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汚職逮捕の町長の背中に刺青、議員からパーティー券購入依頼、フロント企業が候補者へ献金… ヤクザと選挙を巡る“水面下の狂騒曲”《衆院選投開票間近》

文春オンライン / 2021年10月23日 17時0分

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写真はイメージ ©️iStock.com

「50人の組員がいれば50票は入る。家族や知人も合わせれば、数百票と増えていく」 “実弾”飛び交う選挙戦でヤクザが強い「当然の理由」《10.31衆院選投開票》 から続く

 衆院解散による総選挙の投開票が、先の31日に迫ってきた。

 各地で陣営が投票を呼びかける「お願い」コールが響き渡り、全国的に選挙戦モードの真最中となっている。国政、地方を問わず選挙となると、各政党・候補者によって多額の資金がつぎ込まれるため、投票依頼や票の取りまとめなどで買収資金が乱れ飛ぶこともある。そのため、捜査当局による公職選挙法違反事件の摘発も後を絶たない。

 近年では2019年7月の参院選広島選挙区で、自民党の河井案里・克行夫妻が買収行為で公選法違反の罪に問われ、一審で実刑判決を受けた。先日には、克行被告が東京高裁への控訴を取り下げ、懲役3年、追徴金130万円の判決が確定して話題となった。

 かつては暴力団組織に票の取りまとめの依頼が寄せられ、多額のカネが動いたことも多かった。一部の暴力団が、ある種の「集票マシーン」となっていたこともあったという。一方で、集票面だけでなく、暴力団側に政治資金集めのパーティー券の購入を依頼するなど、政治家が“カネ集め”でもヤクザに依存していたケースもある。政治の世界とヤクザの世界には、「水面下のつながりがあった」という証言もある。(全2回の2回目/ 前編を読む )

暴力団幹部が「パーティー券の購入を依頼された」

 首都圏に活動拠点がある指定暴力団のベテラン幹部は「議員が開催する政治資金集めのパーティー券を買わされたことが何度もあった」とかつての経験を打ち明けた。

「パーティー券は1枚につき1万円とか1万5000円ぐらいの値段だった。これを5枚とか、場合によっては10枚ほど買わされる。もちろん券を買うだけで、パーティー自体には出たことがないが…。いずれも議員本人の関係者や、公共工事の受注などで議員のセンセイたちに世話になっているであろう建設関係の事業者たちから頼まれることが多かった。正直、こちらとしてはあまりメリットがないが、付き合いの延長だ」

 このベテラン幹部も「相手はこちらがヤクザだということを知ったうえで頼んでくる」と述べる。また、パーティー券の購入だけでなく、ほかにも「演説会の盛り上げでひと役買ったこともある」と言う。

「ある候補者の支援者という人に頼まれて、若い衆を集めて候補者の演説会が開催される地域のホテルや公会堂などの会場に、『支援者だ』と称して詰めかけた。言ってみればサクラだな。一通り候補者の演説が終わると拍手して盛り上げたりもしたよ」

政治家への寄付で暴力団幹部逮捕の例も…

 前述のようにパーティー券の購入などで政治家の資金集めに協力するという形ではなく、過去には直接的に現金を提供したことで暴力団幹部が摘発されたこともあった。2003年2月に行われた滋賀県草津市長選で、候補者側に数百万円の違法な寄付をしたとして、指定暴力団山口組系幹部が2004年1月、公職選挙法違反(特定寄付の禁止)の疑いで逮捕された。

 この山口組系幹部は、市の工事を請け負う建設会社の実質的な経営者とされ、提供されたのは市長選のための選挙資金だった。公職選挙法違反での摘発にとどまったが、多額の寄付の目的は、工事の受注をめぐり有利な取り計らいを求めるためとの指摘もあった。

 一方で、寄付を受けた候補者は、市の工事を請け負っていた建設会社など8社から約1700万円を集めており、当選後に別の建設会社からの提供資金をめぐって収賄容疑で逮捕され、汚職事件へと発展することにもなった。事件をめぐり公職選挙法違反の罪に問われた幹部は2004年4月、禁錮1年6月、執行猶予5年の有罪判決を言い渡された。

 市長は記者会見で「自分の選挙で逮捕者が出た責任を取りたい。市政を混乱させるわけにはいかない」と述べ辞職した。「事件で逮捕された暴力団組長と面識はない」と強調していたが、一部の建設会社が山口組系幹部によって実質的に支配されていたため、「政治とヤクザ」すなわち「選挙とヤクザ」の関係が指摘され、スキャンダルとなったケースだった。

 その後もこの建設会社からは、滋賀県内の選挙区から選出されていた自民党衆院議員(後に引退)が2003年12月に寄付を受けていたことも発覚。当然のことながら、衆院議員は後に釈明に追われた。政治資金収支報告書によると、この衆院議員が代表を務めていた自民党滋賀県支部は、山口組系幹部の建設会社から2002年に50万円、2001年にも50万円、2000年には200万円の献金を受けており、計300万円に上った。

 献金していた建設会社については、もともと滋賀県警が山口組系のフロント企業と位置付けていたこともあり、説明責任を問われた衆院議員は「建設会社が(暴力団と)関係があることは初めて知った。公共工事の指名入札企業でもあり、知るよしもなかった。(献金については)至急、返却する」と応じざるを得なかった。

逮捕された町長の背中にあったのは…

 ほかにも「ヤクザと選挙」を巡る“事件”は数多く存在する。

 全国の警察本部には暴力団や外国人犯罪グループなどを捜査する部署があり、警視庁には「組織犯罪対策部」が設置されている。通称で「組対(そたい)」と呼ばれているが、組対部内では、暴力団による対立抗争事件や殺人、傷害、恐喝などの事件を「4課」が担当している。

 組対4課は日常的にヤクザを相手にしているため、見た目で気後れしないためなのか、所属する刑事はパンチパーマにサングラス、派手なジャケットなどを着こなしていることも多い。そのため一見すると、「どちらがヤクザなのか?」ということも多々ある。

 長年、現場で知能犯捜査に従事してきた警察当局の捜査幹部OBが、「極めて珍しいことだった」という特異な経験について振り返る。

「関東地方のある町長が特定の業者から賄賂を受け取っていたという汚職事件について内偵捜査を続けていた。容疑が固まり、町長を逮捕したところ、身体捜検で背中に立派な刺青が入っていた。これには当時の捜査員みんなが驚いた」

 身体捜検とは、逮捕後に容疑者の身体的な特徴を確認することを指す。容疑者を逮捕すると顔写真の撮影、指紋の採取などのほか、全裸までではないが服を脱がせて体の手術痕、傷などの特徴について確認する「身体捜検」が行われる。この手続きで背中の刺青が確認されたということだった。

 後に分かったことだが、この町長は組織から足を洗った元ヤクザが地方政治家へと転身し、選挙を経て首長になっていたのだった。もちろん元ヤクザということとは関係なく、住民目線の町政の運営を行えば評価をされただろうが、結果的に汚職事件で逮捕されることになってしまった。そのため、刺青が捜査員たちの目に留まることになったのである。

 前出の捜査幹部OBは「長年の経験の中でも、こうした経験はこの時だけだった」と述べている。

(尾島 正洋/Webオリジナル(特集班))

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