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反省文を出したくないと絶叫、傍聴席から無罪コール…裁判ウォッチャーが見た「ヤバい裁判」

文春オンライン / 2021年9月9日 17時0分

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©iStock.com

 今年の8月24日、福岡地裁の101号法廷で行われた判決公判で被告人である特定危険指定暴力団・工藤会のトップ2人に不規則発言があったそうです。

 私はその裁判を傍聴してないので報じられた内容が事実であればという前提になりますが、死刑判決を言い渡された工藤会トップの野村悟被告は「公正な判断をお願いしたんだけど、全部推認、推認。あんた、生涯このこと後悔するよ」と足立勉裁判長に対して大きな声で怒鳴り、無期懲役を言い渡されたナンバー2の田上不美夫被告は「酷いね、あんた、足立さん」と述べたらしいです。

 伝える新聞社ごとに多少の違いがあって(だからこそ裁判傍聴はボイスレコーダーの録音を認めるべきなのに!)正確な情報がどれなのか判別がつかなかったり、どんな雰囲気でどれくらいの声量だったのかも分からないので被告人2人がどの様な意図で発言をしたのかは分かりません。

 が、判決を言った後に被告人が喋る機会はないので不規則発言になるのは間違いありません。どんな狙いがあろうと手続き上喋っちゃダメなんです。下手すりゃ法廷から追い出される場合もあります。この裁判でも被告人の不規則発言の後、足立裁判長が2度に渡って退廷命令を出したそうですし。

 裁判官が自分の主張を全く認めてくれない判決文を朗読していたら何かを言いたくなるのは共感できますが、判決で不規則発言する被告人って意外と見ないんですよね。個人的には裁判傍聴を1999年から続けているので今まで2万件くらい刑事裁判を見てきていますが、パッと思い浮かびません。たまたま私が不規則発言の裁判を避けて傍聴している可能性はありますが……。とにかく、この裁判は珍しいパターンと言えるのではないでしょうか。

 と言う訳で、被告人が不規則発言をして退廷命令を出された数少ない珍しい実例を4つ紹介します。

「反省はしてるけど、反省文は出したくねぇんだ!」

〈その(1) 2016年9月29日 罪名:公然わいせつ 被告人:住居不定無職の男性(34)〉

 起訴されたのは、東京都内のケータイショップ店内で女性店員に対して被告人が陰茎を示したという内容。

 被告人は入廷して来た時からダルそうにしていて、被告人質問では非常に投げやりな態度なんです。

弁護人「調書には痒いから陰部を出したって書いてあるけど、痒くなかったら出してなかった?」

被告人「はい」

弁護人「でも女性店員に見せたのは何故ですか?」

被告人「前回捕まった時は警察に風俗行けって言われて行ったら金抜かれるし、どこ行ったらいいんだよ! 飲み行けばぼったくられるしよー!」

弁護人「今回お母さんに連絡取れて、今後についての手紙出しましたよね?」

被告人「出したけど、疲れちゃったんだよ……社会出てもゴミだし」

弁護人「今は住む所も仕事もないけど、生活保護の申請出してちゃんと生活やり直しましょうよ。反省してるって言ってたじゃない?」

被告人「反省はしてるけど、反省文は出したくねぇんだ!」

 弁護人と上手くいってないのか質疑応答も上手くいかないんです。

 この後検察官が懲役4月を求刑です。そして弁護人からの弁論。

弁護人「反省文こそ提出していませんが、被告人は深く反省しており……」

被告人「もういいんだよ!」

裁判官「静かにして下さい」

弁護人「しばらく連絡を取ってなかった母親とも……」

被告人「俺なんか社会戻っても同じだって! 疲れちゃったんだって!」

裁判官「これ以上発言すると退廷命じますよ」

被告人「退廷でいいよ」

裁判官「退廷」

 と、ちゃんと会話になってる不規則発言での退廷命令パターン。ちょっと厭世的な言動をする被告人で裁判自体どうでもいいって思いがあったのかも知れませんね。

「2回ですよね」「え、1回でしょ?」決して引かない2人

〈その(2)2021年8月23日 罪名:詐欺 被告人:無職の男性(48)〉

 起訴されたのは、東京都内のダンススタジオで堀内孝雄さんの息子を名乗ってチケット代として2万5000円を騙し取ったという内容。

 似た様な前科があって、谷村新司さんの息子や加山雄三さんの息子をかたってチケット代を騙しとる事件で受刑しているという常習犯なのです。法廷でも堂々としてなんとも人を食ったような態度。検察官からの被告人質問でも

検察官「何件くらいやってるんですか?」

被告人「4桁いってんじゃないですか」

検察官「よ……4桁……!? 今回出所してからですか?」

被告人「いや、前のも含めてね」

検察官「今回出所した後は何回やりました?」

被告人「70~80回ありますね、ほぼ毎日なので」

 と全く悪びれてない感じ。そしてアクシデントはこの後です。

検察官「今まで2回正式な裁判受けてますよね?」

被告人「え? 1回でしょ?」

検察官「いや、2回ですよ。平成28年と平成29年」

被告人「裁判1回ですよ」

それは言ってて欲しいんですけど…

 検察官が間違った証拠を持ってくることはないだろうけど、誤字脱字の可能性もあるし、被告人が忘れちゃってる可能性もあるし、どっちが正しいのかは分かりません。が、検察官もしつこく確認したんです。

検察官「記録上は2回なんです! 今回が3回目!」

被告人「2回なんかやってないから」

検察官「う~ん……以前行われた裁判で、もう二度とやりませんって裁判官に誓ったでしょ?」

被告人「言ってませんよ」

 それは言ってて欲しいんですけどね。

検察官「言ってないんですか? じゃ、次の裁判では何て言いました?」

被告人「だから、1回しか裁判やってないから!」

検察官「同じことやれば刑務所に入るって思いませんでした?」

 と質問した時に、被告人の溜まりに溜まった怒りが爆発したようで、

被告人「こんな所で暴れちゃうよ! 刑を延ばしたっていいんだから!」

 と突然証言台を前に倒したんです。バターンと大きな音が響き、ざわつく傍聴席。そして裁判官が冷静に

裁判官「退廷を命じます」

 これは不規則発言というか暴れての退廷命令になりますね。個人的にも証言台を倒した被告人は初めて見ました。それにしても検察官もなんでそんなに1回と2回の返答に拘ってたんですかね。

漫才のように“合いの手”が…

〈その(3)2017年3月29日  罪名:偽計業務妨害 被告人:清掃員の男性(59)〉

 起訴されたのは、勤務先のホテルに15回無言電話を掛けて業務の妨害をしたという内容。

 被告人は勤務先であるホテルに正当な理由があって電話を掛けたという主張で、検察官に不満を抱いているらしい。そして検察官が冒頭陳述を朗読している時のこと。

検察官「被告人は被害会社のホテルに清掃員として勤務しており……」

被告人「なーにが被害会社だよ」

検察官「犯行の1年前から計396回の電話を掛けて……」

被告人「話があるから掛けてんの!」

検察官「前科は1犯で、本件と同じホテルへの業務妨害です。判決は……」

被告人「妨害にもなってないって!」

 冒頭陳述の隙間に合いの手のような不規則発言を差し込む被告人。テンポの良い漫才のよう。すると

弁護人「ね? 自分の番が来たら話しましょう」

 と弁護人が被告人の後ろからアドバイスです。しかし被告人は言う事を聞かず

被告人「この前担当になったばっかで何分かんの?」

弁護人「検察官を攻撃しても意味ないから……」

検察官「裁判官! これで3回目ですが退廷命令を」

裁判官「では、次喋ったら退廷で」

被告人「検事がウソばっか。もう死刑でいいよ!」

裁判官「被告人!」

弁護人「静かに聞こう!」

裁判官「被告人に退廷を命じます。退廷して下さい」

 と執拗な検察官への文句で退廷命令。被告人の言い分が正しいのか間違ってるのか以前の問題ですからね。

「むーざーい!むーざーい!」傍聴席からまさかの“コール”

〈その(4)2004年9月3日 罪名:建造物損壊 被告人:書店店員の男性(25)〉

 起訴されたのは、東京都内の公園のトイレにペンキで落書きしたという内容。

 第一審では懲役1年2月執行猶予3年という判決が言い渡された事件で、被告人は納得いかないと控訴しての判決公判。傍聴席はほぼ満席で、座っているのは被告人の支援者。きっと逆転無罪の判決を期待していたのでしょう。

裁判官「主文……本件控訴を棄却する」

 と主文を述べると「ん?」「え?」という戸惑ってる小声が傍聴席から漏れました。控訴審判決は「有罪」とか「無罪」とは言わないのでピンと来ないんですよね。裁判官が判決理由を述べ終えると、誰が音頭を取ったのか

傍聴席「む~……ざーい。むーざい」

 とコンサートでの「アンコール、アンコール」のリズムで手拍子付きで合唱が始まったのです。もちろん傍聴席は私語禁止。

裁判官「傍聴席は静かにして下さい! 退廷して下さい!!」

傍聴席「む~ざーい!む~ざーい!」

 すると30秒程で警備員7人が法廷にやって来て、傍聴席にしがみつきながら「無罪! 無罪!」と不規則発言を止めない傍聴人を1人ずつ取り押さえるという珍しいスタイルで閉廷となりました。被告人じゃなく傍聴人の不規則発言というレアケースです。

 仮に不満があったとしても、ルールに則って裁かれたいものですね。

(阿曽山大噴火)

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