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小泉進次郎さんに伝えたい再生エネルギー周辺の雑感

文春オンライン / 2021年9月13日 6時0分

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©️iStock.com

 コロナ禍にもかかわらず、投資界隈では急速に「再生エネルギーが次に来る」ということでバブルみたいな状態になっております。

 湾岸のタワーマンションや港区中央区の物件を買い漁っていた資産バブルの動きがようやく一服すると、低成長の日本経済でも手堅くお金が出るだろう事業投資にマネーが向かうのは当然であります。ただ、いわゆる商業施設への投資は、某GINZA SIXや阿佐ヶ谷のような閑古鳥のすみかに代表されるように「ちょっとでもハズレの案件」がもたらすリスクが大きすぎ、また、どうもこれからオフィスの空室率がもう少し上がりそうだということで、実に微妙なことになっております。

 なので、次なる新天地を求めるとなると、これらのエネルギー関連に手を出そうというところも増えるわけですよ。

ただいま出火中、テクノシステム社の事例

 一方で、先般熱海市で発生した土砂災害では亡くなった方まで出してしまった太陽光エネルギー関連では、いわゆるメガソーラー開発案件が死屍累々です。メガソーラープロジェクトを始めるぞ、と自治体と握ったというので投資資金を集めているはずが、実は地元住民との折り合いがつけられておらず反対運動まで勃発して頓挫した挙句、投資資金を「事業管理費として支出した」と称して全額近くを溶かしてしまう半分詐欺みたいな案件まで出ました。

 それらの問題の一つが、いままさに出火しているSBIグループのSBIソーシャルレンディングから融資を受けていたテクノシステム社です。もともとは、架空の太陽光ソーラー事業をでっち上げ、信用金庫・信用組合などの金融機関にうその書類を提出して約11億6500万円の融資をだまし取ったとして、東京地検特捜部がテクノシステム社の経営者を摘発した事例ですが、まだまだ余波はあります。

クリーンな再生エネルギーに関わるダーティーな顔ぶれ

 その前哨戦として、公明党元議員・遠山清彦さんや、次期衆院選に出馬せず引退を表明した太田昌孝さんなど、依頼された中小企業への融資を仲介した嫌疑で騒がれている筋の話に繋がっていきます。クリーンな再生エネルギーのはずなのに、関わっている人たちがおおむねダーティーそうに見えるのはなぜなのか、思わず座禅を組んで瞑想したくなるような事態に立ち至るのであります。

 そのテクノシステム社の経営者と我らが元総理・小泉純一郎さんが夢の特別対談を果たし、そのご長男でタレントの小泉孝太郎さんが2019年ごろから広告塔を務めております。環境大臣に小泉進次郎さんが就任したことも含めて考えると、その再生エネルギー方面というのは小泉家の皆さんのファミリービジネスなのかなと思う人も少なくないかもしれません。

 小泉家のご清栄、ご発展を、心より祈念しております。

石油も鉱物もなければ、平地も少ない我が国

 で、私も情報法制研究所という一時期はLINE社の手先と中傷されたシンクタンクや、大手シンクタンクの用心棒のような扱われ方をすることもある次世代基盤政策研究所というところに所属しつつ、偉そうな先生にこき使われつつ日本の再生エネルギーの未来について少しずつ勉強しながら、具体的な政策にどう着地させるのか研究しています。

 一連の議論を見ていて思うのは、石油も鉱物も資源がほとんど産出されない我が国日本は、再生エネルギーにおいても実にこう、極東の弱者だなということです。ただでさえエネルギーも鉱物資源もないのに、今回はさらに再生エネルギーでも「適した場所がない」とかいう駄目な土地であることが分かってしまっておるのですよ。

 まず、端的に言って国土を見渡してみると山ばっかりで平地が少ない。その平地を、1億人以上の人口が細かく分け合って住み、山も急峻で、多雨なのに水源管理しないとすぐに水不足になってしまう残念な国土の形態を取っています。しかも太平洋側すぐにはプレートの沈み込みが日本海溝を作り、地震の巣になっていて自然災害が他の地域に比べて格段に多いわけですよ。定期的に台風は来るわ、不安定な雨季はあるわ、夏暑く冬寒いので、快適に過ごすためには多くのエネルギーが必要です。そのエネルギーを、火力・原子力から再生エネルギーにしようとなると、難題が沢山立ちふさがります。

 そうなると、日照時間の多そうな地域に太陽光パネルをたくさん置いて再生エネルギーだよと言っても置ける平地が少なすぎて山を切り開いたり、何かを埋め立てないといけない。その結果が、熱海市の土石流にもつながっているのだと思うと、再生エネルギーは大事だからと山を削って土地を造成する恐ろしさもまたご理解いただけることでしょう。

断熱については後進的もいいところ

 さらには、温暖化の影響によって多少改善したとはいえ豪雪地帯が多く、住戸も断熱が行き届いていません。もともとは日本は高温多湿な夏を凌ぐために風通しの良い家を良しとし、冬寒いときは何か燃やしながら厚着すればどうにかなるでしょという文化だったために、最近ようやく住宅の断熱についての議論が始まるほど、この分野では後進的でした。

 その結果、越冬のために自宅でエネルギーを使い、また、街中で除雪が必要な地域は、ただそこに住んでいるというだけで二酸化炭素をたくさん出し、温暖化の原因にされてしまいます。地球環境のために寒いところに住むなと言われると申し訳ない気分もしますが、例えば瀬戸内海に面した温暖な地域と比べると、計算によっては寒冷地に住む日本人は2倍近く温暖化ガスを出してるという試算もあります。

採算が合う地域はごくわずかの風力発電

 そして、日本周辺は実はあまりちゃんと風が吹いてくれません。非常に残念なことです。日本各地で最後の切り札的に洋上風力発電の試験実証なんてのを沢山やってますが、商業ベースでどうにか採算が合うのではないかと見込まれるのは秋田県・能代市や三種町及び男鹿市沖ぐらいで、それ以外のところはなかなか厳しいわけですよ。

 仕方がないので、そういう有望な地域に洋上風力発電プラントをたくさん設置しようと頑張る方向でいろいろと話が進んでいますが、それでもEUの風力発電の雄たるノルウェーやデンマークなどと比べると、とてもじゃないけど日本人の全人口や産業をある程度カバーできるような発電量を確保できそうにない。もちろん、これから技術開発もするだろうし投資も政府や民間でやっていくとは思いますが、そもそも採算ベースに現段階で到底合わないものを、収益リターンを期待しておカネを集めるファンド形式でやっても魅力のないビジネスになってしまいます。

菅直人太陽光バブルのツケが発生

 そうなると、必然的にFIT(固定価格買取)制度のような政府が民間で発電した電力を公的事業として包容して、電力会社に買わせる方式でしか介入ができなくなっていきます。FITと言えば、それこそ東日本大震災が発生して、東京電力・福島第一原発事故で当時の旧民主党政権のトップであった菅直人さんが、ソフトバンクグループの孫正義さんの説得によって再生可能エネルギーの買取額をキロワット当たり42円という途方もなく高い価格で握ってしまったために、代替エネルギー開発のためには一番投資を集めなければならなかった時期に、みんな太陽光発電に殺到して大変なことになったわけです。

 再生エネルギーに切り替えなければならないタイミングで、ふと気がつくと太陽光以外は研究や開発が進んでいなかったことに気づいて、仕方なく原子力発電に頼って再稼働を検討しなければならないという本末転倒になります。

 いま日本各地で放棄されてしまったり地滑りなどの事故を起こしているメガソーラー事業は、おおむねこれら菅直人太陽光バブルで適当な工事をして品質の低い太陽光パネルで事業展開を全国でやらかしたツケが発生しているとも言えます。

再生エネルギー開発のために、都市機能立ち上げが必要に

 そして、メガソーラーであれ洋上風力発電であれ、地熱発電や潮力発電その他さまざまな再生エネルギーの可能性を考え、一個一個積み上げていくとしても、今度はそういう再生エネルギーを担う地方をどうやって再興するかという問題に突き当たります。

 前述の秋田県では、秋田市から離れた地域に洋上風力発電を担う事業所を作るにしても、相応にスキルや知識を持った従業員が800人近く、30年以上にわたってこれらの洋上風力発電プラントの運営・維持・管理をしていかなければなりません。では、「それだけの技能者を秋田県で集められるか?」と言われるとNOなので、各地からかき集めてきて働いてもらう必要があるのですが、当然結婚もするだろうし、お子さんも生まれるだろうし、病気もするだろうし、お買い物や文化的生活もするぞとなると、道路から学校から病院からすべての都市機能を新たに再生エネルギー開発のために立ち上げる必要が出てきます。

 まだ日本が元気で炭鉱ひとつ立ち上げるのにみんなこぞってやってきた時代と異なり、少子化で、また疲弊した地方から都市へ人口が流れてくる現代において、再生エネルギーを担う技術者が家族を抱え、子どもの教育をし、将来就職活動するよといって地元にいい働き口があるかどうかまで考えてあげなければ、地方で再生エネルギーのプラントひとつも興せないことになります。

突然「良い風が吹いているから」と言い出した小泉進次郎さん

 ある日突然、ここは良い風が吹いているから再生エネルギー特区としてスーパーシティを作り、日本のエネルギー政策を転換するんだよと小泉進次郎さんが言い出し、レジ袋を有料化しながら「このエネルギー基本計画案では、2030年度の再生可能エネルギーの導入目標を『36~38%』とする」とか言われて、ほんとお前どうするんだよと思うわけですよ。

 再生エネルギーの割合を増やし、温暖化ガスを削減して、世界的な気候変動がより破壊的なことにならないようにする、という方向性には誰も反対しません。ただし、それがどういう手順で、いかなる実現可能な目標設定であるべきかについては、本当はきちんと科学的根拠やプロジェクト上の達成スケジュールを組み合わせて考えていかなければなりません。そこにイデオロギーが入ってきたとか、あるいは海外の環境活動家にいい格好をしたいとか、ファミリービジネスが視野に入るとか、そういう話があると国民生活にダイレクトに影響する電力価格が上がり、産業のコストに跳ね返り、なかなか大変なことになるでしょう。

必要なのは、バズワードを作り流行に乗っかることではなくて

 さらには、排出する二酸化炭素を削減するだけじゃなくて、出してしまった二酸化炭素をアミン溶液なども駆使しながらかき集めて貯蔵したり、地中深く井戸を掘って排出されないよう格納するようなCCS(Carbon dioxide Capture and Storage=二酸化炭素回収・貯留)技術も視野に入れて、公的資金で推進する必要も出るでしょう。昨今では、空中の二酸化炭素を取り込むというDAC(Direct Air Capture)なる技術に2兆円もの投資が集まってみたものの、今度は「そのかき集めた二酸化炭素をどうするつもりなんや?」という話が抜け落ちていて、河野太郎さんが嫌いな使用済み核燃料廃棄と同じ問題が繰り返されかねません。

 化石燃料への依存も、バイオマスほか代替燃料や水素燃料のようなものに移転させるにしても、これらも結局は電力が必要になります。いまかまびすしいEV自動車の普及促進についても、結局は発電能力とそのコストが問題になる以上、エネルギー政策が物事の根幹にあったうえで、いかに効率よくエネルギーを使い、寒冷地に人が住まないようにするかというところまで考えていかなければならなくなります。

 そこへ、政府がそういう方針だからと割と安直に「スーパーシティ」を立ち上げ、都市機能をスマートに集約させるという流れが出てきていますが、いま必要なことは単に必要だ、単に便利だとコンセプトを立てバズワードを作り、みんなで流行に乗っかることではなくて、より長期の30年、50年といったスパンの人口とエネルギーとコストと産業を見比べながら、最適な答えを出していく作業なのではないかと思うんですよ。

地道な問題がエネルギー問題へつながっている

 河野太郎さんが総裁選に出るにあたり、原子力発電のことを問われて口をつぐむ局面もありましたが、原子力であれ、あるいは高効率の火力発電所であれ、再生エネルギーの比率を上げる方向は堅持しつつも、使えるものはちゃんと計画的に使って国民全体の合意を得て、二酸化炭素をまずは削減していくしか方法はないと思うんですよね。

 でも、内閣府に設置されている「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(再エネTF)」には河野太郎さんともゆかりの深い人物が選任されて政府の再生エネルギー政策に影響を与えていますが、そこにソフトバンクが福島第一原発事故を機に設立した自然エネルギー財団に関わる人物が堂々と混ざっていたり、これは完全な利益相反というか利権・利益誘導そのものじゃないかと思うんですよね。新総裁を迎える我が国の再生エネルギー政策が適切な形で着地することを祈るばかりです。

 それは、パッと見てもエネルギーとは無関係そうな、地方経済の立て直しや人口構造、都市機能への国民・周辺住民の集約、教育・病院・文化・福祉の充実といった、地道な問題が直接影響しています。

 エネルギー安全保障はこれぞ国家の根幹であって、間違ってもセクシーかどうかで判断しちゃいけないことだと思うんですが、このまんまで良いものなのでしょうか。

(山本 一郎)

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