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《日本王者の参戦ルポ》あなたは「クロスフィット・ゲームズ」を知っていますか? アメリカで開かれる世界屈指の“筋肉の祭典”に参加してきた!《写真多数》

文春オンライン / 2021年11月13日 11時0分

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クロスフィットの日本王者として「ゲームズ」のマスターズ部門に出場した板谷さん

「アジア人がこんな舞台に立っているなんて、俺たちにとっても誇りだよ――」

 今年7月、私は「クロスフィット・ゲームズ」(以下、ゲームズ)という大会に出場するため、単身アメリカに渡った。「ゲームズ」は世界から30万人が参加する“クロスフィット”と呼ばれるフィットネスの権威ある大会だ。

競技としてのクロスフィット、その世界大会「ゲームズ」へ

 クロスフィットという言葉自体は日本でも聞いたことがある人もいるのではないだろうか? クロスフィットとは、歩く・走る・起き上がる・跳ぶなどの日常生活で行う動作をベースに、それぞれを万遍なくトレーニングすることで、基礎体力アップ等を図るトレーニング方法のことだ。

 いわゆる重いウエイトを上げるような筋力トレーニングだけでなく、自分の身体を操る体操的な要素や、バイクやトレッドミルを使った有酸素的な要素も求められる。全身体能力を効率よく強化できるトレーニング法で、発祥地のアメリカでは軍や警察の育成プログラム、サバイバルトレーニングにも取り入れられている。

 一方で「ゲームズ」は、本来はトレーニングの一種であるクロスフィットを、スポーツとして昇華させた竸技の世界大会である。世界中から予選を勝ち抜いた男女数百人が集い、その成果を競う。世界大会ということもあり、参加のためのハードルは決して低くはない。今大会の場合、アジアからの参加者は私を含めても2名だけだった。

 そんな状況もあり、大会期間中には冒頭のような声を多くのアジア系アメリカ人の方々からかけてもらえた。大会そのものの規模の大きさや熱狂度もさることながら、そんな風にかけてもらった言葉が一番印象に残っている。

サラリーマンからトレーナーへ…再燃した熱

 私は2013年にトレーニングの一環としてクロスフィットに出会った。

 当時、ジムのスクリーンで流れていた「ゲームズ」の映像を見たことで、朧気ながらこの大会に憧れを抱いた。様々な人種の、様々な体型・体格の選手たちが、多種多様なトレーニング種目に競技として挑んでいく――。その姿を見て、「こんなに身体全ての能力が問われるスポーツがあるのか!」と思い、純粋にかっこいいと思ったのだ。

 ただ、当時の私は商社勤めのサラリーマンの立場だった。

 突然アメリカで行われる世界大会を目指すというのはあまりに現実からかけはなれており、なかなかすぐに動き出すことができなかった。ただ、その後紆余曲折を経て、昨年にトレーナーとして独立したことで、再び「ゲームズ」への熱が戻ってきたのである。

3万人の参加者のうち、上位20人という狭き門

 私は今年で37歳になるため、35歳以上の「マスターズ部門」でのゲームズ出場の可能性を追った。出場するためには、世界中で3万人近い参加者がいる2度のオンライン予選を戦い、その中で上位20人以内に入る必要がある。

 この「20人」というのが非常に難しい。

 もちろん過去のゲームズでの優勝者や入賞者もいる。ほとんどがクロスフィット界ではいわゆる「レジェンド」な人達なのである。ウエイトリフティングや体操、アメリカンフットボールなど他競技での実績がある選手も多い。それゆえ、1回、1秒のスコアの違いで大きく順位が変わるのだ。

 競技としてのクロスフィットの場合、予選の直前に競技種目が発表される。

 腕立てや腹筋といった基礎的なトレーニングの組み合わせの場合もあれば、ランやバイクのような持久系の競技が入ってくることもある。それゆえ未体験の種目に対して、試技前に最大限想像を膨らませてシミュレーションを行う。予選の試技は基本的に1回のみなので、自分のフィジカルを考えて、種目に合わせてどんなペースで動くのかを綿密に詰めていく必要があるのだ。

初の「ゲームズ」挑戦。米国ウィスコンシン州へ!

 さて、そんな厳しい予選をどうにか乗り越え、ようやく初の「ゲームズ」に挑戦できることになった。大会は毎年、米国ウィスコンシン州マディソンという街で行われる。大会期間は3日間だ。

 シカゴから車で3時間ほどの距離の街で、気候は東京に似て高温多湿である。渡米後は普段オンラインでコーチングをお願いしているサンディエゴにあるジムを使わせてもらって、3日間ほど時差ボケ解消を含めた事前調整をした。

 大会2日前にはウィスコンシン州に到着。ホテルにチェックイン後、そのまま会場へ足を運び、アスリートチェックインを行った。

 ここで印象に残ったのが、スポンサー企業によるアスリートたちへのおもてなしだ。

 プロスポーツさながらに、個人ロッカースペースが用意されており、そこで今回の大会で使うユニフォームをはじめ、たくさんのアパレル・シューズ・バッグが支給された。その後ユニフォームに着替えて、プロフィール写真撮影もある。この国ではスポーツそのものがしっかりと「ビジネス」の形になっていることが感じられた。

 前述のように、基本的に「ゲームズ」の競技種目はギリギリまで発表されない。大会前日に行われるワークアウトのQ&Aセッションまで、誰もどの種目を行うのかを知り得ないのだ。

最高の大会で、あらゆる予想が裏切られる結果に…

 そんな中で迎えた大会初日。

 この日行われたのは、(1)約7.5㎞の長距離ラン(2)綱登り&デッドリフト(3)スナッチという3種目だ。多くの人がイメージするのは「日本人はスタミナ・心肺持久力では戦えるが、パワー面で劣っている」ということだと思うのだが、いざはじまってみると結果は真逆。(1)の長距離ランでかなり出遅れることになった。

 ちなみに(3)は「ゲームズ」のメイン会場であるコロシアムの中で行われた。約1万人の観客で埋め尽くされた会場は、日本のクロスフィットでは考えられないような規模感で、最高の緊張感と興奮だった。「アジア人の代表として期待しているよ!」といった言葉や、応援してくれるファンの様子は忘れることはないと思う。

 大会2日目は(1)バイク&腹筋運動&スクワット&逆立ち歩き(2)水泳(3)ローイング&クリーン・アンド・ジャーク&スレッドの3種目が行われた。

 この日はクロスフィットらしい難しさに直面することになった。

「さすがに『ゲームズ』で水泳はないだろう」とタカを括って全く練習をしてこなかったからだ。しかし、往々にしてそういう時に限って出るのである…。

 最終日は(1)スキー&マッスルアップ&二重跳び(2)バイク&バーピーボックスジャンプの2種目。ちなみに実際には3種目が行われていたのだが、3種目目はその日までのTop10選手のみが競技を行うルールで、私には資格がなかった。

 (1)は個人的に得意な縄跳びの「二重跳び」が入っていたのだが、意外な誤算があった。アメリカらしくスタジアムの地面が芝生なのだ…。普段はジムの固い床の上で跳んでいたので、芝生の上での二重跳びは初の経験。最悪の結果に終わった。

アメリカは「スポーツをエンターテイメントに昇華させる国」

 全日を通じて期待した結果は残せなかったが、最後まで全力で動いたことに関しては満足できた。

 今回、初めて「ゲームズ」に出場して感じたのは、やり方次第でクロスフィットがフィットネスを超えたエンターテインメントになるということだ。

 素人目で見れば、「人の筋トレを見て何が面白いの?」と思うだろう。実際にジムの中でオンラインの大会に参加している時は、そんな思いが浮かぶ瞬間もある。

 一方で、「ゲームズ」では世界中のトップアスリートが体力・精神力・技術の限界に挑戦しながら、あらゆる課題に取り組んでいる。そして、それを盛り上げる最高の舞台や音楽が用意されていた。会場全体はフィットネスパークのようになっており、選手だけではなく競技時間外には観客も参加して楽しめる。ベンダースペース、キッズフィットネスエリア、スタジアムに入れない人向けのパブリックビューイング会場、会場全体を盛り上げるサウンドシステムやDJの設置などなど。

 とにかくアメリカはスポーツをエンターテインメントとして盛り上げるのが巧い。だからこそ、単なる「人の筋トレ」がエンタメにまで昇華されるのである。「ゲームズ」での経験は、まさにその典型例だった。

クロスフィットを日本でもっと盛り上げるためには?

 翻って日本の状況を考えてみると、確かにクロスフィットジムも増え、一般の人の認知度もある程度は高まってきたように思う。ただ、今後大きく成長するためには、この大会がもっと日本人に知られ、そこに挑戦する人がたくさん出てくる必要がある気がしている。

 もちろんクロスフィットはみんなのためのフィットネスであり、「ゲームズ」はその極限を切り取った一部でしかない。だが、スポーツにもエンターテインメント性が必要なように、クロスフィットが日本でもっと人気になるには、「ゲームズ」の日本版のようなものも必要だと感じた。

「ゲームズ」には今回私が出場した35~39歳枠だけでなく、上は65歳以上の枠まで用意されている。こうしたマスターズ枠の選手は、プロアスリートではなく、フルタイムの仕事をしながら、隙間時間にワークアウトをしている。それでもフィットネスに情熱を燃やして、「ゲームズ」を最終目的地として毎日ワークアウトに励んでいる。

 エリート部門の選手のようなパフォーマンスは出せなくても、それ以上に見ていて周りの人をモチベートさせるものがある――。

 こうした選手たちがもっと取り上げられ、日本人のフィットネス意識が変わっていってほしいと感じたアメリカ遠征だった。

(板谷 友弘/Webオリジナル(特集班))

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