1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

「起業は意識が高い人の話」「失敗すると借金地獄で家族離散」… 18年サラリーマンを勤めた41歳男性が明かす“起業”の意外なリアル

文春オンライン / 2021年10月26日 6時0分

写真

佐々木紀彦さん

「東洋経済オンライン」編集長、NewsPicks創刊編集長などのニュースサイトを経て、2021年6月に経済人に役立つコンテンツサービス会社「PIVOT」を起業した佐々木紀彦氏。41歳で、18年間勤めたサラリーマン生活に別れを告げた佐々木氏は、「起業は一部の意識が高い人のもの」ではないと語る。 『起業のすすめ さよなら、サラリーマン』 を刊行した佐々木氏が解き明かす、起業にまつわる“誤解”とは――。

◆◆◆

 仕事で理不尽な指示をされたり、上司や同僚と意見が合わない時。持論を、渋々、飲み込んで、会社に合わせていないでしょうか。本当にやりたいことがあるにもかかわらず、我慢しているとしたら、とても勿体ないことです。

 そんなあなたにお勧めしたい選択肢が、「起業」です。

 私自身、18年間のサラリーマン生活に別れを告げ、41歳にして起業中ですが、「人生で最高の選択だった」と言い切れます。その醍醐味とは、「自分の人生の“独裁者”になれること」です。

 けれども、「いやいや、起業するというのは、一部の意識高い人やぶっ飛んだ人の話であって、自分には関係ない。成功する人はわずかだし、リスクが大きすぎる」と思っている人も多いのではないでしょうか。そんなことはありません。もちろん、覚悟と実力と幸運は必要ですが、以前ほど大きなリスクではありません。いまや、普通の会社員が起業する時代が到来しているのです。起業も多様化しており、世界市場を狙うスタートアップもあれば、個人や少人数で行うミニ起業もあります。

 ここでは、私自身も起業するまで思い込んでいた「起業にまつわる誤解」のいくつかを解き明かし、いかに起業がやりやすくなっているか、成功させるにはどうすればよいか、をお伝えできればと思います。

「起業=若者の特権」ではない

「起業にまつわる誤解」のまず1つ目。それは、「起業=若者の特権」という考えです。

「学生時代に起業した」という話は、確かによく聞きます。超有名な起業家だと、ビル・ゲイツは19歳、マーク・ザッカーバーグは20歳、日本だとホリエモンは23歳、サイバーエージェントの藤田晋さんは24歳で起業しています。しかし、彼らはあくまでほんの少数派です。

 意外かもしれませんが、データを見ると日本の起業時の平均年齢は43.7歳、起業の本場アメリカでも42歳です。起業の中心は40代。中年世代ど真ん中なのです。

 コロナ禍で有名になったZoom創業者が起業したのは41歳でした。日本でも一時大ブームとなった音声SNSサービスClubhouseも、創業者は40代です。過去の日本の例でいうと、本田宗一郎が本田技研工業を立ち上げたのは42歳でした。そもそも年功序列の色がいまだ強い日本では、米国以上に「中年起業」は有利だと言えるでしょう。

 では、「中年起業」の強みとは何なのか。まずは「人脈」があることです。今まであなたの人生で積み上げてきた人とのネットワークが、武器になるのです。大きな予算や事業を動かせるような同級生や社外のビジネスパートナーが、あなたの起業を助けてくれるかもしれません。

 それから、中年ならではの「経験」も強みです。ITについての知識なら、確かに若い人の方が得意でしょう。ただし実際のビジネスは、IT知識やロジック(理屈)だけでは動きません。実務を通じて学ぶ実践知、心理戦に勝つ交渉術、人をやる気にさせるマネジメントなど、あなたの経験が役にたつ領域がたくさんあります。

 また、年を取ってるがゆえの「欲望コントロール力」も見過ごせません。人にもよりますが、若い時はどうしても欲に溺れやすい。3Gすなわちギャンブル、ゴルフ、外車、それから、お酒、異性、怪しい投資案件などの誘惑に負けて、事業に失敗してしまう若い起業家は少なくありません。けれども40歳ぐらいになると、そんな欲も落ち着いてきます。公私において一つや二つの挫折は味わって、文字通り大人になっているはずです。幸か不幸か、そもそも若者起業家のようにちやほやされることもありません。

起業コストは平均25万、失敗しても借金リスクは少ない

「起業にまつわる誤解」の2つ目は、「お金持ちでなければならない」という思い込みです。

 すでに財産があったり、実家がお金持ちでなければ起業できないのではないか、と感じている方も多いはずです。けれども、昨今のITサービスの進歩で、起業の平均コストが劇的に下がっています。会社設立に関連する登記などのコストは、たった25万円程度です。マネーフォーワードやfreeeといった便利なITサービスを使えば、手軽に出来ます。同じくメールはGメール、コミュニケーションはスラック、バックオフィス業務はスマートHR、電話番はfondeskなどのITサービスでコスト削減が可能です。採用、決済、名刺管理などでも同じようなITサービスがあります。

「起業にまつわる誤解」の3つ目は、「失敗すると借金地獄になる」というものです。サラ金の取り立てに追われて、家族が離散する。まるで「黒革の手帖」に出てくるようなシーンを思い浮かべるかも知れません。しかし、それはあくまで昔ながらのドラマの世界です。

   現在の起業における主な資金調達方法は、株式(エクイティ)であって、負債(デット)ではありません。有望な事業であれば、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から出資してもらうことも可能ですし、事業に失敗したとしても、株の価値がゼロになるだけです。それによって、あなたの創業パートナーや投資家の出資金は消えてしまいますが、借金を抱えてヤクザに追い回されるようなことはまずありません(ただし、ベンチャーキャピタルから出資を受ける際には、「株式買取請求権」をできるだけ含めないようにするとともに、発動される可能性を低くするよう交渉する必要があります)。

副業起業家という選択肢も

 起業にまつわる誤解の4つ目は、「エリートでなければならない」です。

 たとえば、キャンプファイヤーという会社を創った家入一真さん。東京都知事選に出馬したこともあるので覚えている人もいるかも知れません。じつは家入さんは高校を中退しており、いわゆるエリートではないです。けれどもキャンプファイヤーは、超有望企業として近々上場が予定されています。このように起業の世界には、学歴はなくても世間知や現場力がある、商才にあふれた人がたくさんいます。2020年に起業した人たちの最終学歴データを見ても、大学・大学院卒は4割弱にとどまってます。学歴がいいほど最初は確かに有利かもしれません。けれども、時間が経って実戦の結果が出てくれば、学歴など関係なくなるのです。

 そして、最後にひとつ。「起業にまつわる誤解があるのは、よくわかった。けれどもいきなり会社を辞めるのは、まだちょっと決心がつかない」という人におすすめなのが、「副業起業家」です。まずは会社に勤めながら、副業として起業をはじめるのも手かもしれません(実際、「副業起業家」は、ちょっとしたブームになっています)。そうなのです。やる気さえあれば、どんなかたちでも、何歳であっても起業はできるのです。起業にトライしてみて、向いてないとわかったら、すぐさま撤退すればいいのです。ちなみに私自身、「もし40歳になってしまったら、もう結構なおじさんで、体力的にガタも来るかなあ」と、年を取ることを恐れていました。けれどもいざ自分が40歳を過ぎてみて、食生活と運動に気をつければ、まだ充分に動けるし、人生のPIVOT(方向転換)はできると感じています。

(佐々木 紀彦/翻訳出版部)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング