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《破廉恥不倫トラブル》女性を騙して200万円以上を授受…逮捕を免れて密かに退職していた“キャリア警察官”のやり口

文春オンライン / 2021年9月27日 17時0分

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『特権キャリア警察官 日本を支配する600人の野望』(講談社)

巡査の年収は360万、警部は705万、では警視長は? 住居補助に天下り…“警察キャリア”の恵まれた“特権”の実態 から続く

 個人の生命、身体及び財産の保護、犯罪の予防、公安の維持並びに他の法令の執行等の職権職務を忠実に遂行する職業であるにもかかわらず、警察官による不祥事は後を絶たない。2015年には、女性社長に便宜供与を図り、200万円以上を受け取るというあるまじき行為に走った警視長もいた。

 ここでは、ジャーナリストの時任兼作氏の著書『 特権キャリア警察官 日本を支配する600人の野望 』(講談社)の一部を抜粋。同警視長が不祥事を起こしたにもかかわらず、逮捕を免れた際の一部始終を明らかにする。(全2回の2回目/ 前編 を読む)

◆◆◆

捜査二課は省庁キャリアの贈収賄事件を狙っている

 警察キャリアについて語る以上、彼らの犯罪、不祥事にも触れておかなければなるまい。

 ひとたび警察が動けば、個人はもちろん大企業も、中央省庁のキャリアやその上に立つ政治家さえも相当なダメージを受け、場合によっては命取りになりかねないような事態に陥るのが世の常だが、その絶大な捜査権力を握る彼ら自身が当事者になった時はどうなのだろうか。

 まずは、そこから始めよう。

 実は、かねて付き合いのある警視庁捜査二課の捜査員は、会うたびに筆者にこんなことを口にしていた。

「役人で悪いことしている奴はいない? 金回りがいいとか、派手に女と遊んでいるとか。噂だけでも構わないから、耳にしたら教えてよ。みなし公務員というか外郭団体の奴なんかでもいいけど、できたら国家公務員。キャリアがいいね。挙げられたら、一生の勲章だよ」

 この捜査員の頭には、かつて警視庁が逮捕した厚生事務次官のことがこびりついて離れないようであった。特別養護老人ホーム認可に絡んだ贈収賄事件のことだ。

「あれはいい事件だった。あんなのをやりたいね」

 請われるままに、情報通の友人のキャリア官僚(警察キャリアではない)を紹介したこともあった。あとで聞けば、上司や同僚のことを交友関係や生活ぶりに至るまで根掘り葉掘り聞かれて困った、と言っていた。

「だってな、『誰それの銀行口座を開けてみるか。そうすりゃあ、一発だ。おかしなカネがあれば、すぐにわかる』なんて漏らすんだぜ。そりゃあ、まずいよ。一応はおれの知り合いなんだから」

 捜査二課の刑事は贈収賄事件を求め、その兆候さえあれば、銀行口座の照会くらいのことはすぐにやる。そして、もしおかしな部分が認められれば、24 時間体制の行動監視に移る。捜査を本格的に始動させるわけである。

警察キャリアの犯罪行為はアンタッチャブル

 ところが―。

 これは、あくまでもほかの省庁のキャリアに限っての話。警察キャリアは含まれていない。例外扱いとされているのである。仮に捜査の網に引っかかろうとも、見て見ぬふり。告発があっても、表沙汰にはしない。警察キャリアの犯罪は秘されたタブーなのである。

 事実、明らかに贈収賄を疑われ、それがメディアにも報じられながら、立件されない警察キャリアたちがいる。

 しかも、事が発覚した後も長期にわたって警察機構に身を置き、のうのうと禄を食んでいた者さえ少なくない。直近の事例では、こんなことがあった。

 税金が投入される警察の業務等の発注で便宜を図り、見返りとして報酬を受けていながら、刑事罰を受けることのなかったキャリアがいたのである。

 一連のやり取りの最中には、相手方の若い女性経営者と不倫関係も結び、破廉恥な行為を繰り返していたことも明らかになっている。

 一般的に考えれば、贈収賄事件として捜査、立件されて当然の犯罪行為。汚職事件を担当する捜査二課の捜査陣が色めき立ってしかるべき事件だ。

 しかし、この事件の場合、そうではなかった。

 それどころか、まったく触れようとしない。恰好のネタが転がり込んできたじゃないか、と筆者が指摘しても、捜査二課の捜査員は黙殺した。自分たちのこととなると、貝になるのかと思いかけたが、過去には身内である捜査二課の捜査員を収賄で逮捕したことがあったから、そういうわけでもないらしい。

 つまり、二課の捜査員が動かないのは、相手がキャリアだからなのだ。日々鵜の目鷹の目で汚職事件を探し、端緒があればすぐさま捜査して徹底的に追い詰める彼らを押し止めるのは、その威光にほかならない。

200万円を受け取っていた警視長

 捜査員を沈黙させたのは、A警視長だ。

 京都大学法学部を卒業後、1995年に警察庁に入庁し、北海道警の公安第一課長や神奈川県警の外事課長を経て2011年には40歳を前にして島根県警のナンバー2たる警務部長に就任している。

 この経歴を見ると、大規模県警の警備・公安畑の課長職を歴任し、組織内で将来を嘱望されたエリートだったことがわかる。

 そんな人物のキャリアに影が差しはじめたのは2015年11月。A警視長は、警視庁交通部の総務課長の任にあった。交通関連機器を扱う業者らとの会合に出た際、その席で、交通安全のための反射材などを扱っていた会社の女性社長と名刺交換をしたのをきっかけに交際をはじめた。そして、妻と3人の子どもがいる身でありながら、12月には不倫関係を結ぶようになっていた。

 その後、食事、デート、ホテルと逢瀬は続いた。費用は女性が負担した。A警視長は、密会の折には、女性の下着やストッキングを頭にかぶったり、靴の匂いを嗅いだり……。

 その様子は写真誌『フライデー』に掲載され、白日の下に晒されることになる。2017年2月のことだ。記事の中で女性は、飲食代やホテル代金のほかに、A警視長がタクシーで帰宅する際は毎回、現金2万円を渡すなどしていたとし、総額200万円以上も提供したと証言している。

不倫相手に機密漏洩や便宜供与も

 また女性は、ホテルなどでの逢瀬の際に、警察庁内の不祥事や、伊勢志摩サミットに向けての警察庁の警備方針が書かれたノートを見せられたことも明らかにし、機密漏洩の疑いを示唆した。

 だが、問題はこれに止まらなかった。当初、女性は公にはしていなかったが、実はA警視長の口利きで、警察からの仕事の発注を数多く受けていたのである。

 まずは2016年3月、警視庁池袋警察署主催で開かれた「親子で学ぼう! こうつうあんぜん」なるイベント。女性の会社は、実はタレント派遣や文具品の販売を主業にしていたのだが、このイベントはまさにそれに合致したもので、Sというアイドルタレントを起用して開催された。

 そして、翌4月。警視庁のマークに加え、マスコットの「ピーポくん」のイラストを入れた「警視庁ノベルティノート」を制作。それから、同年6月には警視庁交通部と読売巨人軍とをコラボさせた「タックルバンド」を警視庁に納品している。

 さらに、こんなこともあった。2016年7月、警視庁の交通安全イベントの発注先を選ぶ際、A警視長が女性の会社に有利な発言を行い、発注を働きかけたのである。このコンペに参加していたのは5業者。事前投票では女性の会社は3位であり、平均点にも及ばなかった。が、そのことを知らされた女性が「どうにかならないか」と依頼すると、「ちょっとやってみる」と応じた。そして、選考委員会のトップを務めた警視長は「今回は子ども向けを重視すべきだ」などと発言し、女性側の企画が選ばれるよう誘導したのだった。警視長は「1番にしておいたよ」と女性に報告したという。

 このほか、警視長は交通総務課長を離れる2016年8月までに9件の便宜供与を行った。警視庁や東京都交通安全協会が関わったポスターやグッズの制作、イベントの開催などで女性の会社が仕事を受注できるよう助言したり、内部で働きかけたり、協会と調整したりしたとされる。

逮捕を免れ、ひそかに退職

 離任後も、さらに便宜供与は続いた。

 2016年10月、警視長は警察庁の犯罪収益移転防止対策室長に異動していたが、女性に頼まれ、警視庁管内の警察署に電話し、その警察署の管内で開催されるイベントに警察署として参加するよう求めたのである。女性がこのイベントにかかわっていたからだ。要請を受けた警察署は翌月、イベントに参加し、交通安全教室を開いた。なお、その際にはA警視長自身が会場に顔を見せていたともいう。

 また、同年11月、警察庁に出向経験があり、顔見知りであった徳島県警の警察官に連絡を入れ、女性の会社が営業にかかわっているタレントを県警のイベントなどで起用できないかと依頼。同月下旬、このタレントは交通安全を推進するイベントに出演している。さらに、同年12月には福岡県警にも電話を入れ、同様の依頼をした。

 県警は県庁に働きかけ、県は翌年2月の飲酒運転取り締まり期間に配るグッズのキャラクターとして、このタレントを起用したのである。

 これら以外にも6件の仕事で便宜を図ってもらったと女性は証言している。

 すべてを合わせると、A警視長は女性と知り合って以降、20件にも上る便宜供与を行っていたことになる。これに伴い、警察からの発注で多額の税金が費消された。

 こうしたことが明るみに出るに及んで、警察庁はようやく動き出した。A警視長を警察庁長官官房付として留め置き、10ヵ月にわたって調査を行ったのである。だが、その結論は発注の手続きに問題はなく、警視長が便宜を図ったことはなかった、というものであった。

 かくして、A警視長は逮捕を免れ、不適切な交際関係などについてのみ責任が問われ、停職処分を受けたのだった。

 A警視長は2017年12月、退職した。

【前編を読む】 巡査の年収は360万、警部は705万、では警視長は? 住居補助に天下り…“警察キャリア”の恵まれた“特権”の実態

(時任 兼作)

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