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「派閥の一本化」が“消えた”総裁選…政治評論家が見る候補者「リアルな評価」と自民党「派閥長老軍団」が選挙前に考えていること

文春オンライン / 2021年9月21日 17時0分

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政治評論家・篠原文也氏に聞いた「政治家の評価」と長老たちの思惑とは ©文藝春秋

 4人の候補者で争われる自民党総裁選。各候補への5点満点での評価と選挙戦略、その裏に潜む党長老たちの思惑を、政治評論家の篠原文也氏に聞いた。

河野太郎・行革相 ★4.6点「勝負所だが…」

 菅総理が出馬していれば、河野太郎さんは今回の立候補を見送ったでしょう。ここが勝負するタイミングだと決断したことは、評価します。しかし理想を言えば、1回早かった気がします。次回、満を持して出たほうがよかった。

 河野さんの発信力や突破力、実行力は、誰しも認めるところです。一方、以前から指摘されている調整力や気配りの不足、率直すぎる物言いについては、もう少し研鑽を積んだほうがいいと思うからです。

 今回の総裁選がにぎやかになったおかげで、総選挙で自公が過半数を割る事態は考えにくくなりました。そうなると問題は、来年夏の参議院選挙です。

 河野さんが政権を取ったとして、あのキャラクターで役所や官僚がついてこない状況に陥ったり、予算委員会などで野党から攻められたとき冷静に対応できるかどうか。自民党の国対関係者も「ボロボロになって短命政権に終わる可能性が、なきにしも非ずだ」と心配していました。

 石破茂さんに協力を要請したのは、1回目の投票で過半数を取って決着をつける一点に賭けるためです。党員の間で人気が高い石破さんと小泉進次郎さんが協力すれば、かなりの票数を期待できる。国会議員票が多少減ってもいいという計算です。

 その狙いが外れて決選投票になると、石破さんとの関係が悪い麻生さんや安倍さんの派閥からは、議員票の上積みが多くは見込めません。そうなれば、相手が誰になっても勝てるかどうかわからなくなります。

岸田文雄・前政調会長 ★4.6点「勝機が出るのは…」

 発信力に乏しいという評価がつきまとってきた岸田さんですが、菅総理に敗れた去年の総裁選に比べれば、歯切れがよくなったし、訴えかける力強さが出てきたと思います。

 出馬表明の記者会見が、とてもよかった。一皮むけたなと感じました。質問が尽きるまで約2時間も続けたのは、いつも途中で打ち切ってしまう菅総理を意識したからでしょう。

 それでも「平時の岸田」という印象は強く、コロナ禍のような国難や有事には向かないという評価から、まだ抜け切れていません。逆に言えば、安心感と安定感なら岸田さんが一番だと、国会議員は口を揃えます。

 決選投票に持ち込めれば、「石破と組んだ河野に投票できるか」という空気が強くなって、党内に敵のいない岸田さんに勝機が出てきます。

高市早苗・前総務相 ★4.7点「初めてあった日の鮮烈な印象」

 私が松下政経塾で出前授業の講師をしていたとき、高市さんは塾生でした。当時の中曽根首相の評価を尋ねたら、「やっていることは間違いないと思いますけど、人間的に好きになれません」と答えるのを聞いて、はっきりした物言いをする女性だと思ったのを覚えています。

 保守派の人たちから見れば、“期待”していた稲田朋美さんが「LGBT理解増進法案」をとりまとめるなどリベラル的な活動をとるようになり、いわば「よくわからない立ち位置」になったものだから、相対的に高市さんに期待が集まっていました。そんな中、高市さんは8月発売の『文藝春秋』誌上で、今回の総裁選に真っ先に立候補を宣言したのです。

 世間には唐突な印象があったかもしれませんが、彼女には前々から野心があることを私は知っていました。

 河野太郎さんは多数派を形成しようとしているため、持ち前の歯切れのよさが時々引っ込んでいます。しかし高市さんにはそういうことがなく、主義主張がブレません。度胸と胆力をもつ女性です。今回、一番高く評価したいのは高市さんです。

野田聖子・幹事長代行 ★4.5点「高市さんへの強いライバル意識」

 野田聖子さんは、小池百合子さんよりも前から、初の女性総理の候補として名前が挙がっており、出馬への意欲を総裁選のたびに示していました。今回「4度目の正直」でようやく20人の推薦人を集めて出馬しました。やっと出馬にこぎつけたとあって、たまっていた政策をどーっとはきだしている感じです。

 閣僚の半数を女性にする構想など、女性活躍という視点に立って発信をしています。政策についても、女性の地位向上や子育て支援などの弱者対策にウエイトを置いて、一定の支持を集めています。多様性を強調し、ほかの3人と政策の差別化を図っているところが評価できます。

 同じ女性候補でも、高市さんは“女の視点”でモノを見ることを嫌いますから、対照的です。高市さんはさほど意識していないかもしれませんが、野田さんには高市さんに対して強いライバル意識があるでしょう。高市さんが先に手を挙げたことで、後れを取ってはいけないという思いも働いたと思います。

出そろった4人の総裁候補…その背後にうごめく「思惑」

 今回、ほとんどの派閥で “支持候補の一本化”が進まず、事実上の自主投票となっています。派閥のトップにいる長老たちは、いま何を考えているのでしょうか。

 安倍前総理が高市さんを支持すると表明したのは、自民党の保守の岩盤支持層がメルトダウンしないようにという狙いからです。自分の後継の菅総理を支持せざるを得なかったが、出馬しないことになりました。かつて禅譲を考えていた岸田さんとの関係は、何が何でも岸田さんではなく、他にいなければという程度の支持だったと思います。ですから高市さんが決選投票に残れないとなれば、岸田支持に回るはずです。

 河野さんの今回の出馬は早いのではないかと言いましたが、麻生さんも同じ気持ちでいるはずです。河野さんが総裁になれば派閥が代替わりしてしまうのを嫌がっている、という見方もありますが、81歳の麻生さんはすでに息子さんが後継者に決まっています。それよりは、目をかけてきた河野さんに何とかうまい具合に大願成就をさせてやりたい、という親心のほうが強いでしょう。

“初当選の菅義偉”が語った「この中で総理大臣が出るとすれば、河野しかない」

 もともと河野さんは、菅総理がひいきにしてきた政治家です。同じ神奈川で、同じ当選8回。初当選の同期議員が集まって会合したとき、「この中から総理大臣が出るとすれば、河野しかないと思い定めた」そうです。安倍前総理に外相、防衛相への起用を進言したのも菅さんです。

 去年は本人が担がれたから河野さんの出番はなかったわけですが、自分が身を引くことになって河野さんを応援するのは、その当時からの思いがあるからです。

石破茂氏の態度表明が遅くなったことが表す“雲行き”

 政権を支えてきた二階さんにとって一番よかったのは、もちろん菅総理の続投です。次は、関係が近いわけではないけれども、しばしば相談に来ていた石破さん。その次に、幹事長代行として自分を支えてくれた野田聖子さんが、頭にあったでしょう。

 菅総理が再選に臨んでいれば、二階さんは自分の派閥の中にいろいろな意見があっても、最後はまとめ上げたと思います。菅総理がドロップアウトしたことで、誰かを積極的に担ごうという意欲は薄れたとは思いますが、何しろ先を見通し「勝ち馬」をつくる能力では党内で二階さんの右に出る人はいません。決選投票になれば二階さんがどう動くか目が離せません。

 石破さんは、二階さんの協力を得て20人の推薦人を集めることが可能だったはずです。出馬を断念した最大の理由は、出ても勝てないということ。自分が出れば党員票が分散され、仮に2位につけたとしても、アンチ石破が多い国会議員中心の決選投票では勝てません。「今度負けたら、もう自分は終わりだ。それならば河野に恩を売ってポストをもらい、存在感を示したほうがいい」という判断に至ったのでしょう。河野さんから協力してくれと言ってきたのは、渡りに船だったことでしょう。不出馬の表明が遅くなったのは、アプローチを待っていたのかもしれません。

 河野さんを政権に押し上げれば、再び幹事長になれる可能性があります。二階さんがあれだけ権勢を振るったように、小選挙区制の下で幹事長というのは大きな実権を握るのです。その先に石破政権が待っているかどうかはわかりませんが、いまの裏長屋の素浪人みたいな生活よりはずっと影響力を行使できます。

 現時点では、順当なら河野さんか岸田さんでしょうが、高市さんが「台風の目」的存在になっている中、先の先まで読んで動くのが政界の論理。単純にはいきません。

構成=石井謙一郎

(篠原 文也)

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