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女子高生が組長に。薬師丸ひろ子が見せる情念は、実にやくざ映画だ!――春日太一の木曜邦画劇場

文春オンライン / 2021年10月26日 17時0分

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1981年(112分)/KADOKAWA/1980円(税込)

 今回は『セーラー服と機関銃』を取り上げる。

「青春映画」あるいは「アイドル映画」の傑作として名高い作品だが、最新刊『やくざ映画入門』(小学館新書)では「やくざ映画」のカテゴリーに入れさせてもらっている。「やくざ映画」としても本作は傑作なのである。

 やくざ映画は「やくざが主人公の映画」だけではない。「やくざ社会が舞台の映画」を筆者は「やくざ映画」と定義づけている。主人公がやくざでなくとも、外部の人間が巻き込まれてしまい、物語がやくざ社会を軸に繰り広げられることになれば、それは「やくざ映画」なのだ。

 そう考えると、女子高生の星泉(薬師丸ひろ子)が親戚の跡を継いでやくざ組織「目高組」の組長になり、麻薬を巡る抗争に巻き込まれていく――という本作は、紛れもない「やくざ映画」といえる。

 しかも、「女子高生がやくざの組長になる」という、ともすれば出オチ的になりかねない設定を茶化して処理するのではなく、相米慎二監督も出演陣も骨太なドラマとして真摯に向き合っている。そのため、見た目は可憐でどう考えてもやくざには思えない薬師丸ひろ子が、途中からはかつての鶴田浩二や高倉健のような「頼もしいやくざの組長」に見えてくるのである。

 泉が率いることになる目高組は古くから続く由緒ある組だが、既に勢力は衰え四人の組員しかいない。泉が跡を継がなければ、彼らは対立する大組織に殴り込んで玉砕するつもりだった。それを知った泉は彼らの命を守るため、跡を継いだのだ。そして持ち前の気丈さを発揮して、強面のやくざ相手にも一歩も引かない親分ぶりを見せていく。気づけば「機関銃ぶちこまれて、大事な組員殺されて、黙って引っ込んでるわけにいかないわよ」といった勇ましい台詞も違和感がなくなっていた。

 そんな彼女の前に立ちはだかるのは、武闘派やくざの関根(佐藤允)、悪徳刑事の黒木(柄本明)、そして麻薬取引の元締めの通称「太っちょ」(三國連太郎)――いずれも曲者の名優たちが演じる、一筋縄でいかない強敵ばかり。だからこそ、頼りがいのある目高組ナンバー2の佐久間(渡瀬恒彦)に支えられながら彼らと対峙する様が燃える。

「殴り込みよ」と子分たちを引き連れて敵地に乗り込む泉はセーラー服姿。にもかかわらず任侠映画の着流しやくざの勇姿が自然と重なってくるほど、情念がほとばしっていた。そうした熱い展開が続いただけに、終盤に訪れる「祭の終わり」のような展開が寂寥感にあふれ、切なくなる。

 その苦みもまた、実に「やくざ映画」らしいのである。

(春日 太一/週刊文春 2021年10月28日号)

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