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「帝王切開は無麻酔」「腸が出たままになった犬も…」逮捕された“悪質ブリーダー”が飼育していた1000頭の犬たちの悲哀《スタッフはわずか数名》

文春オンライン / 2021年11月8日 6時0分

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©iStock.com ※画像はイメージです

 虐待されたペットは、声をあげられない被害者だ。

 被害者が喋れないからこそ、時に動物虐待では信じられないような事件が起きる。

 今年6月には改正動物愛護法が施行され、悪質なブリーダーの取り締まりは強化されたものの、船出は深刻なものとなった。

 長野県警は11月4日、松本市のペット繁殖場「アニマル桃太郎」の社長・百瀬耕二容疑者(60)と社員の有賀健児容疑者(48)を動物愛護法違反(虐待)の疑いで逮捕した。アニマル桃太郎は松本市内の2カ所の繁殖場で計約1000頭の犬を飼育していた。

「家宅捜索をした際には、繁殖場にところ狭しと5、6段積み上げられたケージに、複数の犬が押し込められていました。糞や尿も垂れ流しで衛生環境は最悪。乳腺に腫瘍があったり失明していたりする犬も多かったようです。そもそも数人のスタッフで、1000頭の犬に目が行き届くはずがありません。これまでにも通報があったようですが、状況は改善されず30年もの長期にわたり、劣悪な環境下で飼育されていたようです」(捜査関係者)

昔から行われていたアニマル桃太郎による「虐待」

 実は、こうした収容所さながらのアニマル桃太郎の虐待は、最近になって発覚したものではなかった。10年程前にアニマル桃太郎の元従業員から証言を得たという関係者が話す。

「今回桃太郎が飼育していた1000頭のうち、200頭はフレンチブルドッグだったと言われています。当時から頭が大きく腰が細い、虚弱な小型犬が流行っており、出産時には帝王切開が必要となるケースが多かったのですが、百瀬容疑者がそれを無麻酔・無資格でやっていると聞き、最初は耳を疑いました。『麻酔を打つと、法律違反になるから打たない』と周囲に“犯行”の謎の言い訳をしていたようです。

 縫合手術は素人で雑だったため、腸が出たままになった犬もいたと聞いています。子犬は母犬の“初乳”を飲むことで免疫をつけます。母犬に適切な処置を施さぬまま、乳をあげるために生かし続けていたようです」

 元従業員は、百瀬から「ここで見たことを口外するな」と脅され、告発するのを非常に恐れていた様子だったという。一方、こうしたアニマル桃太郎の悪評は、以前から業界では知れ渡っていた話のようだ。

保健所も動物虐待を“素通り”

“公然の事実”だった虐待を保健所が「素通りした」と憤るのは別の関係者だ。

「指導の権限があるのは保健所だけですから。知人はアニマル桃太郎の惨状を憂いて保健所に何度も足を運んでいましたが、担当者からの『大丈夫です』の一言でいなされていました。年2回は立ち入り検査に行っているはずですが、保健所は百瀬の言いなりでろくに確認をしていなかったのでしょう。感情論として取り合ってもらえなかったようです。

『狂犬病ワクチンは全頭接種しているのか』と“法的”なケアの確認も取ったようですが、『獣医師が出向き、接種させたと百瀬が言っている』との返答を寄越すばかり。そう言われれば、我々もそれ以上は追及ができず歯がゆい思いをしていました」

 アニマル桃太郎で犬を買う場合は、事務所に犬を連れてきて客と対面させるため、悲惨な繁殖場の現場が外部に露呈することはなかったという。

 だが、今年9月、ようやく県警が繁殖場に家宅捜索に入った。実態解明に向けて動きが進むかと思われたが、桃太郎サイドは思わぬ反撃に出る。

「捜索が入ってから数日後、なんと約1000頭いた犬の大半が、埼玉県内の関係業者に移送されてしまったんです。犬を運び出したのは、ペットオークションを行う業者。代表は、繁殖場とオークション・ペットショップという現在の流通構造を作り出した業界では超が付くほどの有名人です。代表と百瀬は以前から取引がある古い付き合いでした。

 代表は『獣医に見せて犬の健康状態を確かめる』と移送の理由を語っているようですが、それを理由に百瀬は衛生環境が悪い繁殖場の1つを捜索後にすぐに取り壊した。業界のブラックなイメージを世間に持たれる前に、早急に“証拠隠滅”を図ったといわれています」(前出の関係者)

「夜に犬が鳴くと容疑者が𠮟りつける声が聞こえた」

 アニマル桃太郎で育った犬は県外も含む全国のペットショップで販売されており、繁殖場から近い大手ホームセンターでも扱われていたようだ。近隣の住民からは、繁殖場の様子はどう見えていたのか。繁殖場の近くに住む、百瀬容疑者を幼い頃から知る親戚が証言する。

「夜に犬が鳴くと、耕ちゃん(百瀬容疑者)が𠮟りつける声が聞こえました。従業員は逮捕された有賀氏と、他に女性が3人ぐらいいたかな。嫁も事務所で電話を取ったりと、事務作業を手伝っていましたね。耕ちゃんが繁殖場のペットの糞尿が垂れ流された新聞紙をビニール袋に入れて、当時勤めていた建設会社のトラックで運ぶ姿を見ることもありました。

 夏頃には風が吹くと近隣まで臭いがひどくてね。『血統書付きの犬を売らないといけなくて、変な子犬が産まれるといけないからケージの外には出さない』と言っていました。私自身は繁殖場に立ち入ったことはありませんね」

 百瀬容疑者は地元松本市で生まれ育ち、元々は動物好きの優しい少年だったという。

「子供の頃はひよこやモルモットを育てたりする優しい子でした。兄から譲り受けた、ドーベルマンぐらいの大きな犬を飼っていたこともあります。母親からもらったボロ布で、生まれたばかりの動物を拭ったりと可愛がる姿を見ましたよ。大学卒業後は、地元の建設会社で働いていました。誰かをいじめるような人ではないですよ」(前出の親戚)

動物を「まるで商品としてしか扱っていない」

 一方、繁殖場に立ち入った人から見た、百瀬容疑者の印象は180度異なったようだ。

「動物看護の専門学校生の知り合いが、学校の研修で桃太郎を訪れたことがありましたが、百瀬容疑者が動物を『まるで商品としてしか扱っていない』と絶望的な表情を浮かべて帰ってきたのを覚えています。

 桃太郎から犬を買った知人も、人間に怯える性格がいつまでたっても消えないと話していました。幼少期の育てられ方も関係しているのか、業界では『桃太郎の犬は早く死ぬ』という噂を聞いたこともありますね」(前出の関係者)

 コロナ禍で在宅勤務が増え、空前の好景気を迎えたペット市場。

 劣悪な繁殖場で育ったペットたちの“暗い生い立ち”は、本人たちの口から語られることはない。それゆえ、こうした悪質業者が後を絶たないのだ。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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