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「照ノ富士を誰が止めるのか。注目していた力士は…」“元安美錦”安治川親方の9月場所総評

文春オンライン / 2021年9月29日 11時0分

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元安美錦(安治川親方) ©文藝春秋

 熱い戦いが続いたオリンピック・パラリンピックも終わり、暑い夏から過ごしやすい秋へと変わっていく季節を感じながら9月場所を振り返っていきたいと思います。

 新横綱照ノ富士が誕生し、盛り上がりを見せた大相撲。

 新関脇明生や豊昇龍、琴ノ若など若い力の台頭に、先場所復活優勝を遂げた横綱白鵬を誰が倒すのか楽しみにしていました。

一人横綱になった照ノ富士

 残念な事に、場所前のPCR検査で白鵬の所属する宮城野部屋の力士に陽性者が出たため、人気の炎鵬など、宮城野部屋の全力士が休場という事となりました。

 幸い大事には至らずホッとしました。

 白鵬休場のため、新横綱で一人横綱になった照ノ富士。名古屋場所後に横綱伝達式、綱打ち、明治神宮奉納土俵入りと行事がたくさんあり、疲労はあったと思いますが毎日稽古場で体を動かしていました。

 横綱としての強い責任感の現れか、稽古場でもいい緊張感を纏った状態でした。横綱が黙々と汗をかいている姿に、同部屋の他の力士たちは体を動かさざるを得ない。申し合い稽古(相撲を取る実戦稽古)は熱を帯びて、関取衆で50番以上、幕下力士に至っては連日80番以上の稽古をしていました。横綱効果といいますか、豊富な稽古量に「今場所も大丈夫だろう」と確信していたものです。

今場所の注目力士は……

 場所前に行われた連合稽古で精力的に稽古し、元気だという声が聞こえて来ていたのは、高安、阿武咲、妙義龍。

 今場所の注目としては、照ノ富士の他に先場所首を痛めて休場し、角番の大関貴景勝。明生と同じ部屋で、新三役を狙う豊昇龍。上位初挑戦の琴ノ若に、人気の宇良。

 大関正代や実力者の御嶽海といった顔ぶれです。

 例年であれば名古屋場所後は東北、北海道を廻る夏巡業があり、夏の日差しで日焼けした力士が多いのですが、夏巡業もなく外出も自粛しているため日焼けしている力士はいないです。少し残念。巡業での楽しみといえば食事。ジンギスカンや蟹、ウニやいくら、仙台の牛タン。挙げたらキリがないですが……。地元青森での夏巡業があった頃を思い出してしまう……。さて。思い出ばかり語らずに本題に入りましょう。

「白星が一番の薬」だった大関貴景勝

 照ノ富士は落ち着いた取り口で、初日から8連勝。しっかり組み止めて低い姿勢を保ち前に出る。隙がない。相撲に関しては言う事はない。しかし、私は見逃していませんでした。初日の横綱土俵入り。初めての本場所での土俵入りは緊張しないはずはないと見ていました。ゆっくりとした威風堂々としたせり上がりに、そんな心配も吹き飛びました。

 四股を踏み終わり、仕切り線から西の徳俵に帰る時の足が、実は逆だったのを気付いた人は私だけだったでしょう。とはいうものの、私も自信がなく次の日に本人に聞きました。答えは……「よく分かりましたね」と。

 先場所休場の大関貴景勝は休場明けの角番で厳しい土俵が続きました。

 初日から3連敗。痛めた首の影響もあると思いましたが、相撲内容は頭からしっかり当たっていたので大丈夫と見ていました。4日目の豊昇龍戦では、組まれながらも小手投げで振りほどき、なんとか白星を挙げる。「白星が一番の薬」とはよく言ったもので、相撲内容がどんどん良くなっていきました。

 私の独り言ですが、豊昇龍戦で差された場面での「小手投げ」に、とても可能性を感じました。貴景勝は押し相撲で廻しを取られると相撲になりません。廻しを取られた時の対処法として、突き落としの要領で体を開き、小手を振る事で相手が嫌がりそこからまた、押していく事ができるのではないでしょうか。すみません、ただの独り言です。

大栄翔の見事な金星

 大関正代は、初日に豊昇龍にうまく取られ黒星スタート。今場所は立ち合いから前に出る相撲が出ていたものの、中日を終えて5勝3敗。

 新関脇の明生は、相撲内容は悪くないのに中日を終えて3勝5敗。気合いは入っているので、後半に期待したものです。

 前半、相撲内容が良かったのは御嶽海、霧馬山、阿武咲、隠岐の海、妙義龍、千代の国、遠藤の面々でした。

 中日を終えて全勝は照ノ富士。1敗で妙義龍。照ノ富士の独走で「このまま決まりではないか?」と思わせる展開でした。

 誰が照ノ富士を止めるのか。止められるのか?

 それは大栄翔。

 照ノ富士に廻しを与えず我慢した後、突きを爆発させました。肘のサポーターも飛んでいくほどの勢いで照ノ富士を押し切ったんです。見事な金星でした。

私も妙義龍との対戦は嫌だった

 照ノ富士は12日目の明生戦で星を落とし、14日目を終えて12勝2敗。

 追い掛けるは前頭10枚目の妙義龍。11勝3敗で千秋楽を迎えました。

 34歳のベテラン妙義龍が13日目に貴景勝に勝ち、14日目は立ち合いから正代の前廻しを素早く引きつけて、一気の寄り切り。これ以上ない最高の相撲で勝ち、千秋楽に臨みました。

 私も何度か妙義龍との対戦がありますが、正直、嫌でした。妙義龍の良さは、立ち合いからのスピードの速さですが、私が一番嫌だったのは立ち合いで当る「角度」。低い姿勢で当り、そこから伸びてくる。まるで、飛行機の離陸のように一気に押してくるのでした。14日目の正代戦の相撲がそれです。この相撲が優勝争いの最中で出たという事は、ちょっと信じられません。素晴らしい。

 さあ、千秋楽はどうだったでしょう。

最後まで横綱らしく取り切った

 千秋楽の結果は、妙義龍が本割で明生に負けて、照ノ富士の取組を待たずに優勝が決まりました。妙義龍が硬くなったのか、明生が落ち着いていたのか。

 照ノ富士は優勝が決まった後での結びの一番でした。

 最後まで横綱らしく取り切りました。初めての横綱としての本場所は、とにかく疲れたでしょう。一人横綱としてよく頑張りました。

 今場所もたくさんのお客様にご来場いただき、誠にありがとうございました。

 来場所は久しぶりに福岡で九州場所が開催されます。

 一年納めの九州場所はどのような展開になるのか、今から楽しみです。福岡といえば美味しいものがたくさんありますが、我慢して自粛に専念致します(涙)。

 この自粛中、皆さんは家でどんな楽しみをみつけましたか?

 私は、晩酌をしながらバレエを観るのが楽しみです。熊川哲也さんの踊りに衝撃を受けました。また、ロシアのワガノア・バレエ・アカデミーの特集など好きで観ています。基礎練習の大切さや舞台にかける熱い思いなど、相撲に通ずるところも感じます。

 特に好きなのがボリショイ・バレエ団のプリンシパルを務めた「スヴェトラーナ・ザハーロワ」。「白鳥の湖」や「ラ・バヤデール」など夢中で観ています。興味のある方は是非。

 相撲のコラムという事を忘れていました(笑)。

 また来場所も宜しくお願い致します。それでは、へば!!(元安美錦 安治川)

(元安美錦(安治川親方))

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