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《カズレーザー、最近読んだお気に入りの本》普通の人を看守と囚人に分けると、看守はサディストに…? 「スタンフォード監獄実験」の“ねつ造”を示す3つの根拠

文春オンライン / 2021年12月3日 0時10分

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©️iStock.com

《アメトーーク!で紹介》スタンフォード監獄実験にもちあがった“ねつ造疑惑” 「人間はたやすく邪悪な存在に変わる」説は本当か? から続く

  12月2日放送の「アメトーーク! 本屋で読書芸人」(テレビ朝日系)で、カズレーザーさんが「最近読んだお気に入りの本」として紹介していた『 Humankind 希望の歴史 人類が善き未来をつくるための18章 上 ・ 下 』。ダーウィンの唱えた自然淘汰説や、ドーキンスの執筆した『利己的な遺伝子』など、近代が前提としてきた“性悪説”に疑問を呈したオランダの歴史家、ルトガー・ブレグマンの著書だ。書籍より、スタンフォード大の囚人実験の真実について紹介した記事を再公開する。(初出:2021年7月21日、全2回の2回。 前編 を読む)

◆◆◆

スタンフォード監獄実験はねつ造だったのか?

 「平凡な学生の一団が、たやすく怪物に変わってしまった」ということを示して衝撃を与えたスタンフォード監獄実験。この実験がねつ造だったとされる根拠のひとつが、2007年に刊行された実験責任者ジンバルドの自著に書かれている記述だ。

 ジンバルドは「看守たちは“自発的に”サディストになった」と、数多くのインタビューで答えてきた。だがこの記述によると、実際は違ったようだ。「囚人を数字で呼ぶ」「サングラスをかける」「サディスティックなゲームをさせる」。これらは、看守たちが考案したのではなく、ジンバルドが指示したのだという。

 さらに2013年、フランスの社会学者ティボー・ル・テクシエが実験の記録調査に乗り出した(驚くべきことに、スタンフォード大学でジンバルドの資料を調べたのは彼が初めてだったという。それまで誰も、一次情報に当たって調べたことがなかったのだ)。そこで判明した事実はあまりに衝撃的だった。

実験の発案者は学生だった

 まずそもそも、この実験を思いついたのはジンバルドではなく、ジャッフェという修士課程の学生だった。サディスティックな側面を持つジャッフェは、まずはスタンフォード監獄実験のテスト版に当たるミニ実験を行い、ジンバルドの興味をひいた。ジンバルドはジェッフェを研究助手として雇い、こう命じた。「優れたサディストとしての経験をもとに戦術を提案しなさい」。

 実際のところ、17のルールのうち11のルールはジェッフェが考えたものだ。「足に鎖をつける」「囚人を裸にする」「15分間、裸で立たせる」などだ。ジンバルドは「午前2時半と午前6時に起こす」「囚人に腕立て伏せをさせる」「囚人の毛布を植物の棘だらけにする」などを思いついた。当時の録音テープからは、実験のあいだじゅう、ジンバルドとジャッフェは、囚人をもっと厳しく扱うよう、看守へプレッシャーをかけていたことが判明した。

無視された囚人役の証言

 さらにもうひとつ根拠となるのが、実験2日目にヒステリーを起こしたひとりの囚人の叫びだ。

「何だってんだ。ジーザス! はらわたが煮えくり返る。わからないか? おれは出たいんだ。ここは最悪だ。もう一晩も耐えられない。うんざりだ!」

 このセリフは、同実験を象徴するものとして、のちのち多くのドキュメンタリーに取り上げられることになる。

 しかし、2017年にあるジャーナリストが、この囚人役に尋ねたところ「あれは全部芝居だった」と語ったのだ。この囚人役は実験後、ジンバルドに芝居だったと伝えたが、無視された。

解放されたくて叫んだセリフが……

 この囚人役は、のちに心理学の博士号を取るだけあり、「初日は囚人役を楽しんでいた」という。そもそも被験者に登録したのは、実験の最中に試験勉強をしようと思っていたからだった。しかし、監獄に入ると教科書を取り上げられたため、翌日止めることを決意した。

 ところがジンバルドは彼を解放しなかった。囚人たちは、身体的あるいは精神的な問題が見られた場合にのみ、解放されることになっていたからだ。

 彼は、はじめは腹痛を装ったが上手くいかず、作戦を変えて感情が制御できないふりをした。その結果が「何だってんだ。ジーザス!……もう一晩も耐えられない。うんざりだ!」という叫びとなる。そしてこの叫びは、スタンフォード監獄実験を象徴するセリフとして世界中に知られることになったのだ。

 以上が、同実験がねつ造であるという主な根拠である。

 そもそもスタンフォード監獄実験はあまりに非倫理的だったので、誰もあえて検証実験をしなかった。おかげでジンバルドは何十年ものあいだ、自説を吹聴できたのだ。

英BBCが再現実験を行った結果

 そんななか2002年5月に、英BBCが再現実験を行った。担当した実験者たちはジンバルドとは違い、「看守たちに指示をしなかった」。するとどうなったのか。じつのところほぼ何も起きなかったのだ。さらには一部の囚人と看守は生活共同体を作ることを投票によって決めた。実験は行き詰まり、打ち切られた。番組画面には、呑気に座ってタバコを吸う男たちの姿が写るばかり。残酷なリアリティ番組を期待していた視聴者は、騙されたように感じた。

 しかし、このBBCの再現実験はやがて忘れ去られる。そしてセンセーショナルなスタンフォード監獄実験だけが、検証されることもなく今に至るまでメディアに繰り返し取り上げられている。

 2018年のインタビューでジンバルドは、こう語ったという。

「現時点で、スタンフォード監獄実験は心理学の歴史上、最も有名な実験だ。行われてから50年経っても議論される実験は、他には存在しない。一般の人でもあの実験のことは知っている。……あの実験はもう自らの命を持っているのだ。……わたしにはもうあの実験を守るつもりはない。この先、あの実験を守るのは、これほど長く生き延びたという事実だ」

(文藝春秋翻訳出版部/翻訳出版部)

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