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「50人の組員がいれば50票は入る。家族や知人も合わせれば、数百票と増えていく」 “実弾”飛び交う選挙戦でヤクザが強い「当然の理由」《10.31衆院選投開票》

文春オンライン / 2021年10月23日 17時0分

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©️iStock.com

 衆議院選挙が19日に公示され、12日間の選挙戦へと突入した。

 ここから31日の投開票に向け、本格的な戦いがはじまっていく。今回の総選挙では、新型コロナウイルスの第6波に備えた感染防止対策やコロナ禍で疲弊した経済の立て直しなど、争点となる課題は多い。

 また、自民党の岸田文雄首相が就任してから解散までは、わずか10日間しかなかったうえ、解散から投開票までは17日間といずれも戦後最短のスケジュール。さらにコロナ禍での選挙戦と、まさに異例ずくめの選挙となっている。

 テレビや新聞をはじめとしたメディア界隈も全国的に総選挙一色モードとなるなか、実はあまり関係性がみられそうにない暴力団業界でも選挙となると活動が活発化する。

 当然のことながら、暴力団組員らも有権者だ。

 そして、暴力団の持つ組織性の高さは「禁断の集票マシーン」となりうる。さらに、各候補陣営の演説会や集会などでは、会場を盛り上げるために組員を動員することもあるのが実態だという。(全2回の1回目/ 続きを読む )

かつては選挙戦で暴力団に「カネが出た」

「国政選挙でも地方選挙でも、かつてはかなりの額のカネが出た。当然のことながら、票集めのためだ。国会議員のセンセイ方は『勝つだけでなく、どれだけの票を獲得したか』という実績が必要になる。地方議員も自分の選挙はもちろんのこと、国政選挙でもまとまった票を集めないと所属する党の中で立場がない。だから選挙となると必死になる」

 東京を中心に活動している指定暴力団幹部は、選挙での各陣営の内情についてそんな風に明かす。

「例えば組織に50人の組員がいるとする。上意下達だからこれだけでまず50票は入る。親分が決めたらそうなる。さらに、組員の家族や知人らにも特定の候補者への投票を依頼するとなると、これが200~300票と増えていく。この票は大きい。地方選挙だったら、これで当落が決まってしまうこともある。(一度お願いされた後も)当落の情勢が厳しく競っていれば、(候補者陣営が)『あと50票だけでも何とかなりませんか?』とさらに頼んでくることもあった。当然、先方はこちらがヤクザと分かったうえで依頼してくる」

 当然だが、選挙においてこうした票の取りまとめを依頼してのカネのやり取りは、公職選挙法に違反することとなる。民主主義の基本となる、公正であるべき公職選挙を害する行為として、選挙違反に向ける捜査当局の視線は厳しい。最近では2019年7月の参院選・広島選挙区で、自民党の河井克行・案里夫妻が、買収行為を行ったとして、揃って公職選挙法違反の買収容疑で逮捕された。

過去には選挙で暴力団幹部が逮捕のケースも…

 そんな風に国と地方を問わず、選挙をめぐっては暴力団を介して「実弾が飛び交う」やり取りが行われることがある。この場合の実弾とは、暴力団の対立抗争事件などで使われる銃弾の意味ではなく、「現金」のことを指す。例えば前述の河井陣営は、暴力団こそ介在していないものの、参院選で約2900万円の“実弾”を飛ばしたと報じられている。

 同様の公職選挙法違反容疑で指定暴力団・住吉会の最高幹部が摘発されたことがあった。2015年4月に行われた千葉県議選の告示前の3月、幹部はある候補者を当選させるため飲食店で会合を開き、有権者13人に飲食の接待をして投票や票のとりまとめを依頼したとして、同年の6月に逮捕された。

 事件摘発後、住吉会最高幹部らが支援していたとされた県議は釈明に追われた。

 記者会見を開き、「(選挙で)反社会的勢力から支援を受けたことはない」と強調。飲食店での会合に出席したことは認めたが、「同窓会と聞いていた。選挙違反に加担した覚えはない」と訴えた。さらに、「選挙関連の会合とは思わず、会食の主催者や金銭負担がどうなっていたか、票のとりまとめが行われたことなどは知らなかった」と主張。会合での最初のあいさつの後で、暴力団幹部が出席していたことに気付いて、「まずいなと思った」と語った。

 千葉地裁はこの年の8月、公職選挙法違反の罪で住吉会最高幹部に懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。判決では有権者13人への投票依頼と、その報酬として1人当たり約4000円相当の酒食の接待をしたとの事実関係を認定した。

 判決理由では、「立候補予定者が会合に参加することを明確に認識した上で、会合費を全額負担した。少なくとも現場での共謀があり、明確な故意があった」と指摘。幹部は事件となった会合について「同窓会のつもりだった」と述べるにとどまり、県議への票の取りまとめの意図まで明らかになることはなかった。

組員が「組織的選挙運動」を行うことも…

 多くの選挙において、暴力団へはこれまで述べたような単発の協力依頼がほとんどだ。だが、首都圏に活動拠点を構える指定暴力団のベテラン幹部は、「ある組織の話だが」と前置きしたうえで、選挙のたびに組員が駆り出されるケースもあると打ち明けた。

「この組織は姐さんが(創価学会の)学会員で、選挙のたびに組員の若い衆が公明党の応援に集められる。街頭演説や集会などがあれば聴衆として加わる。当然、組員たちは公明党の候補者に投票することになる」と話す。

 ここで言う「姐さん」とは、暴力団業界では親分=組長の妻のことを指し、どこの組織でも一定程度の影響力があるとされている。このケースでは公職選挙法上は違法なことではないし、正当な投票行動と言えるが、暴力団という組織の集票力がいかんなく発揮される場でもあるそうだ。

 長年にわたり暴力団犯罪の捜査を続けてきた警察当局の幹部はこう指摘する。

「政治家という立場にある以上は、暴力団の資金源を断つために、政府の犯罪対策閣僚会議などの申し合わせでは日常的に暴力団排除運動への協力依頼をし、企業や一般市民に対しても暴力団との関係遮断を要請している立場だ。だからこそ、政治家本人だけでなく、その秘書なども、ヤクザとの付き合いが発覚するなどというスキャンダルは決して許されないだろう」

 現在、連日のように各候補者による「お願い」コールが全国で響き渡っている。

 近年は、かつてのように公然と暴力団組織に票のとりまとめを依頼することは減ってきているという。ただ、いまでも「裏社会との関係はない」という保証はないまま選挙戦は進んでいる。水面下では何が行われているかは不明なことが多いのが実態なのだ。( #2に続く )

汚職逮捕の町長の背中に刺青、議員からパーティー券購入依頼、フロント企業が候補者へ献金… ヤクザと選挙を巡る“水面下の狂騒曲”《衆院選投開票間近》 へ続く

(尾島 正洋/Webオリジナル(特集班))

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