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高津臣吾監督の“言葉の力”に導かれて…向坂樹興アナが語るヤクルトの“異例のシーズン”

文春オンライン / 2021年11月14日 11時0分

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放送席のゲーミングチェア ©向坂樹興

 神宮のベンチに選手用のゲーミングチェアが設置された折、実は放送席にも全く同じチェアが用意された。向坂樹興アナウンサーはその座り心地を「抜群です。素晴らしい椅子ですね」と絶賛する。

 今季のSWALLOWS BASEBALL L!VEで実況を担当した成績は5勝2敗2分。勝率.714(CSスポーツライブ+副音声を含む)。「去年からは考えられない数字です」と笑うが、言葉を生業にしているからこそ、今季高津臣吾監督が大事にした「言葉」は、向坂アナの心にも強く響いていた。

 オリンピックイヤー。前年最下位から6年ぶりのセ・リーグ制覇。

 スワローズとともに駆け抜けた異例のシーズンを振り返り、実況席から見た2021年のスワローズを語ってくれた。

最初の実況は「野村克也追悼試合」

「今季最初に実況した試合は開幕3戦目の阪神戦で、野村克也さんの追悼試合でした。先発は2年目の奥川恭伸。両チーム全員が「73」を着けてのメモリアルゲームでしたが、2-8と敗れ、開幕からの3連敗。正直不安でした」という向坂アナだが、隣に座る解説陣も軒並み最下位か5位を予想していた。その後の快進撃など誰も予想していなかったのだから無理もない。しかしホセ・オスナ、ドミンゴ・サンタナという新外国人が合流すると、チームは浮上を始めた。

「6月の交流戦、PayPayドームのソフトバンク戦では画期的な試みに参加しました。スカパー!プロ野球セットの特別企画で、ソフトバンク主催試合の中継で副音声を担当しました」

 6月11日と12日の両日に渡って、Twitterでもハッシュタグを付けたツイートを募集。スワローズファン視聴者からの声をリアルタイムで実況に織り交ぜた。

 どんなにスワローズ贔屓でも構わないとの前提で行われた2日間の副音声。試合も0-1、2-4でヤクルトが連勝。最後にはスワローズOBで解説者の笘篠賢治さんと二人で声を合わせて「すわほー!!」を叫ぶほど。ファンからも「またやって欲しい」と声が上がる企画だった。

「テレビをご覧の皆さんは、『大の車好きは』『過去にロジンバッグをたくさんつけていた選手は』など私が気付かないような視点で解説者の話を聞きたいのだと勉強になりましたし、笘篠さんの時代の話を聞くことも出来て、『本当に楽しかったね、またやりたいね』とお互い同じ感想でしたね」

勝手の違うホームゲーム

 今年はオリンピックイヤーでもあり、神宮球場が使えない間には地方球場を転戦し、東京ドームを借りてのホームゲームも開催された。向坂アナも草薙球場と東京ドームの実況を担当した。ファンにとっては新鮮だったが、実況にはいつもと違う苦労もあった。

「神宮ならブルペンやネクストバッターズサークルが実況席から見えるので、継投のプランニングがある程度分かるし、どの打順で誰が用意しているか即座に分かるのですが、例えば東京ドームだと、実況席からネクストの打者がヘルメットしか見えないんですよ。ですから一生懸命立ち上がって覗き込んでみたりしました。それに草薙球場も東京ドームもブルペンは見えませんから、読みにくいというところはありましたね」

放送ブースはコロナで使用できず…

 8月24日の草薙球場では、コロナ禍ならではの「初めての経験」をした。

 以前は放送ブースの中で実況出来たのだが、今年は客席に実況席をしつらえて、解説の井端弘和さんと並んで実況することになった。

「神宮の放送席では、解説者とアナウンサーの間にアクリル板があります。そのアクリル板を、スタッフが草薙球場用に送ってきていました。客席のテーブルの上に板を立てるのですが、野外だから風で倒れてしまう。何で固定しようとしても難しいので、試合開始1時間くらい前にスタッフが『向坂さん、すみません。マスクをしてしゃべってください』と」

 生涯初、試合終了までマスクをしての実況となった。「長い試合にならなくて良かったと思います。結構大変でしたね」と苦笑いする。

 一転、中3日で訪れた東京ドームでは、「エアコンがこれだけ完備されて、なんと快適な放送席なのか!と率直に思ってしまいました」。今夏の酷暑を象徴するエピソードだ。

「絶対大丈夫」に心揺さぶられた

 ペナントレース終盤には「絶対大丈夫」という高津監督の言葉が、選手の心を奮い立たせ、ファンの心も強く揺さぶった。

 それはアナウンサーにとっても印象深い言葉だった。

 高津監督の著書『二軍監督の仕事~育てるためなら負けてもいい~』という本から引用して、向坂アナはこう言う。

「二軍監督時代から、高津さんは『野球は言葉のスポーツでもある。普段から言葉で確認し合い、意思疎通を図っておくことが、プレーの精度を高め、組織として強さを発揮できるようになる』とおっしゃっています。NPB、メジャー、海外の色々なリーグ、独立リーグまで経験されている、その経験が高津さんの言葉一つひとつに生きているのでしょう。まさに高津さんの言葉というのは非常に大きいですし、その言葉をお作りになったのは、きっと野村克也さんから受け継いだ部分があると思います」

 10月7日、神宮の巨人戦。この日、向坂アナはヒーローインタビュー担当だった。

 9回1死まで巨人投手陣に無安打と完璧に抑えられていて、ノーノー継投もあり得る展開。そして0-0の引き分けならヒーローインタビューは行われない。

 しかし、抑えのビエイラから塩見泰隆がチーム初ヒットを打つ。そして執拗な牽制に負けず盗塁を決め、山田哲人の遊撃強襲ヒットでサヨナラ勝ちを収めた試合だった。

ヒーローインタビューは「ショー」

「ヒーローインタビューは『ショー』と考えています。まずはスタンドのファンが一番知りたいこと、聞きたい言葉、それをいかにショーアップして聞いていくかを心がけています。優勝に向けての二人の気持ちというのを素直に、フランクに引き出すことが出来た、嬉しいヒーローインタビューでした」

 晴れ晴れとした表情の塩見が「今季一番の盗塁」と胸を張り、山田も多弁で、「打った瞬間はちょっと『終わった』と思ったんですけど」と笑わせる。ヒーローたちの“トークショー”を盛り上げた。

 天王山の神宮6連戦で唯一の敗北となった10月9日に今季最後の実況を終え、その後はリーグ優勝までをテレビで見守った。

「テレビの向こうで胴上げの直前、高津監督が輪の中に入って、まず『言葉』をかけましたよね。きっと高津さんの言葉がみんなに浸透したからこその優勝で、この後クライマックスシリーズ、日本シリーズに繋がっていく期待感がありました。いきなり胴上げじゃなく、言葉からというのが高津さんらしいなと思いましたね」

 最後の最後まで優勝の行方が分からない、緊迫したペナントレースを、スワローズは一致団結して乗り切った。それを見る向坂アナの心にも、何度も「絶対大丈夫」という言葉が浮かんでいた。言葉の意義や意味の大きさを感じながら過ごしたシーズンだった。

 オリックス・バファローズとの日本シリーズを勝ち抜き日本一となるまでは、ファンとともにスワローズを見守る毎日だ。高津スワローズのヒーローたちが、どんなプレーを見せ、どんな声を聞かせてくれるのか、今度は自宅のソファで楽しみに待っている。

 向坂樹興(さきさか・たつおき) 1982年フジテレビ入社。報道・情報番組などで多岐に活躍し、現在、CS放送フジテレビONE『プロ野球ニュース』、『SWALLOWS BASEBALL L!VE』実況などを担当。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2021」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト https://bunshun.jp/articles/49623 でHITボタンを押してください。

(HISATO)

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