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「ここまでやるかね…」181枚の公文書から“衝撃の不正”が発覚 国をも欺いた卑劣な手口を暴く《神戸再開発の闇》

文春オンライン / 2021年9月15日 6時0分

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「さんプラザ」ビル。かつては10階建てだったが、現在は6階までしか存在しない。奥に見える19階建てのビルは「センタープラザ」、その奥が「センタープラザ西館」。(著者撮影)

市の外郭団体が“架空請求”で被災企業を追い込み…「25年前の焼身自殺」から繋がる“神戸の闇”の全貌 から続く

「えっ、なんでウチが解体されたことになってるんですか……」

 私が、1枚の書類を示すと、このビル内で今も店舗を経営する、その会社の社長は絶句した――。(集中連載第5回/ #6へ続く )

三宮の再整備から取り残された「さんプラザ」

 神戸の中心で、最大の繁華街である三宮町1丁目に建つ大型商業ビル「さんプラザ」。

 私はこれまでの記事で、このビルが、三宮の“玄関口”にあるにもかかわらず、神戸市の「再整備」から取り残されている背景に、同ビルの管理会社で、市の外郭団体である「神戸サンセンタープラザ」(以下「サン社」)と、高層階所有者との約30年に及ぶ訴訟があることを指摘した。

 そして、サン社が、その所有者を排除するため、元「地上げ屋」と手を組み、サン社が長年にわたって、「所有者に対して保有している」との主張を続けている債権「約929万円」の一部を売り渡すという、神戸市のコンプライアンス条例に抵触しかねない“禁じ手”に及んでいたことを報じた( #1 、 #2 )。

 また、その「約929万円」の取材の過程で、サン社が95年の阪神・淡路大震災当時、倒壊した高層階の解体撤去工事費をめぐって、所有者に対し“架空請求”を繰り返していたという、神戸市の復興行政の「正当性」を揺るがしかねない事実も判明。そして、このサン社による不正が、25年前の「神戸市助役焼身自殺」に繋がった可能性があることも摘示した( #3 、 #4 )。

 だが、残念なことに、サン社の不正は、これに留まらなかった。

 サン社は震災当時、国が被災者を救済するために設けた「公費解体制度」においても、虚偽の申告を行い、同社を管理・監督する立場にある神戸市だけでなく、当時の政府をも欺いていたのである。

震災後「自力再建」を余儀なくされた低層階

 震災で、8階部分が圧壊するという被害を受けたさんプラザでは、発災から2カ月後の95年3月30日に開かれた区分所有者集会で、〈上(高)層階の解体〉と〈下(低)層階の復旧〉が決議され、7~10階が公費によって解体撤去されたことは、 前回(#4) 述べた。

 だが、その一方で、阪神大震災当時は、「復旧工事」に対し、国の支援が得られなかったため、低層階の区分所有者たちは「自力再建」を余儀なくされた。

 このため、前述の区分所有者集会では〈下層階の(復旧)工事費用は、5階以下の区分所有者が共同して一時支弁する。いずれも工事終了後、共有持分より按分して清算する〉と決議されたのだ。

 復旧工事は、施工業者の「竹中工務店」など4社によって同年8月末に完了し、工事費は約16億円にのぼったが、翌月には3階までの低層階の店舗だけで、グランドオープンにこぎ着けた。

 ちなみに、さんプラザ5階以下の低層階のうち、店舗フロアは地下~3階までで、4~5階は神戸市の所有する駐車場となっており、その構造は今も変わっていない。

 冒頭で、取材に応じてくれた会社社長によると、サン社から復旧工事費用の請求があったのは工事完了後のことで、「(区分)所有する床面積に応じて支払ってほしいということだったので、ウチも数千万円払いました」という。

 ところが、である。

 こう話してくれた社長の会社が今も、さんプラザの低層階に所有し、営業を続けている店舗が、神戸市に保管されている震災当時の「公文書」では、存在しないことになっている。

 この会社の店舗だけではない。95年9月に再オープンしたはずの、さらには、それから26年経った今も存在し、営業を続けている3階以下のすべての飲食店などが、公文書上、〈解体撤去〉されたことになっているのだ。

181枚の〈明細〉から浮かび上がる“衝撃の事実”

 今回、私は、さんプラザの高層階の解体撤去工事に際し、サン社が95年当時、公費解体を申請する際に、神戸市に提出した〈解体撤去処理業務契約書〉とともに、公費解体の完了後、工事が、前述の契約書どおりに行われたことを証明する〈解体証明対象物件明細〉も入手した。

〈契約書〉の内容については 前回(#4) 詳述したが、サン社は95年4月3日、解体撤去工事を請け負った「鉄建建設」と、神戸市との「三者契約」を締結。鉄建建設はこれに基づき、同年8月末にさんプラザ7~10階の解体撤去工事を行い、後に、その工事費の全額が、神戸市から鉄建建設に支払われた。

 ならば、その工事が、契約書通り行われたことを証明する〈解体証明対象物件明細〉は、当時、「大倉産業」( #1参照 )1社が所有し、実際に公費解体された7~10階の4フロア分、つまりは4枚しか存在しないはず、である。

 ところが、私の手元には181枚もの〈明細〉があるのだ。

 そして、このうち170枚は、3階以下の低層階の区分所有物件の〈明細〉で、そのすべてが、低層階の復旧工事を請け負った竹中工務店など4社ではなく、高層階の解体撤去工事を行った〈鉄建建設〉によって、前述の〈三者契約〉に基づき、公費で〈解体撤去〉されたことになっている。

 私が冒頭で、前出の会社社長に示した書類は、この170枚の中の1枚だった。

 その明細の〈建物所有者氏名〉欄には、この会社の名前が記載され、同社が現在も、さんプラザ内で経営する店舗が、26年前に〈解体撤去〉されたことになっているのだから、この社長が驚くのも無理はなかろう。

4階から10階までが宙に浮いている?

 一方、残りの10枚も低層階の区分所有物件に関する〈明細〉なのだが、いずれも〈大企業〉、〈撤去のみ〉と記されている。

 阪神大震災では、中小企業の事業所などの解体撤去費用が全額、公費で賄われた一方で、いわゆる「大企業」については、「解体」費用は公費負担の対象とならなかったものの、一定の要件を満たせば、瓦礫の「撤去」費用のみ、その対象となった。

 よって、これら10枚の〈明細〉はいずれも、当時、さんプラザ低層階に店舗を持っていた大企業の、瓦礫の撤去費用に関するものである。

 また、震災当時、市町村などの地方公共団体が所有する建物は「公費解体」の対象外とされたため、当然のことながら神戸市が所有する4、5階の〈明細〉は存在しない。

 そして、最後の1枚については、このサン社による、公費解体をめぐる虚偽申告の核心部分なので、後に触れる。が、この181枚の〈解体証明対象物件明細〉に記された内容が、仮に事実だとしたら、さんプラザは、3階までの建物が存在せず、4階から10階までが宙に浮いているという、なんともシュールな造りの建物になっているのである。

虚偽申告の動機は何だったのか?

 これは一体、何を意味しているのだろうか。

 ここで、もう一度、前述の〈解体撤去処理業務契約書〉の右側、笹山幸俊市長(当時)らの記名押印の下にある、公費解体の対象となる〈物件の表示〉の部分を見ていただきたい。

 さんプラザビルの延床面積〈55,865.93㎡のうち13,352.13㎡〉とあるが、この〈13,352.13㎡〉が、実際に公費解体された7~10階部分の対象面積である。

 一方、〈解体撤去〉されたことになっている区分所有物件の171枚のそれぞれの〈明細〉に記された、公費解体の対象となる床面積を合算すると〈13,352.13㎡〉。数字の上では合っている。

 だが、この171枚の中に1枚だけ、当時、大倉産業が所有し、実際に公費解体された高層階の〈明細〉が紛れ込んでいるのだ。

〈建物所有者氏名〉欄に〈大倉産業株式会社〉と記載されたその〈明細〉は、それに記載された〈家屋番〉と〈延床面積〉から、同社が当時所有していた、さんプラザビル9階部分のものであることが分かる。

 9階部分の延床面積は、明細に記されている通り〈1,388.91㎡〉。ところが、そのうちの約3割にあたる〈415.52㎡〉だけしか、〈解体撤去〉されていないことになっているのである。

苦肉の策での“数合わせ”だった

 実は、この大倉産業分を除く170物件、つまりは3階以下の区分所有物件の床面積をすべて合計しても〈12,936.61㎡〉と、実際に公費解体された高層階の〈13,352.13㎡〉に足りない。

 そこで、苦肉の策として、大倉産業が所有していた9階部分のうち〈415.52㎡〉だけを〈解体撤去〉したことにして、それに加えるという“数合わせ”をしているのである。

 つまりサン社は、実際には、さんプラザ高層階が公費によって解体されたにもかかわらず、神戸市や国に対し、自力復旧した低層階を公費解体した――と虚偽の申告を行っていたわけだ。

 それにしても、である。

 これまで述べてきたように、サン社が震災後、四半世紀にわたって、訴訟相手の大倉産業に対し、自らの利益のために、虚偽に基づく不当な要求を続けていたことは――それが、被災自治体の外郭団体の被災者に対する姿勢として正しいか否かは、まったく別の問題だが――まだ、理解できる。

 だが、サン社はなぜ、自らを管理・監督する、いわば“本店”の神戸市にまで、虚偽の申告をする必要があったのか。

“虚偽申告”の背景には……

「しかし、サン社もここまでやるかね……」

  前回(#4) 取材に応じてくれた、約30年に及ぶ、さんプラザ高層階をめぐる訴訟の経緯を知る神戸市関係者は、私が手渡した181枚の〈解体証明対象物件明細〉に目を通した後、ため息混じりにこう呟いた。そして当時、サン社が神戸市に対し虚偽を申請した“意図”を、こう推し測るのだ。

「おそらくサン社は、(大津地裁に)大倉産業の破産宣告申し立てを行う(97年、 #1参照 )ギリギリまで、大倉産業に対し、高層階の『公費解体』の事実を隠し、あくまでサン社が、大倉産業の委任を受けて『自己解体』し、その費用を立て替えたとして、同社がそれまで滞納していた共益費(約3億円)のうち、何億かでも回収しようとしたのだろう。

 しかし、その間に大倉産業が、高層階の解体撤去費用が公費で賄われていたという事実に気付くことに備え、書類上、『低層階を公費解体した』ことにしたのではないか。

 そうすれば、(阪神大震災当時の様々な国の支援)制度に疎かった大倉産業に対し、『公費は、低層階の解体名目で、実際は復旧工事に充てた』などと強弁できるからね」

「神戸市が騙されるわけがない」

 だが、この神戸市関係者は同時に、「しかし……」とこんな疑問を呈するのだ。

「こんな杜撰な虚偽申告で、大倉産業は騙せたとしても、(神戸)市が騙されるわけがない。現場を見れば、すぐに分かる話だから」

 つまり、サン社側の申告を受けた神戸市も、それに虚偽が記載されていることを承知で受け付けた、つまりはサン社と“グル”だった可能性が高いというのである。

「でないと、こんな虚偽文書が、その内容も訂正されないまま、今も市に保管されていることの説明がつかないでしょ」

 市関係者は最後にそう言った。

 確かに、さんプラザは今も、市役所庁舎の目と鼻の先にある。そして、そもそも、10階建てのビルの3階以下の部分だけが解体撤去された――つまりは4階以上が宙に浮いている――などという、非現実的な申告を受け付けること自体、おかしな話だ。

 また、仮に、当時の市の担当者が、震災直後の混乱で、「うっかり」見逃してしまったとしても、だ。市職員のほとんどが、出勤途中に必ず目にするであろう場所に、申告された内容とは全く異なる、「高層階が解体撤去されたさんプラザビル」が建っていたはずである。

 やはり、ことの真相は、サン社に問い質すほかないだろう。

サン社に取材を申し込むと……

 私はサン社に対して質問状を送付し、書面で取材を申し込んだ。質問状では、この「公文書の虚偽記載」を含む、下記の4点について主に回答を求めた。

(1)さんプラザビル上層階をめぐる訴訟について

大倉産業が滞納した共益費の金額や内訳、また訴訟件数を教えて下さい。

 

(2)室鋭三郎氏(有限会社MURO取締役)への債権譲渡について

譲渡に至るまでの経緯を教えて下さい。室氏から振り込まれた300万円を、7年以上も「預り金」として処理し続けているのは事実ですか。また、この300万円の債権は「さんプラザ7〜10階部分解体工事費」から生じているとされていますが、そもそも解体撤去工事は全額公費負担で行われたのではないですか。

 

(3)室鋭三郎氏(有限会社MURO取締役)との関係について

室氏が大津地裁に提出した〈清算人選任申立書〉の中で、同氏は〈申立人は,(中略)「さんプラザ」の建替えに関し,「神戸サンセンタープラザ」に助言を行っている不動産会社であり〉と述べていますが、室氏は実際に、どのような〈助言を行っている〉のでしょうか。

 

(4)神戸市保管の「さんプラザビル」解体撤去工事に関する公文書について

〈解体証明対象物件明細〉によると、阪神・淡路大震災発生当時、公費負担によって実際に解体撤去されたはずのさんプラザビル7〜10階部分は現存し、代わりに3階以下が解体撤去されたことになっています。これは当時、解体撤去費用の公費負担を受けるため、サン社が神戸市に申請した内容に基づく文書ですが、現状とは明らかに相違しています。この事実をどう理解すればよいのでしょうか。

 しかし、約2週間後に送られてきた回答は、 #2 でも記したように、大倉産業関係者との「係争中の訴訟に影響を及ぼす可能性がある」とし、取材を拒否するものだった。

 だが、サン社がそう答えざるを得ないのも無理はない。というのも、サン社は、その「係争中の訴訟」においても、相手の大倉産業だけでなく、裁判所をも、今日に至るまで、欺き続けているからである。

( #6に続く )

神戸再開発から取り残された「さんプラザ」の真相 市の外郭団体は“4億5000万円の架空請求”に手を染めて… へ続く

(西岡 研介)

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