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日本の企業は入社後3年間で約3割が離職する! 調査でわかった「スグにヤメる新入社員」に“共通する傾向”とは

文春オンライン / 2021年10月26日 6時0分

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©iStock.com

日本の就職試験は不毛な過程が重視される? 採用において「面接」が精度の低い選考方法である“決定的証拠” から続く

 日本では約30年にもわたって「3年で3割の新卒者が離職する」状況が続いている。コストをかけて学生を採用した企業にとっても、そのような現状は由々しき事態だ。離職に歯止めをかけられない理由は何なのだろうか。そして、離職者を減らす方法はあるのだろうか。

 ここでは、長年人事業界に携わる辻太一朗氏、曽和利光氏の著書『 日本のGPAトップ大学生たちはなぜ就活で楽勝できるのか? 』(星海社新書)の一部を抜粋。3年以内に離職してしまう新入社員たちに見られる傾向を紹介する。(全2回の2回目/ 前編 を読む)

◆◆◆

何十年も続く「3年で3割の新卒者が離職」する事実

 厚生労働省が2020年に実施した調査によると、2017年3月に大学を卒業して就職した大卒の新卒社員のうち、3年以内に仕事を辞めてしまう人は32.8%でした。その内訳を見てみると、1年以内に辞めた人は11.6%、2年以内が11.4%、3年以内が9.9%となります。1年目に辞める人が最も多く、経験を重ねるごとに少しずつ離職率が低くなる傾向にあることがわかります。

 さて、この状況はいつからあったものなのでしょうか。そこで、さらに30年前からのデータをすべて見てみると、バブル崩壊の翌年、1992年が23.7%と最も離職率が低く、逆に最も高いのは2004年の36.6%という結果でした。しかし、いずれにせよ、この30年間、おおよそ3割の大卒の新入社員が離職していることに変わりはありませんでした。

 つまり、よく巷で聞くことの多い「最近のゆとり教育で育った若者は我慢が足りず、すぐ辞めてしまうのだ」というような事実はまったくなく、3年で3割辞めるという現象は30年前からほとんど変わらない傾向なのです。30年前の学生、つまり現在ではすでに中高年世代の人々も、変わらず「3年3割」辞めていたのです。

原因と考えられるのは「リアリティ・ショック」

 それではなぜ、新卒社員は辞めていってしまうのでしょう。その理由を考えるのに、パーソル総合研究所の2019年に発表された「就職活動と入社後の実態に関する定量調査」は示唆に富むデータが満載です。

 この調査によると、報酬・昇進・仕事のやりがい・働きやすさなどについて、入社後に何らかの事前イメージとのギャップ(リアリティ・ショック)を持ち、「期待外れ」であったと感じる新社会人は76.6%におよぶことがわかっています。実に約8割という驚くべき数字です。

 彼らは何にギャップを感じているかといえば、「報酬・昇進昇格のスピード」(思ったより早く昇給・昇進できない)や、「仕事から得られる達成感」「仕事のやりがい」「仕事で与えられる裁量」などの仕事内容についてでした。

 同調査において、このリアリティ・ショックが高い新入社員ほど、成長実感がなく、仕事を楽しんでおらず、3年以内に離職していることも判明しました。つまり、3年以内離職の原因の一つとして、このリアリティ・ショックが関係していることが窺えます。

学業に力を入れている人は「リアリティ・ショック」が少ない

 さらに、同調査では、どのようなタイプの新入社員が、リアリティ・ショックが高くなってしまうのかについても検討しています。その結果、入社前に「将来やりたいことが決まっていること」との関係が示されています。リアリティ・ショックの高低で分けると、大学3年の冬の時点で、リアリティ・ショックが低い群の6割は、将来のやりたいことが決まっている一方、リアリティ・ショックが高い群は3割を下回っていたのです。

 そして、学生時代に早期に「将来やりたいこと」が決まっている学生(以下、決定層)は、決まっていなかった学生(以下、未決定層)と比較すると、学業に力を入れていることもわかりました。

「学生時代で時間をかけていた活動」という調査項目において、「大学で授業や実験に参加する」という質問でYesと回答した人は、決定層では79.7%に対して、未決定層では66.7%でした。また、「授業に関する勉強(予習や復習、宿題・課題など)」では、決定層で60.3%、未決定層で45.6%、「勉強のための本(新書や専門書など)を読む」では、決定層で48.3%、未決定層で37.8%でした。加えて、「授業とは関係のない勉強を自主的にする」という質問でも、決定層で49.1%、未決定層で31.8%という差がありました。(※上記データ、いずれも1%水準で有意差あり)

「やりたいこと決定層」は学業、「未決定層」は趣味・クラブ・アルバイト

 さらに興味深いことに、同調査では「学生時代で最も重点を置いていたこと」(まさに、これは「ガクチカ[編集部注:学生時代に力を入れたこと]」です)を単一回答で答えさせているのですが、決定層と未決定層では、まさに対照的な結果となりました。

 決定層が選んだものは、「資格取得」「勉強」「豊かな人間関係」でしたが、未決定層が重視していたのは、「アルバイト」「クラブ」「趣味」でした。そして、選ばなかったものは逆転し、決定層は「アルバイト」「クラブ」「趣味」で、未決定層は「資格取得」「勉強」「豊かな人間関係」でした。

 この結果を、これまでの我々の調査や考察と合わせてみると理屈がつながるように思えます。つまり、学業に力を入れている学生は、将来やりたいことを入社前に早期に決定していて、その結果リアリティ・ショックが少なく、離職もしにくくなる傾向がある。逆に、あまり学業に力を入れずに、自分のやりたい趣味やクラブ、アルバイトに注力している学生はなかなか将来やりたいことが決まらずに、就職後にリアリティ・ショックを受ける可能性が高く、そして離職をしやすくなる可能性があるということです。

 これまで採用面接での「ガクチカ」質問で、クラブやアルバイトのことばかり聞いてきた採用担当者にとっては、意外な結果ではないでしょうか。

「好きになれること」自体は高評価できる

 ここまで、クラブやアルバイトに力を入れている人の「傾向」について、調査にもとづいて述べてきました。簡単にいえば「決してプラスとはいえない」という、長年採用面接を行ってきた筆者(曽和)にとっても驚きの結果ではありましたが、なぜこのようなことになったのかについて、ここからは考察してみたいと思います。

 そもそも、クラブやアルバイトはどのように始めるものでしょうか。大学生になったら、全員がやらなくてはならない義務でしょうか。当然そうではありません。これらは学生が自発的に好きで行ったことです。嫌ならやらなくてもよいことです。

 もちろん、そういう「やらなくてもよいこと」を自発的に始めること自体は大変素晴らしい行動であり、それを高く評価する企業も多いでしょう。クラブやアルバイトを頑張っている人が悪いなどということは決してありません。ここはくれぐれも誤解のないように強調しておきます。

 このように好きなことを頑張れるということはまったく悪くありません。さまざまなことの中から特定の対象を「好きだ」と感じてコミットできることは才能ですし、それを高いレベルで追究できることは素晴らしいことです。近年では、自分の好きな領域に熱中してのめり込んで、深い専門性を身につけることができる、いわゆる「オタク気質」を高く評価する企業はとても増えています。ですので、繰り返しますが「物事を深く好きになることができること」「熱中できること」「没頭できること」自体に関しては高く評価されるでしょう。

問題は、好きなこと「しか」頑張れないこと

 ただ、好きなことであれば、それをモチベーション高く頑張ることができるというのは当然のことともいえます。極端な例ですが、採用面接の際に、「私はディズニーランドが好きで、年間パスポートを持っていて、毎週のように通っているので、年間数十回も行っています」と聞いたところで(実際にそういう自己アピールをしてくる人は存在します)、面接官は「それはすごい継続力だなあ」などとは思いません。ただ単に、「この人はとてもディズニーランドが好きなのだなあ」と思うだけで、採用上の評価に組み込むことはないでしょう(むしろ、すごいのはその人ではなく、その人を年に数十回も呼び寄せるディズニーランドです)。

 ですから、好きになれること自体は評価されても、好きなことを頑張ることができることはそれほど評価されない場合が多いのです。むしろ、評価に関係してくるのは、好きでもないこと、義務でやらねばならないこと、やりたくもないのに巻き込まれてしまったことで、どのぐらい頑張ることができるかどうかです。なぜなら仕事で高い業績を出せる人は、このような「好きでもないこと」においてでも頑張れる人だからです。

どんな仕事にもたくさんある「嫌なこと」を頑張れるか

 すでに何年も仕事経験のある社会人の皆様には釈迦に説法ですが、毎日やっている自分の仕事がすべて好きなことばかりでできているという幸運な人はほとんどいません。好きな領域の仕事に就いていたとしても、その中には雑務やらルーチンワークやらトラブル対策やら、嫌なことも多分に含まれているのがふつうです。それらをこなさなければ、結局は、好きな領域の仕事であっても、最終的には高い成果を上げることは難しいのが現実です。それで、高業績者は「嫌なことでも頑張れる人が多い」のです。

 以上のような考え方は、多くの企業の採用面接における基準の一つになっています。ですから、好きなこと「しか」頑張れないと判断されると、低い評価につながる可能性が高くなるのです。実際、この評価の考え方は、義務でやらなければならない学業は頑張らずに、趣味やクラブ、アルバイトという自分の好きなことばかりに注力している学生はリアリティ・ショックを受けやすく、離職しやすいということにも符合します。

 やはり、面接官は「ガクチカ」で学生が好きなことについての話ばかりするのを黙って聞いていてはいけませんし、就職活動をしている学生の側も、「自分は好きではないことでも頑張れる」ということをきちんと証明するために、趣味やクラブ、アルバイトだけではなく、学生の最大の義務である学業についても話すべきなのです。

(辻 太一朗,曽和 利光)

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