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「このムツゴロウが徹マンで負けた記録がありますか」ムツゴロウさんが語るギャンブルへの愛と、独特すぎる金銭感覚

文春オンライン / 2021年11月11日 17時0分

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ムツゴロウさんと大型犬のルナ Ⓒ文藝春秋 撮影・鈴木七絵

「よし、指1本やるから勘弁しろ」ムツゴロウさんがライオンに中指を食べられても、ギャングに囲まれても相手を恨まない理由 から続く

 動物学者で小説家、エッセイストでもあるムツゴロウさん。86歳となった“ゆかいな動物たちの父”の人生には、常に勝負事があった。勝つ時があれば負ける時があるのも勝負事の常。ムツゴロウさんも人生で2度、巨大な借金を抱えている。北海道の自宅で奥様と暮らしながら、病と懸命に闘っていた。(全3回の3回目/ #1 、 #2 を読む)

――ムツゴロウさんといえば動物のイメージが強いですが、作家、起業、ギャンブルと“勝負師”の印象も強くあります。ムツゴロウさんの金銭感覚や勝負事についての考え方をお聞きしたいのですが。

ムツゴロウ 作家は小さい頃からの夢でね。学生時代も「ご飯より本を食べる」と友達によく言われるくらい本が好きでした。サラリーマンだった1967年に出した「われら動物みな兄弟」が賞をもらって、それから色々書くようになりました。でも動物王国を作る時は餌代や広大な土地にフェンスなども作らなきゃいけないので、会社からの給料と本のお金では全然足りなくて銀行から相当な借金をしましたよ。

――ムツゴロウさんのエッセイには、借金生活もよく登場しますよね。

ムツゴロウ だってライオンに中指を食べられた時に真っ先に心配したのは、鉛筆が持てなくて原稿が書けなかったら借金を返せなくなるんじゃないか、ということでしたから(笑)。でもすぐに左手を添えて書く方法を練習して、締め切りは1回も破りませんでしたよ。

「何でも買っていいよ」

――「ゆかいな仲間たち」が全盛期だった80年代や90年代はテレビも景気が良い時代でしたが。

ムツゴロウ テレビ局にはずいぶん助けてもらって、おおいに感謝してます。値段は言えませんけどね(笑)。景気もよくて、一度フジテレビの日枝(久)さんに「何でも買っていいよ」と言われたことがあって、その時はエルメスの鞍を買ってもらいました。ただエルメスの鞍が想像よりもあまりに高くてフジテレビの予算を超えてしまって、残りは自分で出しました。その鞍は今でも宝物です。

――ムツゴロウさんにとって、お金ってどういうものなんですか?

ムツゴロウ あまり将来のお金の心配はしない方ですね。僕はきれいな湿原や森を見ると、つい買ってしまうんです。自然とは言いますがいい状態で保存するにはお金がかかる。でも放っておいたらその景色は無くなってしまう。それなら借金してでも自分で買って、なんとかその自然を守りたい。後からもちろん苦労はしますけど、でもそれは僕にとってはしょうがないことなんですよ。

「命懸けの瞬間が好きなんですよ」

――その金銭感覚は、ギャンブルへの情熱とも通じていそうです。

ムツゴロウ ギャンブルは大好きですね。僕は、どうなるかわからない命懸けの瞬間が好きなんですよ。たとえば競馬なら10万円くらいの馬券を買って、胸のポケットに入れてレースを見るんです。その馬が勝って500万円くらいになれば、もうしばらく競馬ができる。それを考えたら、頭がパーっとなるんですよ。

――ムツゴロウさんの馬を見る目はすごそうです。

ムツゴロウ 競馬の話をすると「いくら勝ったんですか?」と聞く人はよくいるけど、そんなことはどうだっていいんですよ。もっと大切なことが競馬にはあるんです。

――どういうことでしょう?

ムツゴロウ 自分が賭けた馬が負けたとするじゃないですか。そうしたら、どうして1着に来なかったかを考えるんです。それを知るために自分で馬を育てて、調教して、自分で乗って草競馬に出る。それで負けたらまた調教をし直す。それを何度もやらなきゃ馬のことはわかりません。第4コーナーを抜けて直線の端に立ったときのね、胸が開いていくような感激と嬉しさはちょっと他のものでは味わえませんよ。

「お金があるならいくらでも勝負してやる」

――「見る、賭ける」と「乗る」がつながっているんですね。ギャンブルと言えば、ムツゴロウさんは日本プロ麻雀連盟の最高顧問も務められています。

ムツゴロウ 麻雀は兄貴の影響で高校2年生から始めました。30代の頃は麻雀に明け暮れていましたね。もう50年前だから時効だと思いますけど、大晦日と正月をまたいで10日間連続で打ち続けたこともありました。

――それはすさまじいです。当時はもう結婚されていましたよね?

ムツゴロウ 12月28日に雀荘に入って、寝ないで打ち続けていたら財布がどんどん厚くなっていってね。でも負けはじめると今度は薄くなっていく。そういう増減がおもしろかったんですよ。「お金があるならいくらでも勝負してやる」なんて言いながら打ち続けて、結局1月7日に11日ぶりに家に帰ったのかな。家のドアを開けたら女房に「テメー何してるんだよ!」って怒鳴られましたよ(笑)。僕は「すみません、すみません」って謝りっぱなしでした。

――「雀聖」と呼ばれる阿佐田哲也氏との勝負も伝説になっています。

ムツゴロウ 阿佐田哲也さんは人の悪口を絶対に言わない人でね、一緒に打つのは楽しかったですよ。40代くらいの頃は北海道から東京へ出てくる時にホテルオークラを定宿にしていたんですが、ホテルに到着するといつも阿佐田さんから「今晩どうですか」って電話が来るんです。「今、東京に着いたばかりですよ」と言っても、「いいじゃないですか。今晩やりましょう」って。

――阿佐田氏との勝負はどうだったんですか。

ムツゴロウ 僕が阿佐田さんに負けたという記録はどこかに残っていますか? ないでしょう。このムツゴロウが徹マンで誰かに負けたという記録を持っている人がいたら見せてもらいたいものですね(笑)。動物の原理に比べれば、麻雀の原理なんて大したことありません。僕は会社の給料袋だって、封を切らずにそのまま女房に渡してたんですよ。自分のお金はギャンブルで稼ぐって決めてましたから。

病院で喫煙をナースに怒られた

――今は雀荘も減りました。タバコもお好きだと思いますが、吸える場所はずいぶん減りましたよね。愛煙家のムツゴロウさんにとってはいかがですか。

ムツゴロウ 僕は喫煙歴60年を超えてますからね、困ったもんだなと思ってます。覚えたのは大学生の頃で、渋谷にできた東急百貨店の2階に洋モクを置いてるタバコ売り場ができまして、それを1本ずつ味わいながら吸いましたね。今はタバコが目の敵にされることが多くって、いっそこんな世の中なら早いことおさらばしようかと思う時さえありますよ(笑)。

――心臓の病気などもされていますが、禁煙しようと思われたことはあるのですか?

ムツゴロウ ありませんね。82歳でドクターヘリで搬送されて入院したときも、病室の窓から上半身を外側に乗り出してタバコを吸っていたらすぐにナースが飛んできて、僕は「上半身は病院の外だよ」って説明したけど通じなくて怒られました。今度同じことをしたら病院を出ていってください、とね。

「死」っていう言葉は口にしないように

――大怪我や重病などを何度も経験されているムツゴロウさんですが、「死」について考えることはあるんですか。

ムツゴロウ 「死」っていう言葉は口にしないように、心に鍵をかけて辛抱していたんですけど、最近は考えるようになりました。年を取るのは辛いもので、何ひとつ自分の思った通りにはできなくなるんです。最近は「僕が死んだら」とか平気で言ってしまって、心が弱くなったのかもしれません。でもあの世に行く前に、僕の経験したことを全部話しておきたい気持ちが強くて、それでYouTubeもはじめたし、絵を描いたりこうしてお話ししたりしてるんです。

――YouTubeの 「ムツゴロウの656」 拝見しています。

ムツゴロウ 656はムツゴロウの語呂合わせなんですけど、全656回かけて自分の体験したことを全部話そうと思ってるんです。でもまだ46回(11月10日現在)ですから、すぐには死ねません(笑)。家の周りを散歩したりして、自分の体や血液を鍛え直しているところです。

――ムツゴロウさんは今もエッセイを書かれたり、11月1日からは銀座で絵の個展「ムツゴロウ世界をまわる」も開催されるなど発信を続けています。どんなことを「話しておきたい」と感じているのですか?

ムツゴロウ 僕はね、動物でも人間でも命と付きあっていると、互いに何か伝わるものがあるんじゃないかと思っているんですよ。自分のありのままの命とも、もう少し付きあってみようと思ってます。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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