会計士が語る「本当に良い企業を見抜く2つのポイント」とは?

文春オンライン / 2018年2月14日 11時0分

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「所持金1万円、50歳のAさんは死ぬまでに1兆円を手に入れられる?」

 そんなバカな、と思うだろうか。じつは、このクイズには本当に優良な企業を見抜くための、たった2つのポイントが隠されている。

「企業がいかに稼いでいるのか」「上手に商売をしていることを調べるにはどの数字を見ればよいのか」、あるいは「投資家や株主は決算書のどの数字に注目しているのか」……誰もが知りたい良い会社を見抜く方法を、ソフトバンクやヤマト運輸、三越伊勢丹、ZOZOTOWNなど話題の企業の事例を見ながら紹介した 『やっぱり会計士は見た!』 著者の公認会計士・前川修満さんがこのクイズを解説する。決算書の数字は「企業の真実」を雄弁に物語る――。

◆◆◆

 突然ですが、次のクイズに答えてください。

【問題】

 あるところに、Aさんという50歳の男性がいました。

 2018年の元旦の時点で、Aさんの所持金は1万円でした。

 Aさんは、自分の所持金(1万円)をなんとか増やしたいと思っています。

 そこで彼は2018年1月1日の朝、市場に行き、その所持金1万円で品物の仕入れを行い、その日のうちに20%のマージン(利幅)をつけて1万2000円でこれらをすべて売り切り、代金の回収もすべて行いました。

 翌日の1月2日、Aさんは前日稼いだ1万2000円をもって市場に行き、その1万2000円で仕入れを行い、やはりその日のうちに20%のマージンをつけて、すべてこれらを売り切って代金を回収し、1万4400円を手にしました。

 こうしてAさんは毎日、前日の売上をすべて仕入れに回し、その日のうちに20%のマージンをつけて売り切り、代金もすべて全額回収します。

 彼は元の所持金1万円を少しずつ増やし、1兆円(!)に達するレベルにまでしたいと考えています。さて、もしそんなことが可能だとしたら、Aさんの所持金が1兆円になったとき、彼は何歳になっているでしょうか(ここでは問題を単純化するために、Aさんの生活費や所得税などは無視します)。

【答え】

 Aさんには申し訳ない言い方になりますが、50歳で所持金が1万円というのは、はっきり言って貧しいでしょう。そのAさんが、このスキームに則って、所持金を1兆円にまで増やすのは一見、途方もないことかもしれません。

 しかしながら、結論を言うと、1月1日から商売をはじめたAさんの所持金は、なんと2018年4月12日には、1兆円を超えます。

 これを意外に思う方も多いのではないでしょうか。

 次ページの表で説明します。

 最初の13日で1万円は早くも10万円を超えます。ということは大雑把に言うと、13日でお金の桁がひとつ上がるということです。そうであれば、その10万円も次の13日が過ぎたら、やはり桁がひとつ上がって100万円を超えます。

 1兆円というのは、1万円よりも桁が8つ大きいので、単純計算だと13日×8桁=104日経てば、Aさんの所持金は1兆円を超えてしまうのです。

1万円が1兆円になるまで104日

 この話は極端なフィクションですが、貧しいはずのAさんは、きわめて短期間のうちに、とてつもない大富豪になることがわかります。

効果的に稼ぐたった2つのポイントとは 

 Aさんの話には、効果的に稼ぐためには何が必要かというポイントが織り込まれています。すなわち、効果的に稼ぐためには次の2つのポイントが大切なのです。

(1)「利幅の厚い」商売をすること

(2)「資本の回転速度」を高めること

 まず、(1)の「利幅の厚い」商売をすることは、誰にでも理解できる話です。Aさんは20%のマージンをつけていましたが、一言で言うと「できるだけ安く仕入れてできるだけ高く売ることで、稼ぎを増やす」ということです。

 例えば、ブランド物のバッグは無名のメーカーのバッグよりも高く売れます。ブランド力があれば、たとえ安価な塩化ビニール製であっても、無名のメーカーの上等な革製よりも高く売れることもあるのです。これが利幅の厚い商売ということです。

 次に意外に知られていないのが、(2)の「資本の回転速度」を高めるということでしょう。

 ここで紹介したAさんは、利幅の厚さの点ではそれほどではなかったものの、資本の回転速度が異常に速かったのです。

 つまりAさんの場合、朝に事業へ投入した資金をその日のうちに、20%のマージンをつけて全額現金で回収していることが驚異的なのです。現実の商売では、これは簡単なことではありません。

 例えば製造業の場合、材料を購入し、これを製造工程に投入し、製品を完成させて販売し、さらに代金を回収するのに、少なくとも数カ月かかるのが常識です。しかし、Aさんはたった1日しかかからなかったのです。

 ここではあえて非現実的な例として、Aさんのケースを紹介しましたが、この資本の回転速度は企業の盛衰に直結することなのです。

 すでにお分かりかと思いますが、この「利幅の厚さ」「資本の回転速度」こそが、企業が本当に優良か、そうでないかを見抜くポイントです。

 この2つの視点から、各企業の決算書(損益計算書、貸借対照表など)を読み解いていくと、「その企業がどうやって稼いでいるのか?」「上手に商売をしているのか?」といったことが見えてくるのです。

 また日経新聞など経済メディアで目にする、ROA(総資本利益率)、ROE(株主資本利益率)といった一見難しそうな指標もこの「利幅の厚さ」と「資本の回転速度」をもとに計算されています。

 そしてそういった視点で企業の決算書の数字を見ていくことで「ヤマト運輸が大口顧客であるアマゾンとの取引から一部撤退したのはなぜなのか?」「金融事業が急成長したイオンの利益が伸びない理由は?」「百貨店業界首位の三越伊勢丹が、はるかに売上高の少ないZOZOTOWNのスタートトゥデイに株価で大きな差を付けられた原因は?」……などの日ごろ耳にするニュースの舞台裏がよく分かってくるのです。

 会計情報に明るくなると「貨殖の才」に磨きがかかります。ぜひ会計情報を日常生活にいかしてもらいたいと思います。

(前川 修満)

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