1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 芸能総合

「役者からいかに良い芝居を引き出すか」今泉力哉監督が明かす“自主映画時代に築き上げた演出法”

文春オンライン / 2021年10月9日 17時0分

写真

今泉力哉監督 ©石川啓次

 2019年の『愛がなんだ』で社会現象的ロングランを記録し、「Filmarks」が発表した「2021年上半期 映画監督人気ランキング」では第1位。今泉力哉は名実ともに、いま日本映画界で最も支持を集める監督だ。

 いかにして独自の作風が築き上げられたのか、そして10月15日に公開を控える最新作『かそけきサンカヨウ』にいたるまでを聞く。(構成:秋山直斗)

◆ ◆ ◆

 注目の映画監督みたいな感じで取り上げていただいて、大変ありがたいんですが、正直畏れ多いし、実感もあまりないですね。実は1位になった「Filmarks」のランキングは、人気どうこうとは別の理由があって。僕が自分の映画の感想コメントに、ひたすら「いいね」をしてたら、ユーザーが僕を見つけてフォローし返してくれた結果、票が積み上がってしまっただけで。もちろん純粋なファンもいるとは思いますが。

 いまだに「自主映画っぽい」と書かれたりしますし(笑)。僕の映画に「家の中で登場人物ふたりが話す」っていう自主映画でも描けるシーンが多いのは事実だし、芝居の演出も自主映画を作っていた時に培った方法論ですからね。ただ、自主映画の何が悪いんだと思いますけど。映画には「こんなスゴい映画は作れない」と思わせる映画と「自分でも作れそう。作ってみたい」と思わせる映画があると思うんですけど、最も影響を受けた山下敦弘監督の映画や僕の映画は後者のタイプ。でも、撮れそうと思っていざ真似してみると、簡単にはできないものを作ってる自信はありますが。

 特にこだわってきたのは、役者からいかに良い芝居を引き出すかということ。というより、お金もなくて、自主映画時代は予算が1本10万円とかで短編映画を作っていたので、こだわることが出来たのは芝居だけだったんですよね。友人に役者として出てもらって、お金とは別の部分で映画を面白くできるのって芝居の演出しかなくて。短編映画も数十本は作りました。その中で、徐々に僕の作品に頻出する“間”を使った長回しの演出方法が出来上がっていったんだと思います。

 “間”というのは、僕自身が想像してないことが起きないかなと、カメラを回しながら期待して待っている時間なのかもしれません。映画って脚本通りに撮ったら脚本通りのものしか出来ない。それだと物足りないというか、自分が楽しめない。だからこそ、“間”を使って役者にも一緒に試行錯誤してもらっているのかもしれないです。

 あとは現実世界と同じ時間を体感させたいというか。役者から引き出した良い芝居を、カットを割ったりするのは、もったいないと思ってしまうことがあって。ツーショットのシーンを例にあげると、カットを割るとなると、大抵は役者の顔をヨリで撮ることになる。そうすると、どちらか一方の顔しか画面に映らなくなってしまいます。二人ともいい芝居をしている中から、取捨選択をせまられるわけだけど、そんなの選べない(笑)。

 だったら、演劇じゃないですけど、シンプルにツーショットでいいんじゃないかってのが、長回し演出のはじまりでした。これって、現場で目の当たりにした芝居の時間や空気をそのまま届けたい、という欲望なのかもしれません。良い素材があるのなら、音楽をつけたり、カットを細かく割ったりして「味を濃くする」必要はないんじゃないかなって。

 付け加えると、素材の味をより活かすために、むしろ編集の段階で“間”をさらに伸ばしたりする時もあります。一般的な映画の編集のセオリーでは、“間”は詰められ、上映時間もコンパクトになっていく。だけど僕は逆で、基本どんどん伸ばす。例えば役者が交互に会話するカットバックのシーンなら、映像の前後で映っていない人のしゃべり声を消して“間”を長くする。役者さんには失礼な行為とは思いながら、そういうことはしています(笑)。

 人間の自然な挙動や会話のテンポ感って、映画として観ると思いのほか早くて、何をしてるのかが分かりづらかったりするんです。あるいはテキパキ動く芝居だと、いかにも芝居っぽく見えてしまったりする。僕の演出が「リアルで生々しい」と言ってもらえるのは、動きや動作のスピードを現実世界より若干遅くして、そのうえ“間”もコントロールして、これまでに存在していた一般的な映像よりも体感がリアルになるように調整しているからだと思います。

“間”を伸ばすストーリーテリング

 新作の『かそけきサンカヨウ』はある意味、脚本の段階から“間”を伸ばす作りができた映画でした。これまで、原作付きの作品を何本か作ってきましたが、単行本一冊を映画に落とし込もうとすると細かな面白い部分を泣く泣くカットしないといけないし、それでもなお早足なストーリーテリングになってしまう。そういう作り方を残念に思っていました。それなら短編小説を膨らませる形で、映画を作ってみたいと前々から考えていたんです。

◆ ◆ ◆

 注目の新作『かそけきサンカヨウ』の制作秘話や、その後に予定している次作の構想、さらには和牛やかまいたちと同期だったというNSC(吉本のお笑い養成所)時代の意外なエピソードなど、今泉力哉監督へのインタビュー全文は現在発売中の「週刊文春CINEMA!」に掲載されています。

今泉力哉(いまいずみ・りきや):1981年生まれ。2010年『たまの映画』で商業監督デビュー。13年『こっぴどい猫』でトランシルヴァニア国際映画祭最優秀監督賞受賞。主な作品に『退屈な日々にさようならを』(17)、『アイネクライネナハトムジーク』(19)、『mellow』(20)、『his』(20)など。テレビドラマでも、『時効警察はじめました』(19)や『有村架純の撮休』(20)に演出として参加。

(今泉 力哉/週刊文春出版部 週刊文春CINEMA!,2021年 秋号)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング