走ってきたチームですが、秋は経験が問われるはずです。「バテたときに、どういう調整をすればいいのか?」「失速してきたチームの雰囲気を盛り上げるには?」、経験はその答えを教えてくれますが、若手揃いのタイガース、ベテランはそれほど見受けられません。山本選手はまだ年齢的にベテランとはいえないまでも、巨人での優勝争い経験を、若トラ軍団に注入することを期待したいです。

 ここまで、『ミスター・ルーキー』から吉兆を読み取ってきましたが、「こじつけじゃないか?」「だからなんなんだ?」とお思いの読者の方もいらっしゃると思います。私はこジンクスをすごく気にする方なのですが、この映画で一番重要だと思う点は、実はそこではありません。「阪神がG(ガリバーズ)を倒す」というストーリーを取っていることです。

 巨人が数々の重要な一戦を勝ち抜いてきたことでプロ野球史を築いてきたことと対称的に、阪神タイガースは悲劇的な敗戦で、プロ野球というドラマを引き立てる場面が多かったです。象徴的なのは、天覧試合での一茂の父茂雄にホームラン。終生「あれは絶対ファール」だと言いつづけたという村山実投手の逸話を聞いて、胸を震わせない野球ファンはいるのでしょうか。また、巨人のV9がかかった1973年の「世紀の落球」と優勝決定戦の敗北。1992年、ヤクルトに競り負けるきっかけとなった「幻のサヨナラ弾」。最近では2008年の「メークミラクル」など……。(巨人ではパッと思い浮かびませんでした。「10.8決戦」も中日が負けたし……)。そこも魅力だ思いますが、そんなこと言うと阪神ファンには叱られますね。すみません。

 阪神と巨人の優勝決定戦の脚本を書くとき、悲劇のヒーローに仕立て上げるほうが、イメージしやすく画を描きやすいようにも思えます。しかし『ミスター・ルーキー』は、その流れに乗らず、前例のないストーリーを描きました。「阪神が勝ったっていいんじゃないのか」というように。

 ラストのガリバーズとの優勝決定戦、どちらも当時現役の藪恵壹投手と矢野捕手のバッテリーでスタートした試合をぜひ観て、巨人を倒すイメージを膨らませておくことをおすすめします。私も中日ファンではありますが、その気になってきました。

 最後にひとつ、阪神ファンに聞きたいことがあります。パ・リーグでロッテが好調なことには、嫌な予感を持つものなのでしょうか?

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(須賀 紘也)

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