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「551HORAI」の商品のなかで毎日最初に売り切れるのは“豚まん”ではなく…意外と知らない“隠れた実力商品”とは

文春オンライン / 2021年9月28日 6時0分

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写真提供=株式会社蓬莱

 メニュー自体の魅力に加え、創意工夫を積み重ねたサービスで、地元の期待に応え続ける「ローカルチェーン」。厳しいコロナ禍という状況を乗り越え、ファンが増え続ける納得の理由とは――。

 ここでは、ジャーナリストの辰井裕紀氏の著書『 強くてうまい! ローカル飲食チェーン 』(PHP研究所)の一部を抜粋。店舗を展開する関西圏在住の人はもちろん、出張で関西を訪れた人たちからも愛される「551HORAI」の歴史・魅力、そして隠れた人気商品を紹介する。(全2回の1回目/ 後編 を読む)

◆◆◆

看板メニュー「10円カレーライス」から「豚饅頭」へ

 1945年、大阪・戎橋に台湾出身の3人で開業した「蓬莱食堂」から、店の歴史がスタートする。初期の看板メニュー「10円カレーライス」の勢いがしだいに衰えるなか、テコ入れ商品として投入したのが、当時神戸・元町で愛されていた「豚饅頭」だった。

 創業者・羅邦強氏が大阪の人に合う味付けで1946年に店内メニューとして売り出したところ、たちまちヒット商品になる。

 豚まんの実演販売が始まったのは、1952年。当時はどこも持ち帰り用の箱代を取るのが当たり前だったが、羅邦強氏は箱代を無料にすることで、手軽さが大いにウケた。

 さらに木折の箱を紙折に変更したり、大阪の飲食店では初の自動ドアを導入したり、革新的な取り組みを次々と行なった。

 店は軌道に乗ったが、創業者たちに独立の機運が高まる。

 火災で店舗が全焼したことをきっかけに、 1963年に分離独立。そのうち羅邦強氏による「蓬莱角店」が、のちに店名を「蓬莱」に変え、現在は「551蓬莱」として繁栄を築いている。

「551HORAI」快進撃の歴史

 ちなみに店名の由来は、当時外国産の555(スリーファイブ)というタバコを吸っていた羅邦強氏が、「数字なら覚えやすいし万国共通だ」とひらめいた。当時の本店の電話番号が64 -“551”番でもあり、「味もサービスもここが一番をめざそう」として551と名付けた。奇しくも意味は後発の「Co Co壱番屋」と似ている。

 1957年に大阪そごうから百貨店での営業を開始。当初は比較的目立たない場所での販売を強いられた551であったが、目を見張る売り上げをコンスタントにあげて信頼を獲得し、一等地を提供してもらえるようになる。ここで、大阪と周辺の百貨店や駅構内へと破竹の勢いで店舗網を一気に広げた。

 環境の変化も追い風となる。

 2000年前後から始まる大阪周辺の交通網の発達が、食材のスピーディーな配送を可能にし、さらに関西での勢力を拡大した。

「具材は2つ」だから、スケールメリットを最大化できる

 気になるその作り方は。

「テイクアウト部門の構成比は、豚まんが約65%。焼売が約15%を占めます。つまり、80%以上の商品を豚肉と玉ネギから作る。一度により大量の食材を仕入れるから、コストを抑えられるのです」

 じつは豚まんの食材は、「豚肉」と「玉ネギ」のみ。同じ原材料で、調味料の配合を変えて豚まんと焼売でまったく違った味の商品に仕上げる。

 とくに鮮度を重視する豚まんは、「当日生産・当日販売」が基本。販売する日の朝に、工場で原材料を加工する。

 豚まんにはミンチ肉を使うのが一般的だが、551蓬莱では5ミリほどのサイコロ状にカットした豚肉を使い、食感とうま味を出す。使用する部位は次の3つ。

・バラ……脂身が多い

 

・腕……赤身が多い

 

・モモ……脂身と赤身のバランスが取れている

 3つの部位の豚肉を混ぜ合わせて、うまみある味に仕上げる。

 玉ネギも同様に、生のままサイコロ状にカット。嚙んだときに食感をより楽しめる。

 大阪府南部・泉州産の玉ネギを使っていたが、宅地化により生産が縮小。明石海峡大橋が開通したのを契機に、陸送が可能な淡路島産中心に切り替えた。淡路島産の玉ネギは糖度が強く厚みもある。時期的に調達しづらい場合も、淡路島産と同等レベルを仕入れる。

 その豚肉と玉ネギに、醬油、砂糖、塩などの調味料、でん粉を混ぜれば餡ができる。もっとも、その配合の割合は企業秘密だ。

約60店舗までにとどめるワケ

 その包容力ですべてを包み込む「皮」の製法を見よう。

 まず小麦粉やイースト菌などから作る生地は、時間とともにどんどん発酵していく。そのため、発酵のピークをコントロールすることが重要だ。

 その秘密兵器として、工場から店に運ぶ時間に応じて、発酵の進み方が異なる3種類の生地を用意し、店で切り分ける。

・約1時間で切り分けられる…お湯で練った発酵の早い生地(スグ)

 

・約2時間で切り分けられる…常温の水で練った発酵速度が普通な生地(フツウ)

 

・約3時間以上で切り分けられる…冷水で練った発酵の遅い生地(オサエ)

 これなら、いずれの生地もちょうどよく発酵のピークを迎えられる。さらに各店の店長によって、

 ・すぐに使いたいとき、お湯で練った生地を注文する

 

 ・あとで使いたいとき、冷水で練った生地を注文する

 と使い分ける。

 ただし冷水で練った生地ですら3時間ほどで発酵するため、工場から車でおよそ150分以内で行ける場所にしか店舗は置けず、トラブルなども考慮すると滋賀にある草津近鉄店あたりが限界になる。

 生地をおいしく安定提供し、本部としてあらゆる要素をくまなく管理できる上限は60店舗程度とみて、その範囲内で商売する。目の届く範囲でお店の質を守るからこそ、全国には出店しない。こうして、関西での551ブランドが強固になった。

 遠方の百貨店の催事などに出張販売する際は、生地の粉とミキサーを持って行き、その場で生地を作る徹底ぶりだ。

 最終的には、包む人の感覚が頼り。生地を触ったときに「ちょうどいい」「まだ早い」と最終チェックをして、熟練の技で包んでいく。生地を包むときにできる「ヒダ」を12~13本にするのがコツ。見た目がよくて食べやすいほか、「餡がはみ出すことなく、一番ふっくらと蒸し上がる」から。

 餡が中心に置かれていることも重要だ。そんな風に、見た目も中身もいい、うまくできた豚まんを「美人豚まん」という。

 ちなみに、豚まんの下に敷く「ザブトン」は松の木など国産木材でできており、蒸したときの香りをひそかに演出する。

豚まんにからしが付くのは551が最初?

 標準装備のからしは、関東人にはあまりなじみがない。だが関西の豚まんにからしが付くようになったのは、551蓬莱がきっかけとの説がある。もともと551は中華食堂だったので、お客さんが卓上のからしを付けていて豚まんに合うということで、「テイクアウトでも付けよう」となったとか。

 からしに保存料は入っておらず、毎日工場からできたてで店に入荷する。冷蔵庫にストックする関西人も多いが、数日のうちに食べないと変色してえぐみが出るそうだから、早めに食べ切ってほしい。

 じつは初夏の一定期間だけ、豚まんにポン酢が付いてくる。

 「夏の暑いときにもともとポン酢を付けるお客さんが多くて、社内で試したら『さっぱり食べられる』とGOサインが出ました」

 市販のポン酢はなかなか豚まんに合わず、オリジナルで作った。初夏の1ヶ月に限定しているのは、自社で作るゆえの生産ラインの都合から。

 さらに、九州では1年中豚まんをポン酢で食べる習慣があり、九州で物産展を行なう際には、代用品としてお酢の入った餃子のたれを渡すこともある。

隠れた実力派アイテム「甘酢団子」

 隠れた人気アイテムが「甘酢団子(10個入350円)」だ。

 お店のレジ横に積まれていて、関西の食卓の一品として食べられている。物産展ではお目にかかれないレア商品だ。

 「通販でも買えないので、関西の人しか知らないかもしれません」

 工場出荷の商品ながら、手作業で肉だねを丸めて、スプーンですくって揚げている。そのため空気が入った団子になり、ふわふわでやわらかい食感だ。

 「仕事から帰ってきたお母さんも、甘酢団子に少し野菜を合わせるだけで立派なおかずになります。育ち盛りの子どもがいるご家庭に人気です」

 共働きが主流の現代らしいヒット作であり、551の商品のなかで毎日最初に売り切れる。

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(辰井 裕紀)

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