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《アメトーーク!で紹介》スタンフォード監獄実験にもちあがった“ねつ造疑惑” 「人間はたやすく邪悪な存在に変わる」説は本当か?

文春オンライン / 2021年12月3日 0時10分

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監獄実験の様子 (スタンフォード大学の地下、1971年8月。  Source: Philip G. Zimbardo.  『Humankind 希望の歴史』より)

 12月2日放送の「アメトーーク! 本屋で読書芸人」(テレビ朝日系)で、カズレーザーさんが「最近読んだお気に入りの本」として紹介した『 Humankind 希望の歴史 人類が善き未来をつくるための18章 上 ・ 下 』。ダーウィンの唱えた自然淘汰説や、ドーキンスの執筆した『利己的な遺伝子』など、近代が前提としてきた“性悪説”に疑問を呈したオランダの歴史家、ルトガー・ブレグマンの著書だ。書籍より、スタンフォード大の囚人実験の真実について紹介した記事を再公開する。(初出:2021年7月21日、全2回の1回。 後編 を読む)

◆◆◆

カズレーザーの「最近読んだお気に入りの本」

「普通の人間は、たやすく邪悪な存在に変わりうる」

 世の中に流布するこのような性悪説的な人間観を、長らく裏付けてきたエビデンスがある。1971年、米国スタンフォード大で行われた有名な心理学実験「スタンフォード監獄実験」だ。

 その内容はこうだ。普通の人々を集めて、被験者を看守役と囚人役に分ける。すると看守役は、囚人役に対して虐待を行うようになる。われわれ人間は、置かれた状況や役割によって、誰しも凶悪な行動を取ることができるのだ。

 実験から導き出される結論はあまりにショッキングで、なぜナチが悪を行ったかの説明根拠としても引用されているほどだ。

 だが、果たしてこれらは本当なのだろうか。

 まずは「スタンフォード監獄実験」について、「従来の教科書通りに」振り返ってみよう(実際、この実験は心理学の教科書に載っている)。

  実験の責任者はスタンフォード大学のフィリップ・ジンバルドという心理学者。被験者として募集されたのは、ごく普通で健康な若者たち。小遣い稼ぎのために応募したという。被験者として登録される際に何人かは、自分は平和主義者である、とすら書いていた。

 実験場所は、同大心理学部の地下室。「スタンフォード郡監獄」との表示が掲げられた。被験者は看守役と囚人役に分けられた。

 看守役は制服を着て、目の動きが相手に見えないようサングラスをかけた。

 一方、囚人役は、服を脱がされ、手錠、足錠をかけられ、ナイロンストッキングの帽子をかぶらされた。そして、割り当てられた数字で呼ばれ、一部屋に3人入れられた。

 さらには、点呼と称して午前2時半と午前6時に起こすという厳しいスケジュールを課す、罰として腕立て伏せをさせる、毛布を植物の棘だらけにする、独房に入れるということも行われた。これらのサディスティックなルールは、看守たちが“自主的に”考え出したとされている。

やがて実験は制御不能に

 2日目で早くも変化が起きた。人糞の悪臭が漂う部屋で、睡眠を剥奪され、虐待された囚人たちは、ひとりまたひとりと脱落していく。だが、看守たちは、思うままに権力を振るい続ける。

 遂にひとりの囚人が、ヒステリーを起こして叫び、実験監獄のドアを蹴った。

「何だってんだ。ジーザス! はらわたが煮えくり返る。わからないか? おれは出たいんだ。ここは最悪だ。もう一晩も耐えられない。うんざりだ!」

 囚人のうちの5人が「極度の落ち込み、号泣、激怒、激しい不安」の兆候を示していた。実験の展開に恐怖を感じた大学院生が、ジンバルドをなじった。ジンバルドは、囚人を完全に支配しようとする看守長を演じるようになっていたという。

 6日目にして実験は制御不能となり、中止された。

「平凡な学生の一団が、怪物に変わってしまった」――それは衝撃的な結果だった。

世界中に流布され、有名な実験に

 データ分析も済ませないうちにジンバルドは、複数のテレビ局に実験の画像を送った。同実験はメディアに取り上げられ、ジンバルドは最も注目される心理学者となり、アメリカ心理学会の会長までのぼりつめた。

 実際のところスタンフォード監獄実験は、おびただしい数の本やメディアに引用されて、世界中に流布してきた。アメリカの心理学の教科書に載り、ハリウッド映画やネットフリックスのドキュメンタリーでも描かれた。

 アメリカで人気を誇ったビジネス書作家マルコム・グラッドウェルも分かりやすい論評を行い、実験を広く知らしめた。すなわち「普通の人を、恵まれた環境、幸福な家庭、良い学校から連れ出し、身辺の詳細を変えるだけで、行動に強い影響を与えることができる」と。

 しかし近年、この研究の真偽に対する疑惑が持ち上がっている。スタンフォード監獄実験は、ねつ造だったというのだ。

【続きを読む 普通の人を看守役と囚人役に分けると、看守はサディストに… 「スタンフォード監獄実験」の“ねつ造”を示す3つの根拠】

《カズレーザー、最近読んだお気に入りの本》普通の人を看守と囚人に分けると、看守はサディストに…? 「スタンフォード監獄実験」の“ねつ造”を示す3つの根拠 へ続く

(文藝春秋翻訳出版部/翻訳出版部)

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