つばきファクトリー「低温火傷」の歌詞は考え抜かれている――近田春夫の考えるヒット

文春オンライン / 2018年3月14日 7時0分

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絵=安斎肇

『低温火傷』(つばきファクトリー)/『Candy Pop』(TWICE)

 そういえば俺、曲タイトルに惹かれるなんぞということここんとこずーっとなかったわ……。いや、それにしても『低温火傷』なるこの四文字、眺めるほどにアイドルものにしてはかなり挑発的部類に入るといっても決して過言ではあるまい佇まいだ。はて、どんな歌詞世界/内容なのか? 気になるヨォ。おぉありがたや、ネット上には曲がアップされていた。ので聴いてみると早速耳に止まったのがサウンドで、予想外とはいささか盛り過ぎではありますが、アイドルのシングルということでもう少しjpop寄りの音を想像していると、結構“歌謡曲”だったのである。

 では歌謡曲とはなんぞやという話にもなってしまうところでありましょうが、そうした総論的言及は紙幅の関係もございます。また別の機会に。

 とかいいつつまぁ、歌謡曲(と称されるものの全般)の持つ旋律と和声の関係が、リスナーにもたらす効果、すなわちその、聴けばおとずれてくる一種独特な寂しさのような気分は、jpopではなかなか味わえぬぐらいのことは一応ね、みなさんも実感されてきたことであろう。そういった意味での“向精神的効果”を『低温火傷』のトラックは有しているということである。

 この曲で更に歌謡曲らしさ、要するにjpopと分けるものといえば、やはりコトバだろう。聴いていて思う何よりは、歌詞の、実に手応えのしっかりとした感じのあることだ。

 それはストーリーがキチンとしているからである、いい換えれば、この歌詞には――jpopにはよくみられる――意味不明な部分や曖昧ないい回しなど、いわゆるフワフワとして聴き手の裁量に解釈をゆだねるような箇所/姿勢が見つからぬのだ。

 そしてもうひとつこの歌詞に思うことがあった。

 歌詞には勿論中身も大切だが、コトバそのものの持つフィジカルな部分での印象も、殊にラップが一定の認知を受けているような昨今では、楽曲の魅力を形成する上においての、無視出来ぬ大きな要素になってきているといえよう。

 物語として優れているのとは別に、そうした点においてもこの歌詞は、本当に語彙が選び抜かれていると思うのだ。メロディーに乗っかったときの相乗効果に大変注意をはらってコトバを連ねているのが、歌を聴けばよく伝わってくる。

 この『低温火傷』の詞作は歌謡曲的であると同時に、そういった、いってみればヒップホップ以降ならではの“響きの面白さ”への意識も兼ね備えて持つものといってよく、今まわりを見渡したとき、そのような作風で完成度の高いものの書ける作家がそれほどいないのも事実である。

 ところで『低温火傷』だが、読めばまさしくそれがここでは文学的テーマとして見事に成立を果たしているのがわかるだろう。是非チェックを!

 TWICE。

 これは日本語のポップスとして新しい音だ。サウンドプロダクションの秀逸さには目を見張るものがある。

(近田 春夫)

文春オンライン

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