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「空き巣、強盗、薬物のプッシャーを…」モルモン教徒の被害者が“札付きグループ”にいたワケ《川口市“遺体なき殺人事件”》

文春オンライン / 2021年11月13日 20時0分

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殺害された伊藤さん

「遺体は市場で冷凍し、マグロ解体機械でバラした」加害者が供述する衝撃の殺害方法《川口市“遺体なき殺人事件”》 から続く

 2021年11月4日、島田一治被告(54)が飲食店従業員だった伊藤竜成さん(当時24)への殺人罪で起訴された。事件が起きたのは2016年3月18日未明、川口市西川口のハワイアンバー「X」でのこと。島田被告を含め男女7人で伊藤さんに殴る蹴るなどの暴行を加え、首を絞めて殺害しようとしたという。

「犯人グループの供述によると、その後に動かなくなった伊藤さんを運び出し、埼玉県内の市場の巨大な冷凍庫で4~5日冷凍し、『自動バンドソー』と呼ばれる機械で遺体を6~8つにバラバラにしたようです。犯人グループのうち1人は『最後に魚をミンチにする機械にかけ、遺体は残材置き場にばら撒いた』とも語っています。

 市場にある自動バンドソーから伊藤さんのDNAが検出されたので、遺棄に使用されたのは間違いない。ただ遺体はいまだ見つかっておらず、警察は捜査を続けています」(警察関係者)

 この「遺体なき殺人事件」では、被疑者A(50代男)も殺人の罪で起訴される予定だったが、10月28日に川口署の留置場で首を吊って自殺したため不起訴となった。

「X」のあったビルに纏わる“良からぬ噂”

 取材班は事件現場となったハワイアンバー「X」の周辺を取材したが、不思議なほど近隣店舗の従業員らからは「X」のことは知られていなかった。それには“ある事情”があったようだ。

「『X』が入っていたビルはヤクザ者が出入りしていると有名なんです。このあたりのヤクザというと住吉会でしたが、ここ10年くらいで西のヤクザも徐々に入ってきた。『X』が入っているビルにあるサウナは刺青の入ったヤクザだらけだし、中国人女性による“ヌキ”ありの違法マッサージ店もある。地下にあったハプニングバーが摘発されたこともありました。

『X』はハワイアンバーということですけど本当はどうだったのか……。飲食店名義だっただけで裏カジノとか風俗とかそういう店だったんじゃないかという噂も聞きます。それくらい誰も知らないし、ちょっと怖いイメージがあるんですよ」(近隣店舗の関係者)

伊藤さんは高齢者を助ける「好青年だった」

 警察の発表によると、「殺人罪で起訴された島田被告は指定暴力団・六代目山口組系の組員だった」という。『X』で従業員として働いていた被害者の伊藤竜成さんは、一体どんな人物だったのだろうか。

 伊藤さんは事件当時、都内の小さなアパートに一人暮らしをしていた。近隣住民によると、「挨拶もしっかりしていて、近隣の高齢者にも重いものは運びますよと声をかけるような好青年」だったという。

「伊藤さんがこのアパートに住み始めたのは2015年末頃から。でも2、3ヶ月ほどで姿を見なくなりました。家賃も滞納していたようですし、大家さんが心配して部屋を覗こうとしたら、玄関ドアには鍵がかかっておらず開いていたそうです。部屋の中には布団もなかった。軽い敷物と紙袋1袋ぶんの荷物だけがあったそうです。

 急に逃げ出すような子じゃないし、いつも夜になると川口のほうへ仕事に行っていたから、私たちもトラブルに巻き込まれたのかと心配していたんですよ。ほとんど家にも帰れないくらい、忙しかったのかもしれませんね」(近隣住民)

末端に身を置いていた“札付きグループ”

 実は当時、伊藤さんは川口市で活動している“札付きグループ”の末端に身を置いていたという。2016年の伊藤さんへの暴行で逮捕された7人全員がこのグループの一員だった。事情を良く知る人物が語る。

「このグループのリーダー格だったのが、島田とAです。2人はお互いを“兄弟”と呼び合う仲だった。Aはハワイアンバー『X』のオーナーで、キャバクラや風俗店のためのスカウト会社も持っていた。後輩への当たりが強く、理不尽なことを結構言うんですよね。後輩らからは煙たがられていました。2人以外の他の逮捕者は当時20代の若者ばかりです。島田やAが指示を出し、亡くなった伊藤を含めた下の人間がそれをこなす、という主従関係がこのグループでははっきりしていました」

「グループは、日頃から犯罪行為に手を染め生計を立てていた」(同前)という。活動地域は埼玉を中心に、東京の下町エリアまで広がっていた。

「いわゆるオレオレ詐欺などの出し子や空き巣、強盗などを行っていました。薬物のプッシャーにも手を染めていました。こうした犯罪行為を主犯格の指示の下、複数人で行っていたのです。若い子は主に使いっ走りです。手に入れた金の9割は指示役が取ってしまい、実行した子分たちは1割程度しかもらえません。それでも先輩には逆らえない。かなり筋の悪いグループですよ」(同前)

被害者が“救い”を求めた「モルモン教」

 なぜ「挨拶もしっかりした好青年」の伊藤さんが、このグループと関わりを持つようになったのか。取材を進めると、伊藤さんが頼っていたという高齢男性にたどり着いた。男性は「彼はなんとか更生しようともがいていた」と、伊藤さんの半生について語ってくれた。

「彼は家庭環境が複雑でね、私が父親代わりだったんですよ。私が彼と出会ったのは今から10年程前、モルモン教の教会の縁で出会いました。私は入信していませんでしたが、彼は熱心に教会に通っていた。なんでも、お金がないときに、たまたま出会ったモルモン教徒で20代のアメリカ人に、カレーライスをご馳走になったことが入信のきっかけだったようです。

 彼は熱心に宗教の活動に参加して、肉体労働や人が嫌がる雑務も引き受けていました。彼の住んでいる地区のトップの夫人も彼のことを気に入って『いつかはアメリカに留学させたい』とも話していたくらいですから」

組織を抜けて、自殺未遂をしたことも

 男性によると、伊藤さんはモルモン教に入信する前に「ヤクザのようなことをしていた」という。

「テキヤで祭りの出店を仕切ったり、新宿で闇金の取立てをしたりね。でもある時、闇金の取り立てで借主の娘を“売らせた”ことがあったそうなんです。それを苦に借主の奥さんが自殺したと。彼はよほどショックだったみたいでね。それで組織を抜けて、彼自身も自殺未遂をしたそうです。そういうこともあって、モルモン教に救いを求めたんでしょうね」

 モルモン教の教会で男性は伊藤さんと出会い、伊藤さんは男性に親しみを抱くようになった。出会ってからすぐ、自身の身の上話をする間柄になったという。

被害者が語った複雑な家庭環境、愛のない女性関係…

「彼は私の家に何度も遊びにきました。その時には『自分には親がいない、捨てられた』『子供のころからヤクザに育てられてろくに高校もいっていない』『これまでたくさんの女性とSEXしてきた(でも愛を知らない)』『10代の頃、ヤクザの兄貴に連れられてフィリピンに行ったことがある』などと話していました。

 彼は素直で人懐っこいのに、そんな境遇だったと知って不憫になってしまってね。父親役を買って出たんです。彼が生活上必要な契約をする際には、保証人にもなりましたよ」

 熱心に宗教活動に励んでいたという伊藤さんだが、あることがきっかけで教団を追われることになる。モルモン教は婚前交際を禁止しているのだが、当時交際していた5歳年上のバツイチ女性との関係がバレてしまったというのだ。

「彼が追放されたのは21、22歳の頃でした。それでまた悪い道へ戻ってしまって、川口のバーで働き出した。私は心配で『大丈夫か?』と連絡をいれたことがありますが、彼は『自分はヤバイかどうか見極められる目があるから大丈夫だ』と。でもその後、彼から連絡は来ませんでした」

 1度は更生を試みた伊藤さんだったが、叶うことはなく、殺人事件の被害者になってしまった。男性はいまの心情を、悔しそうにこう吐露した。

「非常に残念です。でも覚悟はしていました。彼が行方不明だということは昨年春に埼玉県警の方から聞いていましたから。もうこの世にいないかもしれないとも……。

 彼にはまっとうな、ごく当たり前の幸せを味わって欲しかった。彼は夢とかそんなことを語ることはなかったんですよ。今を生きることでいっぱいで、視野が狭くなってしまっていたから。彼の生きた24年はなんだったのか……。家庭が複雑で、学校もいかず、可哀そうで仕方ないです」

 男性は「彼は悪の道を断ち切れなかった」とポツリと呟いた。残酷な手法で死体をバラバラにした“遺体なき殺人事件”。警察は引き続き、詳しい経緯を捜査しているという。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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