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《大滝詠一に責められても…》「歌のなかでくらい、いい思いをさせてあげたい」松田聖子曲の作詞時にもブレなかった松本隆の“創作信念”

文春オンライン / 2021年11月5日 17時0分

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松本隆氏 ©文藝春秋

「多用するヒットメーカーもいるけれど…」稀代の作詞家・松本隆が歌詞制作で“使わない”ようにしている“意外な言葉” から続く

 大滝詠一の『君は天然色』、松田聖子の『白いパラソル』、矢沢永吉の『安物の時計』……。日本ポップス史に燦然と輝く名曲の数々を送り出してきた作詞家、松本隆氏。彼は作詞活動において、一体どのような考えを持ち、作品を生み出してきたのだろうか。

 ここでは、藤田久美子氏が作詞家としてデビュー50余年を数える松本隆氏の“言葉”をテーマに執筆した著書『 松本隆のことばの力 』(集英社インターナショナル)の一部を抜粋。創作の秘密に迫る。(全2回の2回目/ 前編を読む )

◆◆◆

98パーセントのウソに2パーセントのほんと

 詞は胸を開けて心の中身を見せるようなものだから、詞を書くのはとても恥ずかしいという気持ちがずっとあった。だからと言って、自分を全部見せるわけではない。100パーセントの想像では歌詞にならないのだが、98パーセントのウソに2パーセントのほんとが振りかけてあるくらいがちょうどいい。それが逆になると、日記を読まされているみたいで、聴くのがつらくなる。現実って、たいていつまらないから、歌のなかでくらい、みんなにいい思いをさせてあげたいと思って書いていた。

 はっぴいえんどの松本隆と松田聖子の松本隆は別だという先入観が、とくにはっぴいえんどのファンにはあるみたいなのだが、それは間違いだと断言しよう。作詞活動30周年記念で出したCD‐BOX『風街図鑑』(1999年発売)がそれを証明している。はっぴいえんどの次に松田聖子の曲を並べても全く違和感はない。

「大滝詠一も松田聖子も同じなのか」と責められた2曲

 大滝さんから、大滝詠一も松田聖子も同じなのかと責められたことがあった。『君は天然色』(曲/大滝詠一、1981年発売)と『白いパラソル』(曲/財津和夫、1981年発売)の、どちらの歌詞にもディンギーが出てくるのが気に入らなかったようだ。

〈 渚を滑るディンギーで

 手を振る君の小指から

 

 流れ出す虹の幻で

 空を染めてくれ

 

(『君は天然色』)〉

〈 風を切るディンギーで

 さらってもいいのよ

 少し翳ある瞳

 とても素敵だわ

 

 

(『白いパラソル』)〉

詞はライフスタイル

 細野さんと作った『ガラスの林檎』(1983年発売)は、ボーカル松田聖子版のはっぴいえんどだと思っている。

〈 愛しているのよ

 かすかなつぶやき

 聞こえない振りしてるあなたの

 指を噛んだ

 

 眼を閉じてあなたの腕の中

 せつなさも紅を注してゆくわ

 ガラスの林檎たち

 ガラスの林檎たち

 

(『ガラスの林檎』)〉

 ぼくの場合、詞は生き方だ。詞が、松本のライフスタイルそのものだと言われたことがある。急に歌謡曲を書き出したり、クラシックに詞を付けたり、時代時代で異質なことをやっているようでも、ぶれていないという自信がある。

虚飾なく表現できていた頃

 はっぴいえんどの頃は、自分のために書けばよかったから恣意的な技巧を使わずともナチュラルに表現することができていた。解散後、1973年にプロデュースした南佳孝の『摩天楼のヒロイン』や、1975年に作った鈴木茂のアルバム、同じ年、矢沢永吉さんのソロアルバムに書いた『安物の時計』は、その延長線上で作った。

『BAND WAGON』は、茂がひとりで渡米して、茂のほかは全員が現地のミュージシャンでレコーディングしたアルバムだ。インストゥルメンタルを除いて全曲ぼくが歌詞を書いたのだが、国際電話で伝えられてくる文字数に合わせて歌詞を作り、それをまた電話で読み上げるという作り方だった。アメリカとの国際電話が3分3000円もした時代で、一曲作るのに電話代が10万円もかかった。この時のぼくのことばは、ぼくの等身大だった。それは茂の歌だったからだ。とくに『微熱少年』は、ぼくの創作のメインテーマだったから、それを表現させてくれた茂には感謝している。

〈 遠い電車の響き 路地から路地に伝染り

 目覚めれば誰もいない部屋 夜が忍び寄る

 

 ほらね 嘘じゃないだろう

 路面電車は浮かんでゆくよ 銀河へと

 

(『微熱少年』)〉

 

『安物の時計』は、矢沢永吉さんのソロデビューアルバム『I LOVE YOU, OK』(1975年)の一曲だ。矢沢さんからのオファーで作った。

 矢沢さんはとても礼儀正しい人で、詞に関してのオーダーは何もなかった。はっぴいえんどのほうがキャロルよりもデビューは早いのだが、矢沢さんとは同い年だ。この歌は気に入ってもらえたようで、ずっとライブで歌ってくれている。

〈 あー、やっとお前の顔も

 忘れられそうなのに

 あー、今も想い出させる

 蜜のような時間を

 チッチッ チッチッ 悲しみきざむ

 チッチッ 心に

 

(『安物の時計』)〉

【前編を読む】「多用するヒットメーカーもいるけれど…」稀代の作詞家・松本隆が歌詞制作で“使わない”ようにしている“意外な言葉”

(藤田 久美子)

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