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「衣装を着ることにおいては、生理はないほうがいいんです」フィギュアスケーター鈴木明子が囚われた“危うい思い込み”

文春オンライン / 2021年10月15日 17時0分

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撮影=Nobuaki Tanaka

「あからさまにする勇気が必要かな」ぺこ&りゅうちぇる夫妻が明かした"生理・性教育”に対する“本音” から続く

 腹痛、腰痛、倦怠感、気分の落ち込み……。個々人の特性や体調によって、症状の重さは異なるものの、生理に関連して起こるPMS(月経前随伴症候群)に悩まされる女性は多い。

 なかでも、一瞬のパフォーマンスが評価されるアスリートは、月経が試合に重ならないかを気にしたり、月経周期による好不調を否応なく意識させられたりするなど、影響は多大だ。彼女たちはどのように生理と向き合っているのだろうか。

 ここでは、生理の話題をオープンに取り上げ、大きな話題を呼んだテレビ番組『生理CAMP』(集英社)の一部を抜粋。フィギュアスケート選手の鈴木明子氏へのインタビュー、上田氏による「アスリートの生理あるある」をまとめた漫画を紹介する。(全2回の2回目/ 前編 を読む)

◆◆◆

【《マンガ》「アスリートと生理あるある」を読む】

厳格に体重を気にするようになり、生理がこなくなる

――現役時代、摂食障害が原因で生理が止まってしまったそうですね。

 初潮のときは、「ああ、きちゃったのか。これで選手として難しい時期がくるぞ」という感覚でした。生理がくる=体重で悩むイメージがあって。海外の試合に出ると、みんな手足が長くてスタイルがいい。でも身長は変えられないし、変えられるのは体重だと思ってしまいました。

 高校生までは、親が食事管理をしてくれていましたし、毎朝走って体重が増えない努力をしていたんです。アスリートとしては浅はかなんですが、体を作るというよりは、女子高生にありがちな細ければいいやという考えで。

 大学生になって、一人暮らしを始めました。それまで「体型を保ててえらいね」と周りから褒められていたのが、強迫観念みたいになってしまって。自己管理ができないと見られるのが怖くて、より厳格に体重を気にするようになり、体重がどんどん落ちて、生理がこなくなりました。

 そこから2~3年は生理がなかったと思います。レディースクリニックでは「体脂肪がある程度ないと生理はこないから」と言われて。ようやく生理がもどり、トレーニングを再開してからも不安定で、オリンピックに出ていた頃も、試合のシーズン半年間は生理がなかったんです。大きなストレスがかかったときは不順になりやすいですよね。私の場合はメンタル的な影響が大きかった気がします。

おかしいということに気づけたのは、25歳を超えてから

――生理がこないことをどう捉えていましたか?

 よくない考えなんですが、フィギュアの衣装を着ることにおいては、生理はないほうがいいんです。足を上げるときも気になりますし。むしろ、生理がこないことで、自分の体を追い込めている、試合への準備ができているという錯覚に陥ってしまって。本当はそこでまた病院に行くなどの対処をしなければいけなかったのに、放置し続けてしまいました。

 おかしいということに気づけたのは、25歳を超えて、周りの友達が結婚や出産をするようになったからです。周囲の人生のステージが変わっていく中で、私も選手としての終わりが近づいて、次の人生を考えるようになりました。そこで、私の体は女性としてきちんとしているのだろうかと不安を感じたんです。

 世界を目指す若い10代の選手にそれを感じろといっても難しいと思うんですよ。私自身もそうでした。でも、その先の人生の方が長いのに、未来に後悔を生んでしまうことは悲しいですよね。たとえば子どもが欲しいのに産めないなんてことになれば、がんばってきた選手時代を自分自身が認められなくなってしまう。

 スポーツ選手に限らず、若い女性の無理なダイエットによる摂食障害の患者数、全然減りませんね。危険な考えだということが世の中に広まるといいなと思います。

10代半ばまでは親のフォローが大切

――アスリートの目線で、どんな情報があるとよいと思いますか?

 選手時代、コーチに生理のときは伝えていました。優しくしてほしいわけじゃなくて、今は動きが悪いけれど、生理が終わればまた動けるようになるとわかれば、トレーニングのスケジューリングがしやすいと思うので。もし試合と重なることがあっても、じゃあ淡い色の衣装は避けようか、みたいなことを話せるようになるので。自分の体の状況を知ってもらわないと、無理してケガにつながるかもしれないですから。

 私自身はコーチが男性でも言える関係でしたが、言いづらい人もいるでしょうし、コーチとは別の角度からサポートできる女性がいることが大事かもしれません。私が所属していたスポーツクラブ(邦和スポーツランド)では、先生と選手である子どもたちと親を集めて、レディースクリニックの方を呼んで、生理について家庭でどうフォローするか、生理の仕組みを伝える講習を開いています。10代半ばまでは親のフォローが大切です。

自分だけで抱え込むより周りの人と共有できれば

 審美性を問われるスポーツに関しては、成長することが悪という考えがどこかにあって、極めようとするとどこかに犠牲が出てしまう……私みたいに体調を崩す選手が出てきてほしくないですし、世の中の認識も変わらなきゃだめだなと思い、積極的に発信を始めました。

――発信後、周囲の反響はいかがでしたか?

 生理について話したことが記事になったとき、男性の友人からも「恥ずかしながら全然知らなかった」と言われました。日本ではオブラートに包んで話しますが、生理があるから子どもが生まれるわけだし、あって当たり前のものなので、オープンになればいいと思います。

 以前、アイスショーの楽屋で、「なんで生理前ってあんなに食べたくなるんだろうね」とスケーター同士で話したことがあったんです。みんなもそうなんだって安心できるし、自分だけで抱え込むより周りの人と共有できるといいですね。

 女性同士でも、母と子であっても、生理については本当に個人差があって、お互いのことはわからない。もっと気軽に話せるようになったらいいなと思います。

相談できるお医者さんを作っておいてほしい

――鈴木さんご自身の生理の症状はいかがですか?

 現役時代は、生理痛よりも排卵痛のほうがつらかったです。ふだんはナプキンで、演技をするときはタンポンを使用しています。引退後、オーガニックコットンのナプキンを使い始めたら、とてもよかったです。フィギュア選手は常に冷える環境にいるので、腹巻きをするなど冷え対策は非常に大事です。もし冷えに困っているのならば、試してみてほしいです。

――今の10代に伝えたいことはありますか?

 私は半年に1回はレディースクリニックで定期検診を受けています。若い子はなかなか婦人科って行きづらいですよね。私は大学生のときに行くことになりましたが、最初はやはり怖かったです。

 でも、気づかないうちに子宮周りにトラブルができていたらもっと怖いなと思って。もし何か不安があるのであれば、先送りしないで、相談できるお医者さんを作っておいてほしいです。

心にゆとりをもって体と向き合ってほしい

 大学生で一人暮らしを始めた子なら、家のことも全部自分でやらなきゃいけないし、最近はコロナの影響もあって友だちには会えないし。そういう周りのことが生理に影響しやすいと思うので、生理周期をアプリでメモするだけでもいいし、自分の体に興味をもつようにしておけば、ちょっとした変化にも気づけると思います。

 今のつらい時期を超えたら楽になるなとか、今はイライラする時期だから人と会う用事をずらそうとか、うまく自分の体と付き合えるようになるといいですね。

 好きなものを食べて、眠いときは寝て、と自分を甘やかす時期を作ってあげたほうが、体にとっても自然だと思います。甘やかしたあとは、がんばるぞってメリハリがあれば問題ないと思います。

 これまでの経験を経て、私は「どうしたら自分がいちばんいい状態でいられるか」を常に考えるようになりました。こうじゃなきゃ自分はよくなれないって固執してしまうと、違う状況のときにだめだと感じてしまうので、余裕も必要だなと思います。少しのほころびがあっても対応できるように、心にゆとりをもって体と向き合ってほしいですね。

【マンガ】アスリートと生理あるある

【前編を読む】 「あからさまにする勇気が必要かな」ぺこ&りゅうちぇる夫妻が明かした"生理・性教育”に対する“本音”

(上田 忽子,工藤 里紗)

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